無敵のフルフェイス
24話 次元の違い。
金ピカの宿に行って依頼の確認と受付の人に話した。そして1人の執事が出てきた。
「冒険者様。お話を聞いて頂けるようで。」
「話は少しギルドで聞いています。戦うとか?」
「ほほ。話が早いですな。少し移動しても?」
そう話すと執事の人は首を回し、眼つきが変わった。
「いやいや、戦いに来た訳ではなく、話をですね。」
「分かりました。すぐそこに広い場所があるので着いて来て下さい。」
こっちは5人いるし、宿のロビーで話すと邪魔なのかな。皆んなで着いて行く。大きな庭で草木は何もなく、見晴らしの良い場所だ。
「で。誰が戦いますか?」
「あれ?話し合いは?」
「ほほ。戦いの後必ず話しますよ。」
「もういいじゃない。戦うなら私が行くわよ。」
「女子に戦わせるのか?」
「って言っているから僕が行くよ。」
「師匠!頑張って下さい!」
「シノブさん……殺さないようにね。」
セローは分かるけど、レブルの殺さないようにってどういう事だ?
『忍様。こちらからの攻撃より防御に徹した方が良いかと。』
「そう?力を見せるなら攻撃した方がいいんじゃないの?」
『武力を見せるのも手ですが。この手の強さに自信がある人は、攻撃が効かないと思わせた方が効果的です。』
「そっか。矛楯の楯をやれば良いんだね。」
『念の為に防御補助はします。マッスルレインフォース、ダイヤモンドアーマー、パワーセーブ。』
「ありがとうアイさん。」
「準備はいいかな?魔導師くん。」
大丈夫だろうか。あの執事の人やる気と言うか、殺気すら感じるんだけど?気のせいか?
「いつでもどうぞ。」
「そんな隙だらけな構えで……。」
―ッス。
目に前から音も無く消えた執事さん。
「こんなに早く動ける人、2人目ですよ。」
「!!」
僕の背後に回るのが見えたので、後ろを振り返る。執事の人は僕から一度距離を取った。
「探知魔法ですかな?」
「え?普通に目で追いましたけど。」
「魔導師が私の速さを捉えるなんぞ……いや、少し手を抜きすぎましたか。これはどうですか?」
―シュン。
後ろにいた執事さんは、左に動こうとして右に。こっちにまっすぐ来たかと思うと、僕の脇から背後に回る。って思ったらまた距離を取り、僕の周りをぐるぐる回り始める。
「お爺さんが何人もいるように見えます!師匠!?」
「落ち着きなさいセロー。これくらいならまだ目で追えるわ。」
「レブルとシノブならな。俺はもう消えたようにしか見えない。」
「いずれセローもこうなっちまうのか……。」
「私もあんな動きが出来るの!?」
「シノブの弟子だもんなぁ。無いとは言えないよな。」
「本当!私頑張るね!」
「お、おう。」
皆んなワイワイ楽しそうだね。僕は目が回りそうだよ。僕の周りをぐるぐる回っているだけで、なかなか攻撃をして来ない。これじゃ攻撃が効かないってアピールも出来ない。
「私の速さに着いてくるだと!?貴方は一体何者ですか?」
「何者も何もただの魔導師だよ。攻撃して来ないの?」
「っく……。」
ぐるぐる回るって疲れないのかな。あれって漫画とかで見た動きだよね?何かで動きに緩急をつけるって書いてた気がする。ん〜何だっけか。
「気がそれた!?そこだ!!」
―ゴン!ボキ。
「あ、少し気がそれたね。ごめんごめん。」
「っぐ!」
「手は大丈夫?嫌な音がしたけど。」
執事さんは手を後ろに隠し、何事も無かったかのように微笑む。
「随分と硬いですな。何か防具でも仕込んでいましたか?」
「いや、今当てた脇腹には何も。これただのライダースーツだし。」
「そんな!それでは己の肉体で……。」
恐らくだけど、攻撃をした執事の手がどうにかなったな。お爺さんだし少しはしゃぎ過ぎだな。あ、でも戦いはこれで終わりかな。
「次はそちらからどうぞ。」
「え?終わりじゃ無いの?」
「何を言いますか。貴方はまだ何もしていないじゃ無いですか。」
「まぁ見てただけだけど。」
人と戦う時はターン制なのか?そっちが見せたから、次は僕って?
「アイさん。何故か僕のターンになった。」
『そうですね……。先程で力の差は分かったはずですのに。』
「どうしよう。攻撃する?でも怪我した人にはなぁ。」
『それであれば先程の動きを真似てみるのは如何でしょう?』
「あのぐるぐる歩くやつ?何となくは見てたけど、そんなので良いのかな?」
『あの動きは誰にでも出来るものではありません。それを目の前でやれば、あのご老人も分かるかと思います。』
そんな凄い事なんだ。ただ少し早く歩けば良いだけなのに。
『少しコツが要り、難しいと思いますが……』
「まぁいいか。じゃ、行くよ。」
―ッス……ッス……。
「な!この動きは!!」
「やっぱりと言うか。シノブさんは出来るのね。しかも執事さんより速くて、目で追えないわ。」
「さすが師匠!師匠が10人くらいに見えます!」
『……。』
出来たのは良いけど。この後どうしよう。一発入れた方がいい?う〜ん。
「私の動きを捉える目……そして私をも超えるこの動き。次元が違いすぎる……。」
膝をつき、さっきまでの殺気が消えた執事さん。
「負けました。」
「え?」
何もしていないのに勝った。強さを見せるのはこれからだったのに、まぁいいか。
♦︎
場所を変えて話を始める執事さん。てはセローに診てもらったけど、どうやら折れていたらしい。アマンに言ってミルクを渡しておいた。
「私はヴァークに向かう途中の旅人です。とある事情からお嬢様を送り届ける使命がありました。」
「一応ちゃんと護衛の依頼はあるんだね。でもそれがどうして戦う事に?」
「本当の目的は、私の代わりを任せられる人を探しているのです。」
手を見つめ天を仰ぐ執事さん。
「私も歳で、動きも大分衰えて来まして。」
「あれだけ動けて、衰えたって……。」
「王都では魔界との戦いも活発でして。ここまで何とか来れましたが、肩も上がらず腰も限界に近づいてきています。このままでは、魔界の一個中隊からお嬢様をお守り出来ないと……。」
「その基準がそもそもおかしいがな。」
成る程ね。その前提がこの品定めってわけか。だけど強さを見るのにガチで戦うのはどうかと思う。執事さん自身が怪我したら、誰がそのお嬢様を守るんだろうか。
「爺や!」
「お嬢様?如何されましたか?」
キラキラした宝石を身につけて、どこかのお姫様の様な人が執事さんに詰め寄った。
「また戦ったの!その手!?誰かにやられたのね?」
「ほほ。これはただ自滅を……。」
「貴方達がやったの?」
「やったと言うか。結果的にこうなったと言いますか。」
「爺やの敵!」
―キン。
剣を抜き殺気立つお姫様。
「えー何でそうなるかな?」
剣を構えて僕らを睨むお姫様。これ戦うの?
「冒険者様。お話を聞いて頂けるようで。」
「話は少しギルドで聞いています。戦うとか?」
「ほほ。話が早いですな。少し移動しても?」
そう話すと執事の人は首を回し、眼つきが変わった。
「いやいや、戦いに来た訳ではなく、話をですね。」
「分かりました。すぐそこに広い場所があるので着いて来て下さい。」
こっちは5人いるし、宿のロビーで話すと邪魔なのかな。皆んなで着いて行く。大きな庭で草木は何もなく、見晴らしの良い場所だ。
「で。誰が戦いますか?」
「あれ?話し合いは?」
「ほほ。戦いの後必ず話しますよ。」
「もういいじゃない。戦うなら私が行くわよ。」
「女子に戦わせるのか?」
「って言っているから僕が行くよ。」
「師匠!頑張って下さい!」
「シノブさん……殺さないようにね。」
セローは分かるけど、レブルの殺さないようにってどういう事だ?
『忍様。こちらからの攻撃より防御に徹した方が良いかと。』
「そう?力を見せるなら攻撃した方がいいんじゃないの?」
『武力を見せるのも手ですが。この手の強さに自信がある人は、攻撃が効かないと思わせた方が効果的です。』
「そっか。矛楯の楯をやれば良いんだね。」
『念の為に防御補助はします。マッスルレインフォース、ダイヤモンドアーマー、パワーセーブ。』
「ありがとうアイさん。」
「準備はいいかな?魔導師くん。」
大丈夫だろうか。あの執事の人やる気と言うか、殺気すら感じるんだけど?気のせいか?
「いつでもどうぞ。」
「そんな隙だらけな構えで……。」
―ッス。
目に前から音も無く消えた執事さん。
「こんなに早く動ける人、2人目ですよ。」
「!!」
僕の背後に回るのが見えたので、後ろを振り返る。執事の人は僕から一度距離を取った。
「探知魔法ですかな?」
「え?普通に目で追いましたけど。」
「魔導師が私の速さを捉えるなんぞ……いや、少し手を抜きすぎましたか。これはどうですか?」
―シュン。
後ろにいた執事さんは、左に動こうとして右に。こっちにまっすぐ来たかと思うと、僕の脇から背後に回る。って思ったらまた距離を取り、僕の周りをぐるぐる回り始める。
「お爺さんが何人もいるように見えます!師匠!?」
「落ち着きなさいセロー。これくらいならまだ目で追えるわ。」
「レブルとシノブならな。俺はもう消えたようにしか見えない。」
「いずれセローもこうなっちまうのか……。」
「私もあんな動きが出来るの!?」
「シノブの弟子だもんなぁ。無いとは言えないよな。」
「本当!私頑張るね!」
「お、おう。」
皆んなワイワイ楽しそうだね。僕は目が回りそうだよ。僕の周りをぐるぐる回っているだけで、なかなか攻撃をして来ない。これじゃ攻撃が効かないってアピールも出来ない。
「私の速さに着いてくるだと!?貴方は一体何者ですか?」
「何者も何もただの魔導師だよ。攻撃して来ないの?」
「っく……。」
ぐるぐる回るって疲れないのかな。あれって漫画とかで見た動きだよね?何かで動きに緩急をつけるって書いてた気がする。ん〜何だっけか。
「気がそれた!?そこだ!!」
―ゴン!ボキ。
「あ、少し気がそれたね。ごめんごめん。」
「っぐ!」
「手は大丈夫?嫌な音がしたけど。」
執事さんは手を後ろに隠し、何事も無かったかのように微笑む。
「随分と硬いですな。何か防具でも仕込んでいましたか?」
「いや、今当てた脇腹には何も。これただのライダースーツだし。」
「そんな!それでは己の肉体で……。」
恐らくだけど、攻撃をした執事の手がどうにかなったな。お爺さんだし少しはしゃぎ過ぎだな。あ、でも戦いはこれで終わりかな。
「次はそちらからどうぞ。」
「え?終わりじゃ無いの?」
「何を言いますか。貴方はまだ何もしていないじゃ無いですか。」
「まぁ見てただけだけど。」
人と戦う時はターン制なのか?そっちが見せたから、次は僕って?
「アイさん。何故か僕のターンになった。」
『そうですね……。先程で力の差は分かったはずですのに。』
「どうしよう。攻撃する?でも怪我した人にはなぁ。」
『それであれば先程の動きを真似てみるのは如何でしょう?』
「あのぐるぐる歩くやつ?何となくは見てたけど、そんなので良いのかな?」
『あの動きは誰にでも出来るものではありません。それを目の前でやれば、あのご老人も分かるかと思います。』
そんな凄い事なんだ。ただ少し早く歩けば良いだけなのに。
『少しコツが要り、難しいと思いますが……』
「まぁいいか。じゃ、行くよ。」
―ッス……ッス……。
「な!この動きは!!」
「やっぱりと言うか。シノブさんは出来るのね。しかも執事さんより速くて、目で追えないわ。」
「さすが師匠!師匠が10人くらいに見えます!」
『……。』
出来たのは良いけど。この後どうしよう。一発入れた方がいい?う〜ん。
「私の動きを捉える目……そして私をも超えるこの動き。次元が違いすぎる……。」
膝をつき、さっきまでの殺気が消えた執事さん。
「負けました。」
「え?」
何もしていないのに勝った。強さを見せるのはこれからだったのに、まぁいいか。
♦︎
場所を変えて話を始める執事さん。てはセローに診てもらったけど、どうやら折れていたらしい。アマンに言ってミルクを渡しておいた。
「私はヴァークに向かう途中の旅人です。とある事情からお嬢様を送り届ける使命がありました。」
「一応ちゃんと護衛の依頼はあるんだね。でもそれがどうして戦う事に?」
「本当の目的は、私の代わりを任せられる人を探しているのです。」
手を見つめ天を仰ぐ執事さん。
「私も歳で、動きも大分衰えて来まして。」
「あれだけ動けて、衰えたって……。」
「王都では魔界との戦いも活発でして。ここまで何とか来れましたが、肩も上がらず腰も限界に近づいてきています。このままでは、魔界の一個中隊からお嬢様をお守り出来ないと……。」
「その基準がそもそもおかしいがな。」
成る程ね。その前提がこの品定めってわけか。だけど強さを見るのにガチで戦うのはどうかと思う。執事さん自身が怪我したら、誰がそのお嬢様を守るんだろうか。
「爺や!」
「お嬢様?如何されましたか?」
キラキラした宝石を身につけて、どこかのお姫様の様な人が執事さんに詰め寄った。
「また戦ったの!その手!?誰かにやられたのね?」
「ほほ。これはただ自滅を……。」
「貴方達がやったの?」
「やったと言うか。結果的にこうなったと言いますか。」
「爺やの敵!」
―キン。
剣を抜き殺気立つお姫様。
「えー何でそうなるかな?」
剣を構えて僕らを睨むお姫様。これ戦うの?
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