無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

20話 イメージは大切なんだね。

 怪しい者を街へ通すわけにはとか言われ、僕らの行く手を遮る騎士の人。


「どうすればいい?」
「隠そうとした剣を見せてくれればいい。」
「まだ試し斬りもしてない剣だし。レブル以外の人に渡したくないんだけど。」
「隠すとはますます怪しいな。」


 困った。あの剣はさっきの魔力を剣に込めた訳だけど。渡して何かあったら僕らのせいになるよね。


「それじゃ、レブルが使って見せるのはどう?」
「え?私がやるの?こんな人が居るところで?」
「知らない人に触らせるより、魔力操作で剣が使えるレブルの方が安全かなって。」
「安全って……それを聞くとますます自信を無くすわ。」
「え〜大丈夫だよ。火の剣使えるし。何もないようにフォローはするから。」
「それならやってみてもいいけど……。」
「それでどう?」


 騎士の人が仲間と話し合う。


「その剣の性能が見れれば……それでいい。」
「そう?じゃ使ってみるけど。危ないから離れてね。」


 皆んなが距離を取る。馬車は僕の側から離れないけど、少しは離れた方がいいと思うよ?


「馬が動こうとしないんだ。」
「囲まれて少し萎縮しちゃったかな。しょうがないから、僕が守るよ。」
「……それなら俺らもここに居る。」
「1人も2人も変わらないからいいけど。」
「助かる。」
「多分、馬もここが一番安全だと思ってるんだよな……。」
「何か言った?」
「「なんでもない。」」


 まぁいいや。とにかく周りに被害がいかないよう何かしないとか。


「アイさん。一人一人に結界みたいなの張れる?」
『レブルは火を使うので、水で覆う様にすれば。シャボン玉がイメージしやすいかもしれません。視界も奪いませんので、その中から出なければですが。』
「それでいこうか。シャボン玉も分かりやすいし。さすがアイさんだ。」
『ありがとうございます。それではカバーストロング・エリア。』
「バブル!」


 ―ポワ。


「な、なんだ?」
「結界の様なものを作っただけです。あ、そこから動かないで下さいね。効果なくなちゃうんで。」
「それは何かの罠ではないのか?」
「なら好きにして良いですけど。その場合は自己責任でお願いしますね。」


 やれやれ、疑り深い人だ。水の結界って見れば分かるだろうに。それ以外何に見えているんだろうか。


「私は?私には何かしてあるの?」
「レブルには動きを邪魔しないように、身体を覆う様にカバーしてるよ。」
「なら安心だわ。こんな形になったけど初振りね……すぅ……はぁ。」


 深呼吸して剣の柄を握るレブル。


「はぁ!」


 ―ギン、ボォォォ。


 鞘から抜いた光の剣は綺麗な赤色で輝き、その姿を現わす。


「火剣だと!?」
「やはり!ただならぬ魔力の正体はこれだったか。」
「それにしても……。」


 剣は確かに炎を纏っている。ここで火と言わないのには理由がある。


「シノブさん。これ何?」
「火剣だね。僕がやった時と似てる。」
「……これじゃ使えないわ。普通のサイズにならないのかしら?」
「うーん。アイさんどう?」
『使う量は最低でもこれなので。光の魔力を他に回すしかないですけど……火を纏って同時に防御や機動力を上げるなど如何でしょう?』
「アイさんからのアドバイス。出力はこれで最低なので、魔力を防御や機動力面に回してみては?って。」
「魔力を防御や機動力に……。」


 剣を掲げて考えるレブル。


「アイさんがアドバイスするって事は出来るのよね。」


 剣と僕と交互に見るレブル。僕を見てどうしたのか?


「私ならどう戦うか。……そうね。」


 ―ボォウ!


 火が通常の剣のサイズにまで小さくなる。変わった様子はあまり無いけど、レブルは……。


「は!」


 ―バッ!


 背中に火の翼が生える。


「私はこれで戦うわ。」
「火の翼が生えた。あれって?」
『防御と起動力で言えば、機動力に見えますね。あれでどう戦うかイメージしたかレブル次第ですが。』
「レブルの戦うイメージか。でもあれって熱くないのかな?」
『忍様の張った結界に干渉していないので。自身を燃やす様な熱は無いと思われます。』
「へぇ〜イメージって大切なんだね。」


 さすが魔法。もはや何でもありな感じがする。翼があるって事は飛べるのかな……。飛べたら気持ち良さそう。バイクで風を感じると似た感じは体験出来そう。


「ふーふー。これで動くのは少し練習が入りそうね。」
「おいおい。レブルに翼が生えたぞ?」
「さっきの相談役さんの話から、あそこまで出来るものなのか?」
「す、凄いで……うぷ。」
「セローは安静にしてろよな。これでも飲むか?」
「ありがとうございます、アマンさん。」
「とりあえず、危なげなくって事で。結界は解いちゃいますよ。」


 ―パァン。


 シャボン玉が割れ、止まっていた騎士達が驚く。


「まさか、ただならぬ魔力は国宝級の武器でしたか。」
「国宝級……しかし何故こんな所に?」
「それはここにいた人にしか分かりませんよ。ね?お兄さん。」
「ん?僕?」


 剣が気になるって言った騎士が、僕に話しかけてきた。


『忍様。光魔法の話は他言しない方が良いかと。作ったと分かると色々と巻き込まれる可能性があります。』
「うん。分かった。ありがとうアイさん。」
「アイさん?」
「あーこっちの話です。」


 レブルも剣を鞘に戻して、いつもの感じに戻る。道を塞いでいた騎士達は今も変わらないけど、見せるもの見せたし行ってもいいよね。


「それじゃ僕らはこれで。1人調子も悪いので。」
「1人気持ち悪そうなご婦人がいるな。どうした?」
「ちょっと酔ってしまって。あ、お酒とかは飲んでませんよ。」
「そうか。治癒師がいるので回復魔法でもするか?」
「いえ、魔力は貰うと悪化しそうなので。」
「そうか。魔力はあまり子供に良くないらしいからな。若いのに大変だな。」


 道を塞いできた騎士達もレブルの剣を見て、セローの調子が悪いと話すと優しく対応してくれた。


「俺の嫁も大変だと言っていたしな。大変だが頑張れ青年。」
「ん?そうなんですか。まぁ僕の責任なのでしっかり介抱はしますよ。」
「うむ。それでこそ男だ。」


 微妙に会話に違和感があるけど……セローもまだ15歳だし、子供に魔力分けるのはあまり良くないんだな。憶えておこう。


 ♦︎


 そのまま騎士さん達と一緒に街まで来た。


「ここが【トゥリーン】か。森を抜けてきた割に魔物にあまり出会わなかったな。」
「ここは森に囲まれているが、大人数で移動する者には魔物もあまり近寄らんのだよ。」
「そうなんですか。僕らだけならすんなり来れなかったかも知れないですね。一緒に連れてきて貰ってありがとうございます。」
「見た目はあれなのに、しっかりした青年だな。もうすぐの男は違うんだな。」
1?もうそんな時間ですかね。」
「ん?時間?」
「ここまでありがとうございました。あ、オススメの宿とかありますか?」
「宿か?馬車持ちならば入って左手に行けば良い。探さずとも向こうからやって来るだろうよ。」
「向こうから来る?」
「はは。行けば分かるさ。それじゃ、我々は戻るので。」


 騎士達は再び森へと消えていった。始めは疑われたりもしたけど、何故か途中から優しくなったし。今度会ったらちゃんとお礼しないと。


「左にまっすぐ行けば分かるって、騎士の人言ってたけどどういう事だろう?」
「前に来た時はどこ泊まったっけかな?」
「入口すぐだった事は覚えてるがな。確かあの時は……。」
「すいませーん!」
「そうそう、こうやって呼ばれて着いて行ったな。」
「す、すいませーーん!」
「あの時は確か走って客引きしてた人がいてな。」
「す、すー!止まっ。」
「ん?」


 どこからか呼ばれて馬車を止める。


「やっと止まって……くれた。馬車とはいえ走るの……しんどい。」
「どうかしましたか?」
「宿を……お探しではないですか?」
「え?探しているけど。なんで分かったの?」
「前に一度見た馬車だけど。逆方面から入ってきたから。」
「前にって……あーこの嬢ちゃん。前に泊まった宿の。」
「はい。覚えていただき光栄です。どうですか?馬車持ちならばうちがオススメですよ!」


 気合の入った客引きの人だった。


「前回より少し人が増えてんだが、男3人に女2人で2部屋いけるか?」
「勿論です!」


 元気な客引きも今度は、馬車に乗り込んで道案内をする。そこ、乗っちゃうんだ。まぁいいけど。


 宿を決めた僕達は、今後の方針を決める為に集まった。


「で、ここの街だけど。あのミルクの生産地で間違い無いよね?」
「そうだな。」
「よし、食べ歩こう。」
「本当、シノブは欲望に忠実だよな。」
「そりゃそうだよ。やりたい事やらないと。人はいつまで生きられるか分からないし。」
「まだ若いのに考え方が歴戦の戦士だな。」
「戦場で死ぬなんて事は、無そうだけどな。」


 と言う訳で反対意見も内容なので、食べ歩き案は採用された。


「ただ食べるだけじゃ太るわ。適度に依頼というか魔物と戦いたいわ。この剣の使い方も試したいし。」
「それは僕も気になるところだな。」
「私も……師匠に魔法を……教わりたい。と言うか、魔力を消費したい……。」
「「「……。」」」


 一番始めにやる事は決まったようだ。まずは外に行き魔力発散。森の外に行くけど、アマンとゾンも今回は着いてくる。


 ♦︎


 森に来た僕ら。


 ―バシャーン!バシャーン!


「体が軽いよ!あはは!」
「セローはあんな感じだったか?」
「魔法使っている時は、活き活きするとかかしら?」
「迎え酒的な感じかもしれんぞ。」
「「あぁ。」」


 確かにこのセローは少しテンションがハイである。


「あははは!それそれ!それ!!」


 少し……そろそろ話しかけるか。


「セロー。」
「はい!師匠!」


 一気に距離を詰めて来るセロー。だから近いって。


「そんな闇雲に魔法ぶっ放しても、何も上達しないよ?」
「え!使えばレベルアップする的なものでは?」
「レベル?そんなのあったっけ?」
『ありません。』
「無いんだ。」
「無いのですか!?」


 がっくり倒れ込むセロー。一体今まで何を見て学んできたんだ?


「せっかく魔法のコントロール上手なんだから。集中して魔力を操作する事をお勧めするよ。」
「ご教授ありがとうございます!」
「この前の円盤もそうだし、僕の使う水玉もちょうどいい練習だよ。」
「師匠の技!やってみます。」


 ―ザブ。


「こうですか?」
「そうそう。それをこーやって。」


 ―ザン!ザン!ザン!


 目の前の木に当てる。速度も上げているから、当たっても無くならず貫通する。それを指で動かしたい方へ誘導する。


「凄いです!私も!えい!」


 ―ベシャ。


 セローの水玉は木に当たって無くなった。


「へー同じ魔法に見えて違うのね。」
「師匠はどうやってそうやって作りますか?」
「ん?これ?やっぱりイメージかな。水玉の大きさはこれ!でも集める水のイメージを変えているんだ。」
「集める水のイメージですか?」
「そうそう。例えば桶一杯の水と、桶が2つ分とか。僕は湖とか海とか想像しちゃうけど。」
「大きさのイメージのみじゃない。成る程です。こうですか。」


 ―ザブ。


「それで……えい!」


 ―ザン!


「出来ました!これ凄いです!今までの足踏みが嘘のようです!」
「うんうん。喜んで貰えて何よりだ。」


 上達を喜ぶセローとそれを見守る僕。なぜか後ろの3人から心配そうな目を向けられているけど、気のせいだろう。


 こうしてセローは魔法を上達させ、今度は魔力切れで倒れるのであった。

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