本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
支配人の大切なお客様です。【2】
「はい、出来ました。冷凍パスタも侮れないですよ」
テーブルにフォークとスプーン、温めた冷凍パスタを並べる。泣かないように我慢していたら声が震えた。
「………恵里奈」
気付かれた。まずいと思ってクルリと後ろを向いて部屋を出ようとしたのだが先に捕まってしまった。
「本当にごめん。さっきも言ったがクリスマスは過ごせないかもしれないけど、その前後に一緒に過ごせるように必ず調整するから」
座り込んでいた一颯さんが咄嗟に立ち上がり背後から抱き締められる。一颯さんの温もりが暖かい。穂坂様の件があってからは一颯さんは軽いスキンシップはしてくるけれどキスやそれ以上はしてこない。もう、一颯さんの事は怖くないのに……。
「絶対ですよ?私、年が明けても叶うまでずぅーと待ってますよ」
「なるべく年が明けない内に叶えるようにするよ」
我儘を言わないつもりがクリスマス気分も相成って言ってしまった。困らせるのは分かってる。無理させてしまうのも分かってる。けれども一緒に居たいの───……
部屋を出た後、お客様のチェックイン予定時間迄の時間があった為に私はエグゼクティブフロアの予約をチェックする。
一颯さんの大切なお客様が気になる。
エグゼクティブフロアではないのだろうか?クリスマスイブと当日と言っていたから二泊するのかな?
PCをカチャカチャと音を立てて弄り、見つけたお名前。支配人紹介とある。きっと、この方に違いない!
一条  園美様。
年齢48歳、住所は東京都。
……大切なお客様は分かるけれど帰れない程に夜が遅くなるのは何故?一緒に出かけるとか?気になりだしたら止まらない!そうだ、高見沢さんなら何か知ってるかもしれない。
高見沢さんに聞いてみようと思い、エグゼクティブフロアまで探しに行ったら丁度良く発見した。
「何?何か用?」
事前に頼まれていた事柄のチェックをしていた高見沢さんを見つけるなり声をかけたら、邪魔者扱いするみたいに冷たくあしらわれたが気にしない事にした。
「用って言うか、聞きたい事がありまして…。クリスマスに連泊でお泊まりの一条様って…」
「一条様は一颯君の古くからのお客様だよ」
「高見沢さんも知ってる方ですか?」
「本店に居た時からのお客様だから知ってる。あの人、女性従業員にはだいたい冷たいから気をつけなよ。特にあんたみたいなトロトロしてる人は嫌われるかもね~?」
高見沢さんに意地悪を言われた挙句にチェックシートが挟んであるバインダーで頭をポンポンと叩かれた。
「……そ、そうなんですね。気をつけます」
一颯さんの大切なお客様なのに嫌われたら困るので、私も気を付けて接客しなくては……!
「気を付けなくても大丈夫だよ。バトラーとしてご指名なのは一颯君だから。サブが俺、ね」
「いぶ…、いや、支配人が?」
「そうだよ。本店からずっとそうなんだけど…一条様って基本的に一颯君を指名出来ない時は泊まりに来ない」
「そんな事がOKなんですか?」
「OKも何も、お客様の御要望だから仕方ないんじゃないの?一颯君が支配人だろうが、何だろうが、一条様は関係なく指名してくるから」
そんな我儘が曲がり通るなんて一条様はどんな方なのだろう?話を聞いていると性格もキツそうな予感……。高見沢さんも性格は難アリだけれど顔は綺麗だからなぁ。一条様は美男子好きなのか!一颯さんも高見沢さんも傍に置いときたいだなんて、ただの美男子好きの我儘じゃないの?
「……何をそんなに難しい顔してるの?そんなに気になる?一颯君と一条様の事…」
「はい、気になります!」
「何で?」
「何でって言われましても…」
高見沢さんは私達の関係は知らないから、深追いはしてはいけなかったのにしてしまった。追求されても答える事は出来ない。
「一颯君に興味を持つのは良いけど、後々、色恋沙汰で俺に迷惑かけるのはやめてよ!バトラーの人数が減ると俺に負担がかかるし、振られて辞めるとかナシだからね!あんたみたいのでも少しは役に立つんだから!」
「………はい、すみません」
貶されているのか、褒められているのか。とにかく凄い剣幕で責めるように言われて圧倒されてしまった。確かに人手不足だから一人でもかけたら大変なのは分かるけれど、こんな私でも高見沢さんに本の僅かでも頼りにされているのは嬉しかった。
「クリスマスだからロイヤルスイートも全部埋まってて篠宮さんも帰りが遅くなると思うよ。前回みたいな事にはならないようにするから」
「はい、頑張ります!」
「あんたは本当に返事だけはいーよね、呆れるぐらい…」
高見沢さんは苦笑いをして私を見ていた。
ロイヤルスイートルームも全室埋まっているとしたら待機時間には一颯さんと一緒に居られる時間があるかもしれない。そう思ったらクリスマスが楽しみになった。それなのに人生は上手く行かないものだった───……
テーブルにフォークとスプーン、温めた冷凍パスタを並べる。泣かないように我慢していたら声が震えた。
「………恵里奈」
気付かれた。まずいと思ってクルリと後ろを向いて部屋を出ようとしたのだが先に捕まってしまった。
「本当にごめん。さっきも言ったがクリスマスは過ごせないかもしれないけど、その前後に一緒に過ごせるように必ず調整するから」
座り込んでいた一颯さんが咄嗟に立ち上がり背後から抱き締められる。一颯さんの温もりが暖かい。穂坂様の件があってからは一颯さんは軽いスキンシップはしてくるけれどキスやそれ以上はしてこない。もう、一颯さんの事は怖くないのに……。
「絶対ですよ?私、年が明けても叶うまでずぅーと待ってますよ」
「なるべく年が明けない内に叶えるようにするよ」
我儘を言わないつもりがクリスマス気分も相成って言ってしまった。困らせるのは分かってる。無理させてしまうのも分かってる。けれども一緒に居たいの───……
部屋を出た後、お客様のチェックイン予定時間迄の時間があった為に私はエグゼクティブフロアの予約をチェックする。
一颯さんの大切なお客様が気になる。
エグゼクティブフロアではないのだろうか?クリスマスイブと当日と言っていたから二泊するのかな?
PCをカチャカチャと音を立てて弄り、見つけたお名前。支配人紹介とある。きっと、この方に違いない!
一条  園美様。
年齢48歳、住所は東京都。
……大切なお客様は分かるけれど帰れない程に夜が遅くなるのは何故?一緒に出かけるとか?気になりだしたら止まらない!そうだ、高見沢さんなら何か知ってるかもしれない。
高見沢さんに聞いてみようと思い、エグゼクティブフロアまで探しに行ったら丁度良く発見した。
「何?何か用?」
事前に頼まれていた事柄のチェックをしていた高見沢さんを見つけるなり声をかけたら、邪魔者扱いするみたいに冷たくあしらわれたが気にしない事にした。
「用って言うか、聞きたい事がありまして…。クリスマスに連泊でお泊まりの一条様って…」
「一条様は一颯君の古くからのお客様だよ」
「高見沢さんも知ってる方ですか?」
「本店に居た時からのお客様だから知ってる。あの人、女性従業員にはだいたい冷たいから気をつけなよ。特にあんたみたいなトロトロしてる人は嫌われるかもね~?」
高見沢さんに意地悪を言われた挙句にチェックシートが挟んであるバインダーで頭をポンポンと叩かれた。
「……そ、そうなんですね。気をつけます」
一颯さんの大切なお客様なのに嫌われたら困るので、私も気を付けて接客しなくては……!
「気を付けなくても大丈夫だよ。バトラーとしてご指名なのは一颯君だから。サブが俺、ね」
「いぶ…、いや、支配人が?」
「そうだよ。本店からずっとそうなんだけど…一条様って基本的に一颯君を指名出来ない時は泊まりに来ない」
「そんな事がOKなんですか?」
「OKも何も、お客様の御要望だから仕方ないんじゃないの?一颯君が支配人だろうが、何だろうが、一条様は関係なく指名してくるから」
そんな我儘が曲がり通るなんて一条様はどんな方なのだろう?話を聞いていると性格もキツそうな予感……。高見沢さんも性格は難アリだけれど顔は綺麗だからなぁ。一条様は美男子好きなのか!一颯さんも高見沢さんも傍に置いときたいだなんて、ただの美男子好きの我儘じゃないの?
「……何をそんなに難しい顔してるの?そんなに気になる?一颯君と一条様の事…」
「はい、気になります!」
「何で?」
「何でって言われましても…」
高見沢さんは私達の関係は知らないから、深追いはしてはいけなかったのにしてしまった。追求されても答える事は出来ない。
「一颯君に興味を持つのは良いけど、後々、色恋沙汰で俺に迷惑かけるのはやめてよ!バトラーの人数が減ると俺に負担がかかるし、振られて辞めるとかナシだからね!あんたみたいのでも少しは役に立つんだから!」
「………はい、すみません」
貶されているのか、褒められているのか。とにかく凄い剣幕で責めるように言われて圧倒されてしまった。確かに人手不足だから一人でもかけたら大変なのは分かるけれど、こんな私でも高見沢さんに本の僅かでも頼りにされているのは嬉しかった。
「クリスマスだからロイヤルスイートも全部埋まってて篠宮さんも帰りが遅くなると思うよ。前回みたいな事にはならないようにするから」
「はい、頑張ります!」
「あんたは本当に返事だけはいーよね、呆れるぐらい…」
高見沢さんは苦笑いをして私を見ていた。
ロイヤルスイートルームも全室埋まっているとしたら待機時間には一颯さんと一緒に居られる時間があるかもしれない。そう思ったらクリスマスが楽しみになった。それなのに人生は上手く行かないものだった───……
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