無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

21話 もう俺らでは止められない。

 早々にリタイヤなセローを2人に任せて、レブルの練習をする事にした。


「周りは森だけど大丈夫かしら?」
「町から森まで少し空いているから大丈夫でしょ。まぁ燃えたら消せばいいよ。」
「シノブさんが言うなら大丈夫ね。」
「じゃ、準備しといて。僕も準備するから。」


 レブルにそう告げ僕は森に入っていった。


「初めはこれでいいか。ちょっと来て貰うよ。」


 熊の魔物を抱えて連れてきた。それをレブルの前に差し出す。


 ―ガウ?


「「んなっ…………。」」
「熊が相手ね。悪くないわ!」


 驚く熊。呆れるアマンとゾン。それとは対照的なやる気満々なレブル。


 ―ボォウ。


 剣を構え火の翼を生やしたレブル。驚く熊は動かない。


「じっとしてちゃ何も起きないじゃん。そら。」


 ―ゲシ。


 熊のお尻を蹴り前に無理やり出す。覚悟を決めた熊が両手を振り上げる。


「隙だらけね。」


 翼が広がりレブルが踏み込む。熊の前から消えた様に見えたレブル。目標を見失った熊。


「いつまでそっちを向いているの?」


 ―ガ…………。


 振り向くと首が落ちた。


「イメージ通りね。」
「凄い凄い。どんどん行くよ!」
「俺らは捌くか。」
「そうだな。」


 アマンとゾンが熊を解体する。その間にも魔物を投げつけた。それを瞬殺で倒すレブル。捌きながら見る2人は、その異様な光景も驚かない。


「もう俺らでは止められないな。」
「3人が暴走する様であれば、結界張ってもらってじっとしていよう。」
「そうだな。」


 そこに騎士達が見回りをして帰ってくる。


「今日は森がいつも以上に魔物がいなかったなぁ。」
「そうだな。いつもこうだと楽なんだが。」
「ん?あんた達は確か……。」


 魔物が空から降ってきた。


「もう次か。こりゃ捌ききれんな。」
「アマン。随分前から追いついてないぞ。」
「そうだったな。」


 魔物を捌く2人は動じない。後ろには木にもたれかかる少女。


「早く逃げろ!俺達が時間を稼ぐ!」
「あー大丈夫だと思いますよ。」
「それよりそこにいる方が危ないっすよ。」


 そんなやり取りに気を取られていると、魔物がこちらに向かってくる。


「くそ。こちらに気がついたか!」


 魔物の前に割って入る騎士。一瞬暖かい風が吹くと、今までいなかった少女が1人。


「あら?さっきの騎士達じゃない。ここは魔物が降ってくるから危ないわよ。」
「降ってくる?」
「ほら。」


 剣を指した先に黒い影。


「流石に少し雑になってきたわね。シノブさんも飽きたのかしら。」


 再び暖かい風とともに、目の前に落ちてくる魔物。立ち上がる事は無く動かない。


「おーい、シノブ。危ないからストップだ。」


 物陰から人が飛んでくる。その他には大きな蛇を抱えて。


「な!トゥリーンスネーク!?」
「え!連れてきちゃったよ。まぁいいか。こいつは僕が倒しちゃおう。」


 ―スパン!


 目の前に首が落ちる。声の出ない騎士達。


「私が倒しても良かったのに。」
「そう?」
「まぁ沢山試し斬りはしたし、持って来たのはシノブさんだからいいんだけど。」


 騎士の1人が僕に声をかける。


「その剣は?」
「ん?これは風の剣。風だから見えにくいですよね。」
「いえ、しっかり見えます。」
「そうなんですか?まぁちゃんと見れば分かるか。」


 風の剣を解いて、コレクトで仕舞う。


「え?今剣が消えた様な……。」
「ええ。消しましたよ。もう戦わないですし。」
「でも剣先だけない様にも?」
「無いですよ。前に使って刃の部分は砕けちゃいました。」
「それじゃどうやって?」


 何を驚いているんだろうか?持つとこしかない剣が気になるのかな?コレクトでまた出して見せる。


「普通の剣に見えますが。」
「そうですね。普通の剣ですよ。」
「でも魔法剣ですよね?」
「今回のは剣の形に風魔法で作っただけですよ。」
「今回?他にも出来るのですか?」
「火は森で禁止されてますが、水なら出来ますし。土もやった事ないけど多分もっと簡単にできますね。」


 ぽんぽん答えていくと、周りが静かになる。


「あれ?僕何か変な事言った?そろそろ帰ろうか。2人とも終わった?」
「おいおい、この数あの時間で全部出来るわけない。」
「終わったのはこっちに纏めてあるから頼む。」
「はい。」


 コレクトで仕舞う。まだ捌けてないのは後で出すから。今は邪魔だし仕舞うか。


「魔物の山が一瞬で?」


 騎士達の間に沈黙が流れる。


「魔物の血でだいぶ汚れちゃったね。」
「切り口は多少焼けたけど、それでも多少は出ちゃうわよね。」
「君!血が付いているぞ!?大丈夫なのか!?」
「あーさっきの返り血ね。私もまだまだね。」


 ゴシゴシ拭くレブル。


「こらこら、そんな雑に拭いたら服についたやつが落ちないでしょ。」
「ご、ごめんなさい。」
「しょうがないな。アイさん。」
『洗濯ですね。りょうかいです。マジックコントロール・ジャストワン、クリーンリカバリー。』
「これに少し工夫を……アイさんカバーストロングもよろしく。」
『畏まりました。カバーストロング・エリア。』
「レブル目瞑っておいて。」
「え?えぇ。」
「……バブル!」


 水に包まれるレブル。


 ―パァン。


「なんだか、くすぐったかったわ。」
「怪我してなければ成功だ。」
「髪も服もびっしょりじゃなければ、なお良かったのだけど。」
「ふっふっふ。乾かすのは別の魔法だよ。ワームエアー。」


 ―ビュゥゥゥ……。


「何この風……暖かい。」
「風はコントロール得意だから。あとはイメージを付与すれば出来ると思って。」
「これは便利な魔法よね…………。」


 髪を手櫛で整えながら乾かすレブル。これ、結構時間かかるなぁ。女の人は髪が長いからしょうがないか。


「ありがとうシノブさん。」
「いえいえ。こちらも気なる事がひとつ解決したので。」
「そう……。もしかしなくても、この魔法初めて使うのよね?」
「そうだけど。出来ると思ってたから。」
「私は実験台?もしこれが失敗していたら?」
「大丈夫。失敗しないと思ってたから。」
「その大丈夫はどこからくる自信!?」


 レブルに少しだけ怒られた。人に実験するのはやめなさいって。一応自分の服で一度やったんだけど。


「じゃ、皆んな帰ろうか。」
「んーお腹空いたわ。早く帰りましょう。」
「俺も解体で腕がパンパンだ。」
「腹減ったぜ……。」
「2人は少し鍛えた方が良くない?なんならコーチするけど。」
「……シノブに鍛えられたら、俺らは商人じゃ無くなりそうだな。」


 気にもたれかかってたセローを肩に担ぐ。


「おい。奥さんをそんな扱いするなよ。子供いるんだろう?」
「奥さん?子供がいる?」


 目線を辿ると肩にいるセローを見ていると思う。


「セローは子供かもしれないけど。奥さんではないよ?」
「そ、そうです。私は師匠の弟子。奥様はあちらのレブルさんです。」
「ん?この娘が子供で弟子?奥様は貴女か。」
「いや、だから。私はパートナーであって、奥様じゃ……。」


 皆んなの頭に?が浮かぶ。この噛み合ってない会話を修正……。


「なんでも良いですよ。では僕らは街に帰るので。」
「え?あー、そうか。俺達も帰るか。」
「そうだな。なんか可笑しなものを見えちゃうくらい、疲れているのかもしれない。早く帰って寝よう。」


 何事も無く?僕らは街へと帰る。

「無敵のフルフェイス」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く