本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
支配人の大切なお客様です。【6】
───都内にあるが、周りには木々が沢山植えてあり森に囲まれたような空間のカフェに一条様をお連れした。
以前、一人で探索に出掛けた時に偶然にも見つけて私にとっても癒しのカフェである。軽食もスイーツもドリンクメニューも充実していて一条様のお口に合えば良いのだけれども……。
「私はダージリンとスコーンandケーキセットにするわ。貴方も好きな物を注文なさい。遠慮は皆無よ」
「一条様がこうおしゃってますから篠宮様もどうぞ。申し遅れましたがボディガードをしております、武井と申します。以後、お見知りおきを…」
やっぱりボディガードだったのか。武井さんに勧められても、現在は業務中だ。一緒にご馳走になる訳にはいかない。
「私は篠宮と申します。宜しくお願い致します。私は業務中ですので結構で御座います」
丁寧にお断りしたのに、「武井も業務ですけど一緒にお茶するわよ」と言って一条様は同じ物を三人分注文した。紅茶が先に届くと一条様は私に自分が何者かを話し始めた。
「今度、私が社長に就任するのよ。就任してからは外資系ホテルとも手を組もうかと思ってる。フランチャイズとして外資系ホテルを増やしていこうと思っているのよ。その為には優秀な人材が必要なの」
ティーカップを持つ指が美しい。口に運ぶ姿も洗練されている、気品溢れる女性。英語の時は急ぎ足の様な会話だったけれど、私には日本語でゆっくりと話をしてくれている。これが本来の一条様の姿なのかもしれない。
「一颯にも拓斗にも前々から話しているのだけれど良い返事が貰えないの。あの二人をもっと大きな舞台に連れて行ってあげたいのに気乗りしないみたいね」
今まで誤解をしていたが笑うと目尻が下がって優しく見える。私が思うよりも一条様は接しやすいのかもしれない。
「女社長になる器だから男に舐められたら終わりなのよ。同等に生きていく為には泣き言なんて言えないわ。貴方も同じね。自分の芯を曲げない、信念の持ち主。今は男に頼らない時代よ、共に頑張りましょう」
「はい、頑張ります」
一条様は私の手を両手で包み、微笑んだ。
「私が貴方から挑発を受けたと言ったら、一颯も拓斗も笑ってたのよ。私にとっては珍しい人種だから話してみる価値はあるって……」
「……私は支配人や高見沢さんのように優秀ではありません。ただ、お客様と接するのは大好きなので仕事を続けているのです。聞いてお分かりかと思いますが英語もぎこちないですからね、出来る事は限られています」
「あら、自分をそんなに卑下してはいけないのよ。もっと自信を持たなくちゃいけないわ。まだ若いんだから!」
一条様はそんな仕事の話から、若き頃の恋の御相手などを話してくれた。あっという間に二時間位が過ぎてしまったが帰る様子はなかった。
ホテルから着信があったが一条様は私を帰そうとはしなかった。
「……一颯も心配症ね。貴方はスイートのバトラーのサブなんでしょ?だったら、あの子達に任せて、もっと色んな場所に行きましょうか!」
一条様は立ち上がりカードで支払いを済ませて颯爽と立ち去る。車に乗り込み、「スコーンの味はイマイチだったけれど、癒しの空間だったわよ」と感想を述べた。確かにケーキandスコーンセットは日替わりで内容が代わるのだが今日の抹茶スコーンはイマイチだった。
その後は一条グループのホテルを車から拝見したり一颯さんと高見沢さんにお土産のケーキを購入したりした。気付けば制服のままで公共の場をウロウロしていた。今更、気にしても遅いけれども……。
「一条様、そろそろ篠宮を返して頂いても宜しいですか?」
「勿論、お返しするわ。今日は有難う、篠宮さん」
「こちらこそ有難う御座いました」
ホテル付近になった時にメールを入れておいたので、私達を乗せた車が到着するのを見計らい、一颯さんと高見沢さんがロータリーで待機していた。一条様が降りる際には一颯さんが左手を取り、エスコートしていた。まるで映画みたいなワンシーン。一颯さんの立ち振る舞いに見惚れていると、その事に気付いた一条様が優しく微笑んだ。
「……一颯、ルームサービスを取りやめてフレンチの席を予約して下さる?」
「かしこまりました。時間は追って連絡致します」
一条様はルームサービスをキャンセルし、エグゼクティブフロア専用のフレンチのお店を予約した。何故、心変わりをしたのだろう?
「それから食事の間にシャンパンの用意とバスタブの用意が終わったら、今日は用事はないから一颯は解放するわ。明日の朝、……そうね、10時になったら篠宮さんに荷造りをお願いしたいわ」
「……えぇ、一条様の指示ならば喜んで承ります」
一条様はバトラーとしての一颯さんを解任し、翌日は私がお伺いする事になった。ロイヤルスイートルームはチェックアウトが最大12時まで延長出来る。
一条様を客室にお送りし、別れ際に呼ばれたので近寄ると「貴方、一颯が好きなのね。見ていればすぐ分かるわよ。……良いクリスマスを!」と耳元で英語で囁かれた。見抜かれていた私はとても恥ずかしく顔が火照った。
仕事も一段落を迎えて帰ろうとした時、
一颯さんからスマホアプリにメッセージが届いていた。今から帰るから少しだけでも会いたい、って。一颯さんのマンションの近くのコンビニまで歩いて待ち合わせ。
コンビニにはクリスマスの売れ残りのケーキが少しだけ残っていたので、飲みきりワインと甘めなカクテルと共に購入した。その他にもおつまみとか色々購入した。
「お疲れ様です!」
「……随分と買い込んだな」
沢山詰まった買い物袋を見るなり、笑われた。さりげなく買い物袋をヒョイッと持ち上げられ、軽くなった右手には一颯さんの左手が繋がれた。
以前、一人で探索に出掛けた時に偶然にも見つけて私にとっても癒しのカフェである。軽食もスイーツもドリンクメニューも充実していて一条様のお口に合えば良いのだけれども……。
「私はダージリンとスコーンandケーキセットにするわ。貴方も好きな物を注文なさい。遠慮は皆無よ」
「一条様がこうおしゃってますから篠宮様もどうぞ。申し遅れましたがボディガードをしております、武井と申します。以後、お見知りおきを…」
やっぱりボディガードだったのか。武井さんに勧められても、現在は業務中だ。一緒にご馳走になる訳にはいかない。
「私は篠宮と申します。宜しくお願い致します。私は業務中ですので結構で御座います」
丁寧にお断りしたのに、「武井も業務ですけど一緒にお茶するわよ」と言って一条様は同じ物を三人分注文した。紅茶が先に届くと一条様は私に自分が何者かを話し始めた。
「今度、私が社長に就任するのよ。就任してからは外資系ホテルとも手を組もうかと思ってる。フランチャイズとして外資系ホテルを増やしていこうと思っているのよ。その為には優秀な人材が必要なの」
ティーカップを持つ指が美しい。口に運ぶ姿も洗練されている、気品溢れる女性。英語の時は急ぎ足の様な会話だったけれど、私には日本語でゆっくりと話をしてくれている。これが本来の一条様の姿なのかもしれない。
「一颯にも拓斗にも前々から話しているのだけれど良い返事が貰えないの。あの二人をもっと大きな舞台に連れて行ってあげたいのに気乗りしないみたいね」
今まで誤解をしていたが笑うと目尻が下がって優しく見える。私が思うよりも一条様は接しやすいのかもしれない。
「女社長になる器だから男に舐められたら終わりなのよ。同等に生きていく為には泣き言なんて言えないわ。貴方も同じね。自分の芯を曲げない、信念の持ち主。今は男に頼らない時代よ、共に頑張りましょう」
「はい、頑張ります」
一条様は私の手を両手で包み、微笑んだ。
「私が貴方から挑発を受けたと言ったら、一颯も拓斗も笑ってたのよ。私にとっては珍しい人種だから話してみる価値はあるって……」
「……私は支配人や高見沢さんのように優秀ではありません。ただ、お客様と接するのは大好きなので仕事を続けているのです。聞いてお分かりかと思いますが英語もぎこちないですからね、出来る事は限られています」
「あら、自分をそんなに卑下してはいけないのよ。もっと自信を持たなくちゃいけないわ。まだ若いんだから!」
一条様はそんな仕事の話から、若き頃の恋の御相手などを話してくれた。あっという間に二時間位が過ぎてしまったが帰る様子はなかった。
ホテルから着信があったが一条様は私を帰そうとはしなかった。
「……一颯も心配症ね。貴方はスイートのバトラーのサブなんでしょ?だったら、あの子達に任せて、もっと色んな場所に行きましょうか!」
一条様は立ち上がりカードで支払いを済ませて颯爽と立ち去る。車に乗り込み、「スコーンの味はイマイチだったけれど、癒しの空間だったわよ」と感想を述べた。確かにケーキandスコーンセットは日替わりで内容が代わるのだが今日の抹茶スコーンはイマイチだった。
その後は一条グループのホテルを車から拝見したり一颯さんと高見沢さんにお土産のケーキを購入したりした。気付けば制服のままで公共の場をウロウロしていた。今更、気にしても遅いけれども……。
「一条様、そろそろ篠宮を返して頂いても宜しいですか?」
「勿論、お返しするわ。今日は有難う、篠宮さん」
「こちらこそ有難う御座いました」
ホテル付近になった時にメールを入れておいたので、私達を乗せた車が到着するのを見計らい、一颯さんと高見沢さんがロータリーで待機していた。一条様が降りる際には一颯さんが左手を取り、エスコートしていた。まるで映画みたいなワンシーン。一颯さんの立ち振る舞いに見惚れていると、その事に気付いた一条様が優しく微笑んだ。
「……一颯、ルームサービスを取りやめてフレンチの席を予約して下さる?」
「かしこまりました。時間は追って連絡致します」
一条様はルームサービスをキャンセルし、エグゼクティブフロア専用のフレンチのお店を予約した。何故、心変わりをしたのだろう?
「それから食事の間にシャンパンの用意とバスタブの用意が終わったら、今日は用事はないから一颯は解放するわ。明日の朝、……そうね、10時になったら篠宮さんに荷造りをお願いしたいわ」
「……えぇ、一条様の指示ならば喜んで承ります」
一条様はバトラーとしての一颯さんを解任し、翌日は私がお伺いする事になった。ロイヤルスイートルームはチェックアウトが最大12時まで延長出来る。
一条様を客室にお送りし、別れ際に呼ばれたので近寄ると「貴方、一颯が好きなのね。見ていればすぐ分かるわよ。……良いクリスマスを!」と耳元で英語で囁かれた。見抜かれていた私はとても恥ずかしく顔が火照った。
仕事も一段落を迎えて帰ろうとした時、
一颯さんからスマホアプリにメッセージが届いていた。今から帰るから少しだけでも会いたい、って。一颯さんのマンションの近くのコンビニまで歩いて待ち合わせ。
コンビニにはクリスマスの売れ残りのケーキが少しだけ残っていたので、飲みきりワインと甘めなカクテルと共に購入した。その他にもおつまみとか色々購入した。
「お疲れ様です!」
「……随分と買い込んだな」
沢山詰まった買い物袋を見るなり、笑われた。さりげなく買い物袋をヒョイッと持ち上げられ、軽くなった右手には一颯さんの左手が繋がれた。
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