無敵のフルフェイス
19話 行き場のない魔力。
セローが回復したのを待った。そんなに時間はかからなかったけど、僕には長く感じた。
「やっと落ち着いてきました!師匠!」
「周りには何もいないね。じゃ、早速行ってみようか!」
「2人ともテンション高いわね。」
「はい!よく分かりませんが、元気が振り切れそうです!」
「あれだな。一周回ってハイになるやつ。」
「アマンもたまにあるよな。」
「そうか?」
よく分からないけど、皆んなの目線が空へと集まる。
「お待たせしました!それでは合作光魔法『ソーラーレイ』お披露目です!」
「わーパチパチパチパチ!」
「「「パチパチ……。」」」
一生懸命な弟子に疎らな観客。僕らしかいないけど、ショータイムだよ。
「いけ!」
―キラ…………ゴォゴォゴォゴォ……。
「なんで揺れるの?」
『空気の振動によりこの辺近隣が揺れ始めています。』
「へ〜……へ?」
「どうしたのシノブさん。」
「空気の振動により揺れてるってアイさんが。」
「それって原因は……あれよね?」
今まさに一筋の光が下り……
―ドン!…………ガガガガ!
「……!?…………!……!」
「……!!……!!」
「え?何か言った?」
レブルとセローが何か言ってるけど聞こえない。きっとこの光景に驚いているんだろう。確かに光魔法って偉大な感じがするし、これぞ大魔法って感じだよね。
「……!……!……!」
「そんなに興奮しなくても。綺麗だよねこれ。」
『忍様。レブルが止めてと言っています。』
あ、止めるのか。どう止めるんだ?うーん、再チャージにすれば良いか。
―ッピ!
手を上にあげ、光魔法を再チャージへと移行して止める。
土煙が視界を遮る。僕は風魔法でそれを晴らす。出てきたのは地が裂け、底の見えない大きな穴だけだった。
「どうしたのレブル?」
「どうしたの?じゃないわ!この星壊す気なの!?」
「壊すとか大袈裟だよ〜これぐらいどってことないでしょう。」
「いやいや、あるから言っているのよ。」
慌てて止められたので、空中で待機していたレンズと円盤は再度光を集める。
「セローもあの円盤下げなさい。」
「え?あれ下げたら、魔力の消費がなくなっちゃう。」
「世界がなくなるよりマシでしょ?」
「まぁ仕方ないか。お終い!」
―バシャ、バシャ、バシャ、バシャ……。
次々と円盤が形を崩して、ただの水に戻って行く。その結果は……
―ザァァ……。
「普通に雨みたいになったわね。」
「……。」
「セロー?」
「気持ち悪いですぅ……。」
「ちょっと!私に吐かないでよ!?」
馬車を降ろして背中をさするレブル。
「飲み過ぎたアマンみたいだ。」
「ふは!?確かにな。魔力か酒かの違いか。」
「笑い事か?結構辛そうだけど。」
「うぅ……気持ち悪い。」
「全くもう……あんなにはしゃぐから。」
セローをレブルに任せて、円盤の雨が止んだのを見てある穴に近づく。
「飛び込んだら地底世界に出たり……。」
『しません。』
「で、ですよね。これ何が下にあるの?」
『何もありませんよ。ただ光魔法が当たった焦げ跡があるくらいです。』
「自分で作ったものに冒険があるわけないか。そしたら危ないから埋めておきたいね。」
『多少消滅した地面もありますが。周りから補えば少しくらい大地が凹むくらいですよ。』
「じゃ、ちゃちゃっと直してましょう。」
アマンとゾンがそっと穴を覗く。
「こんな大穴開けて、次はすぐ直す魔法か。どんどんおかしな人間になって行くよな。」
「ただ壊すだけじゃないって事だろう。」
「覗き込んでると危ないよ。」
―ゴゴゴ…………。
土を操作して元に戻す。若干凹んじゃったけどいいとしよう。さてもう一つの問題はあのレンズか。
「うーん。撃って魔力を使い切るか。地面がダメだとすると、空に撃つかな?それともあそこで爆発させちゃうか……か。どうかなアイさん。」
『あの位置で爆発は推奨しません。忍様自身も危なくなります。』
「何それ、怖!すると空に撃つ?」
『大気圏を超えた後どうなるか未知数ですが。地上よりは安心かと。』
「さっきのよりはね。どちらにしろ危ないのか……魔力を散らせればいいんだけど。」
アイさんと一緒に考えるけど、いい案が出てこない。
「今はいい考えが出ないね。一旦コレクトして考えようか。」
『そうですね。それではレンズの魔力を魔法剣に収めてください。』
「分かった。」
レンズをそのままにすると危ないからと、剣に魔力を流して鞘に入れて保管することにした。
「ふぅ。問題は先送りにした感じだけど、とりあえずはこれでいいか。」
「先送りも何も、あれで解決じゃないの?光属性の魔法剣なんて、凄い代物じゃない。」
「あ〜そんなんでいいの?でもいずれ魔力切れて、ただの剣になっちゃうよ?」
「さっきの魔力でどれくらい持つの?」
『120年程しか……。」
「120年だって。そしたらこれレブル持っててよ。」
魔力を込めた光属性の剣をレブルに渡す。
「光魔法って言っても、魔力を熱に変換すれば火の剣も作れると思うんだ。そうなるとレブルが持つといいかな。」
「あ、ありがとう。なんかとんでも無いもの貰った気がするわね。」
「そう?ただの魔法剣だよ。時間かければ何本でも出来るだろうし。」
「そう言えば、数分でこの魔力貯めたのよね……120年分。」
さてと、地面も元に戻したし。出発しよう。
『忍様。何者かが近づいて来ます。』
「何か来るって。レブル皆んなを。」
「え?はい。」
馬に乗って騎士の様な格好をしている人達が近づいてくる。とりあえずは盗賊では無さそうだけど。
「君達は……魔導師と剣士か。ここで今物凄い魔力反応があったのを知っているか?」
「ええ。それがどうかしましたか?」
「どうかしたかって……あんな世界が滅ぶような魔力が集まれば、周辺国家は動くだろう。」
世界が滅ぶ魔力って、この人も大袈裟だな。さっきの魔力なんて魔法剣に収まっちゃうくらいだよ?フードを深く被った人が、コソコソと何か話している。
「ふむ。ん?そんな訳が……いいだろう。すまんが、そちらの剣士殿。」
「何かしら?」
「その剣貸して貰えないか?うちの魔導師がその剣から魔力が怪しいと言われてな。」
レブルに近寄ろうとする騎士。それを片手を上げて止める。
「悪いけど、これを渡すわけにはいかないよ。」
「そうね。名前も知らない人に剣士が剣を渡すはずが無いわよね。」
「これは申し訳ない。私は【トゥリーン】の第3騎士団所属をやっている。」
「その名前どこかで聞いた気とあるな……あ、美味しいミルクの国。」
「はは。確かに生産地ではあるな。」
【トゥリーン】って町から来たって事は、ここから近くにあるのかな?是非とも寄らないと。
「アマン!行こう!」
「ん?話聞いていたけど、騎士さんほっといていいのか?」
「僕は騎士さんに用はないからいいよ。それよりミルクとか他の特産品が気になる!」
「シノブさんは欲望に忠実ね。」
そして皆んなで馬車に乗り込む。
「いや、ちょっと待ってくれ!その剣を調べさせては……。」
「いやよ。こんな危な……大切な剣を。」
「そんな訳で。僕達は行く所があるので!それでは。」
無理やり会話を切り、馬車を走らせる。色々質問責めされても面倒だし、こういう偉そうな人達には関わらない。それが旅を円満にする秘訣!
「待ちなさい。」
前後を馬に乗った騎士に阻まれ、さっき始めに喋った人が声をかける。
「怪しい者をミスミス街へと行かせては、騎士団の名が折れてしまうよ。」
「えー僕らの何処が怪しいの?」
「「「…………。」」」
「「「…………。」」」
ちょっとレブル達も黙らないでよ。なんで皆んな僕を見るの?
円満な旅は少し暗雲が漂い始めました。面倒だな〜。
「やっと落ち着いてきました!師匠!」
「周りには何もいないね。じゃ、早速行ってみようか!」
「2人ともテンション高いわね。」
「はい!よく分かりませんが、元気が振り切れそうです!」
「あれだな。一周回ってハイになるやつ。」
「アマンもたまにあるよな。」
「そうか?」
よく分からないけど、皆んなの目線が空へと集まる。
「お待たせしました!それでは合作光魔法『ソーラーレイ』お披露目です!」
「わーパチパチパチパチ!」
「「「パチパチ……。」」」
一生懸命な弟子に疎らな観客。僕らしかいないけど、ショータイムだよ。
「いけ!」
―キラ…………ゴォゴォゴォゴォ……。
「なんで揺れるの?」
『空気の振動によりこの辺近隣が揺れ始めています。』
「へ〜……へ?」
「どうしたのシノブさん。」
「空気の振動により揺れてるってアイさんが。」
「それって原因は……あれよね?」
今まさに一筋の光が下り……
―ドン!…………ガガガガ!
「……!?…………!……!」
「……!!……!!」
「え?何か言った?」
レブルとセローが何か言ってるけど聞こえない。きっとこの光景に驚いているんだろう。確かに光魔法って偉大な感じがするし、これぞ大魔法って感じだよね。
「……!……!……!」
「そんなに興奮しなくても。綺麗だよねこれ。」
『忍様。レブルが止めてと言っています。』
あ、止めるのか。どう止めるんだ?うーん、再チャージにすれば良いか。
―ッピ!
手を上にあげ、光魔法を再チャージへと移行して止める。
土煙が視界を遮る。僕は風魔法でそれを晴らす。出てきたのは地が裂け、底の見えない大きな穴だけだった。
「どうしたのレブル?」
「どうしたの?じゃないわ!この星壊す気なの!?」
「壊すとか大袈裟だよ〜これぐらいどってことないでしょう。」
「いやいや、あるから言っているのよ。」
慌てて止められたので、空中で待機していたレンズと円盤は再度光を集める。
「セローもあの円盤下げなさい。」
「え?あれ下げたら、魔力の消費がなくなっちゃう。」
「世界がなくなるよりマシでしょ?」
「まぁ仕方ないか。お終い!」
―バシャ、バシャ、バシャ、バシャ……。
次々と円盤が形を崩して、ただの水に戻って行く。その結果は……
―ザァァ……。
「普通に雨みたいになったわね。」
「……。」
「セロー?」
「気持ち悪いですぅ……。」
「ちょっと!私に吐かないでよ!?」
馬車を降ろして背中をさするレブル。
「飲み過ぎたアマンみたいだ。」
「ふは!?確かにな。魔力か酒かの違いか。」
「笑い事か?結構辛そうだけど。」
「うぅ……気持ち悪い。」
「全くもう……あんなにはしゃぐから。」
セローをレブルに任せて、円盤の雨が止んだのを見てある穴に近づく。
「飛び込んだら地底世界に出たり……。」
『しません。』
「で、ですよね。これ何が下にあるの?」
『何もありませんよ。ただ光魔法が当たった焦げ跡があるくらいです。』
「自分で作ったものに冒険があるわけないか。そしたら危ないから埋めておきたいね。」
『多少消滅した地面もありますが。周りから補えば少しくらい大地が凹むくらいですよ。』
「じゃ、ちゃちゃっと直してましょう。」
アマンとゾンがそっと穴を覗く。
「こんな大穴開けて、次はすぐ直す魔法か。どんどんおかしな人間になって行くよな。」
「ただ壊すだけじゃないって事だろう。」
「覗き込んでると危ないよ。」
―ゴゴゴ…………。
土を操作して元に戻す。若干凹んじゃったけどいいとしよう。さてもう一つの問題はあのレンズか。
「うーん。撃って魔力を使い切るか。地面がダメだとすると、空に撃つかな?それともあそこで爆発させちゃうか……か。どうかなアイさん。」
『あの位置で爆発は推奨しません。忍様自身も危なくなります。』
「何それ、怖!すると空に撃つ?」
『大気圏を超えた後どうなるか未知数ですが。地上よりは安心かと。』
「さっきのよりはね。どちらにしろ危ないのか……魔力を散らせればいいんだけど。」
アイさんと一緒に考えるけど、いい案が出てこない。
「今はいい考えが出ないね。一旦コレクトして考えようか。」
『そうですね。それではレンズの魔力を魔法剣に収めてください。』
「分かった。」
レンズをそのままにすると危ないからと、剣に魔力を流して鞘に入れて保管することにした。
「ふぅ。問題は先送りにした感じだけど、とりあえずはこれでいいか。」
「先送りも何も、あれで解決じゃないの?光属性の魔法剣なんて、凄い代物じゃない。」
「あ〜そんなんでいいの?でもいずれ魔力切れて、ただの剣になっちゃうよ?」
「さっきの魔力でどれくらい持つの?」
『120年程しか……。」
「120年だって。そしたらこれレブル持っててよ。」
魔力を込めた光属性の剣をレブルに渡す。
「光魔法って言っても、魔力を熱に変換すれば火の剣も作れると思うんだ。そうなるとレブルが持つといいかな。」
「あ、ありがとう。なんかとんでも無いもの貰った気がするわね。」
「そう?ただの魔法剣だよ。時間かければ何本でも出来るだろうし。」
「そう言えば、数分でこの魔力貯めたのよね……120年分。」
さてと、地面も元に戻したし。出発しよう。
『忍様。何者かが近づいて来ます。』
「何か来るって。レブル皆んなを。」
「え?はい。」
馬に乗って騎士の様な格好をしている人達が近づいてくる。とりあえずは盗賊では無さそうだけど。
「君達は……魔導師と剣士か。ここで今物凄い魔力反応があったのを知っているか?」
「ええ。それがどうかしましたか?」
「どうかしたかって……あんな世界が滅ぶような魔力が集まれば、周辺国家は動くだろう。」
世界が滅ぶ魔力って、この人も大袈裟だな。さっきの魔力なんて魔法剣に収まっちゃうくらいだよ?フードを深く被った人が、コソコソと何か話している。
「ふむ。ん?そんな訳が……いいだろう。すまんが、そちらの剣士殿。」
「何かしら?」
「その剣貸して貰えないか?うちの魔導師がその剣から魔力が怪しいと言われてな。」
レブルに近寄ろうとする騎士。それを片手を上げて止める。
「悪いけど、これを渡すわけにはいかないよ。」
「そうね。名前も知らない人に剣士が剣を渡すはずが無いわよね。」
「これは申し訳ない。私は【トゥリーン】の第3騎士団所属をやっている。」
「その名前どこかで聞いた気とあるな……あ、美味しいミルクの国。」
「はは。確かに生産地ではあるな。」
【トゥリーン】って町から来たって事は、ここから近くにあるのかな?是非とも寄らないと。
「アマン!行こう!」
「ん?話聞いていたけど、騎士さんほっといていいのか?」
「僕は騎士さんに用はないからいいよ。それよりミルクとか他の特産品が気になる!」
「シノブさんは欲望に忠実ね。」
そして皆んなで馬車に乗り込む。
「いや、ちょっと待ってくれ!その剣を調べさせては……。」
「いやよ。こんな危な……大切な剣を。」
「そんな訳で。僕達は行く所があるので!それでは。」
無理やり会話を切り、馬車を走らせる。色々質問責めされても面倒だし、こういう偉そうな人達には関わらない。それが旅を円満にする秘訣!
「待ちなさい。」
前後を馬に乗った騎士に阻まれ、さっき始めに喋った人が声をかける。
「怪しい者をミスミス街へと行かせては、騎士団の名が折れてしまうよ。」
「えー僕らの何処が怪しいの?」
「「「…………。」」」
「「「…………。」」」
ちょっとレブル達も黙らないでよ。なんで皆んな僕を見るの?
円満な旅は少し暗雲が漂い始めました。面倒だな〜。
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