非青春男子と超青春JK

もり フォレスト

第六話 『友達を作ろう(1)』

「今日はありがとうございました。悠介君について色々分かりました。」
「こちらこそありがとうね〜。」
時間は六時を回った頃だった。
「送って行こうか?」
悠介は聞く。
「ううん、大丈夫。家近くだから、一人で帰れるよ。それとも何?帰り道で私を襲うつもりだった?」
「んなことしね〜よ!夜道に女の子一人は危ないと思ったんだよ!」
「えぇ〜。本当に〜?」
真美が笑いながら言う。
「本当に何もしね〜よ!」
悠介は顔を真っ赤にして言った。
「おっと、そろそろ帰らなきゃ。今日は楽しかったよ、悠介君。それじゃあ、お邪魔しました。」
そう言うと、千咲斗はドアを開けて外に出た。悠介達は手を振って見送った。
「ねぇゆーくん。本当に襲うつもりだったの?」
ドアが閉まったところで、紗都美が不安そうに聞く。
「だ〜か〜ら、そんなことしないってば!ほら、真美姉も何か言ってよ!」
「あっ!さては私達を襲うつもりね。いくら悠介の頼みでもそれは出来ないわ。」
真美が不敵な笑みを浮かべる。
「あぁ〜もう、いい加減にしてくれよ!」
「グルルルル〜〜〜」
悠介が叫ぶと同時に、悠介のお腹がものすごい音で叫びだす。
「あっれ〜?悠介君、そんな態度取っていいのかな〜?この家でご飯作ってるのは誰だったかな〜?」
なんてムカつく顔だろうか。姉でなければ、殴っていただろう。悠介は丁寧に土下座をして言った。
「どうか晩ご飯を作ってください。お姉様。」
「うむ。よろしい。」
真美はとても満足そうな顔だった。悠介は顔を上げると、そのまま部屋に戻った。

 「ゆーくん、ご飯出来たわよ〜。」
紗都美の声が聞こえてきた。悠介は返事をすると、リビングへと向かった。
「今日は大好物の唐揚げよ。いっぱい食べなさい。」
キッチンにいる真美が言った。悠介は嬉しそうだった。
「いただきま〜す!」
三人はご飯を食べ始めた。その風景はなんとも微笑ましいものであった。ご飯を食べ終わった悠介は、風呂に入った後、そのまま寝てしまった。

 次の日。相変わらず、悠介は本を読んでいた。
「おはよう悠介君。あっ、また本読んでる〜!」
千咲斗が話しかけてきた。
「なんだよ。文句はないだろ?」
「青春教訓その1:友達を作るべし!
本ばっかり読んでたら、友達ができるどころか人すら寄り付かないでしょ。」
千咲斗はそう言うと、悠介の腕を引っ張った。立ち上がる悠介。
「ほら見て。」
千咲斗の指差す方向を見ると、女の子が何かとにらめっこしていた。
「悠介君、人と話しかけるの得意?」
「まぁ、特に苦手意識はないぞ。」
「じゃあ助けてあげな……よ!」
千咲斗は悠介の背中を押した。
「あっちょっ……ったく、人使いの荒いやつだな〜。」
そう言いながら、悠介は女の子の方へ歩み寄った。
「どうしたの?」
「ひゃっ!?」
女の子は驚いた。それもそのはず。いつも孤立している悠介にいきなり話しかけられたのだから。
「いきなりごめんな。困ってそうだったからさ。」
悠介が説明すると、女の子は納得した素振りを見せた。
「ありがとう。英語のワークをやってるんだけど、ちょっと分からなくて。」
「どれどれ……」
悠介は問題を見た。英語の得意な悠介からすれば、なかなか教えやすいだろう。
「あぁ〜なるほどね。それじゃあ説明するよ。まず、この単語はacquaintanceって言うんだけど、意味は分かる?」
「確か……知人だっけ?」
「そうそう!だから、この文章を訳すときは……」
悠介は一つ一つ丁寧に説明していた。
「へぇ〜。意外とやるじゃん。」
悠介を遠目に見ながら、千咲斗が呟いた。
「へぇ〜、八本さん説明上手だね!とっても分かりやすかった!ありがとう!」
女の子は頭を下げた。
「いやいや、俺はこれくらいしか出来ないからさ。理解してくれたなら俺も嬉しいよ。ありがとう。」
そう言うと、悠介は自分の席へと戻っていった。
「さすが学年一位だね。」
戻ってきた悠介に、千咲斗は言った。
「別に。たまたま英語だったからだよ。それより、こんなことで友達ができるのか?あんまり変わらなさそうだけど……」
「まあまあ、ちょっと待っててみなさい。きっと何かあるわよ。」
千咲斗は笑いながら言う。その顔は自信に満ち溢れていた。

 次の日、悠介は相変わらず本を読んでいる。すると、これまた女の子が話しかけてきた。また千咲斗だろうと思った悠介は、振り返って言った。
「今日はなん……!?」
悠介は驚いた。千咲斗でも昨日の女の子でもない、知らない女の子が三人ほど立っていたのだから。見た感じ、同学年であることは分かった。
「八本君、だよね?」
「う、うん。どうしたの?俺なんかに。」
「いや、昨日佳奈美が八本君の説明が分かりやすいって言ってたからさ。ちょっと教えてほしいなって思って……」
昨日の女の子はどうやら「佳奈美」という子らしい。
「な、なるほどね。それでどこの問題が分からないの?」
悠介は驚きつつも、問題を見る。三人はそれぞれ数学、社会、国語を教えてもらいたいとのことだった。悠介は一人ずつ丁寧に教えていく。
「佳奈美の言う通りだよ!本当に分かりやすかった!ありがとう!」
そう言うと、女の子達は教室を出ていった。すると、三人と入れ違いで千咲斗がやってきた。
「ね?すごいでしょ?」
誇らしげに言う千咲斗。
「たまたまじゃないのか?」
「何言ってるの?あの子達隣のクラスの子だよ?たまたまで来るわけないじゃん。」
悠介は未だに信じられなかった。しかし、千咲斗はやけに自信があるようだ。結局、悠介はこれを偶然と片付け、また本を読み始めた。

 一週間後、拓人が登校すると、悠介の教室に行列が出来ていた。
(なんじゃこりゃ!?)
驚いた拓人は教室を覗いた。すると……

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