本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
支配人は公休日でも仕事目線です。【5】
「お待たせ致しました。前菜です」
私のシャンパンと一颯さんが注文したノンアルコールのカクテルで乾杯した後、目の前に置かれたのは見た目が可愛らしい前菜。
「いただきます。…お箸使っても良いのかな?」
「箸で食べられるフレンチだから遠慮なく使って。俺も箸にするよ。創作フレンチ、一度食べてみたかったんだ」
「創作フレンチなんですね。私も初めてです。一颯さんの初めてを御一緒出来て嬉しいです」
支配人なので経験豊富とも思われる一颯さんの初めてを共に出来る事が心から嬉しくて、顔から嬉しさが滲み出て笑顔がこぼれた。
「……いいから、早く食べなさい」
一颯さんは顔が赤くなり、私から目線を外す。何か変な事を言ったかな?
お箸で食べるフレンチは野菜、お肉、お魚などの国産品がふんだんに使われている。野菜との絶妙なバランスで仕上げられているフレンチは、大人に成りきれていない私にとっては贅沢すぎる程だった。
「お昼に引き続き、とっても美味しかったです。ご馳走様でした」
デザートまで頂き、お腹いっぱい。ふわふわして、ほろ酔い気分が気持ち良い。……が先程、階段を踏み外しそうになり、一颯さんに手を繋いで貰って駐車場まで移動中。
「今後、創作フレンチも取り入れて行けたら良いなと思って、視察も兼ねて行ってみたんだけど…恵里奈が喜んでくれたから連れて来たかいがあったな」
「一颯さんはお休みの日も仕事目線ですね。私はずぅーっと前から気付いてましたよ!レストランも視察を兼ねてですよね。
私は一颯さんを見てるから分かります」
「御明答。俺も恵里奈を見てるよ。ほら、また転びそうになるから…!」
何にもない場所で足がもたつき転びそうになった為、一颯さんに助けられた。私は繋いでいた手を離して一颯さんの腕に絡みついた。
一颯さんは隣で歩く私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれている。駐車場まで後わずかの距離。この幸せな時間が終わって欲しくない。時間が止まってしまえば良いのに……。
「こんなに幸せでどうにかなってしまいそうです」
「恵里奈が幸せになれるなら毎週でも外に連れ出してあげたいって言いたいところだけど…」
駐車場に着いた時に車の前で伝えた言葉に対して、一颯さんは言葉を濁す。
「バトラーの仕事が始まったら今よりも忙しくなると思うから…そうもいかなくなるな」と言われて、車に乗せられた私。
サービス業だから、お客様の予約状況次第で公休が変更になる事もある。連休だってなかなか取れない。一颯さんとも同じ公休日とは限らないし、上がり時間もまちまちだから仕事終わりには会えなくなるかもしれない。
やっと一緒に過ごせたのに、また一颯さんと過ごす時間はお預けになりそうだ。
「……明日は何時出勤ですか?」
「8時位には行くつもりだけど…」
「明日は帰って来たばかりだから10時に出勤していいよって星野さんに言われました。今日も泊まっても良いですか?」
「……駄目だ。もう遅い時間だし、帰って寝なさい!」
頑なに拒否をされた。明日は星野さんの仕事のお手伝いから始まるので10時出勤なのに、一颯さんは保護者みたいに言い付けた。
これから先、忙しくて中々会えないなら、尚更、今を大切にしたいのに……。
一颯さんも仕事が忙しいのだから、これ以上は我儘は言わないって決めているけれど、もっと沢山独占したい。一緒に眠りについて一緒に起きたい。心の中ではそう思っていても言葉には出さない。我慢しなきゃ、と思いながら、外の景色を眺めて居たら眠ってしまった。
「……恵里奈、起きて!」
一颯さんに起こされた時は寮周辺に着いていた。目が覚めた時にはほろ酔い気分も覚めてしまった。
夢のような時間はあっという間に過ぎてしまうもので我に返った。一颯さんが私の顔を覗き込み、体制を変えた時に抱き着いた。
「おやすみなさい。今日は本当に楽しかったです。有難う御座いました」と言って、一颯さんの唇に自分の唇を重ねた。
一颯さんの両頬に私の両手を触れての軽いキスだったが、次第に形勢逆転になり深いキスへと変わった。
「……おやすみ。可愛い事をしてくれて連れて帰りたいのは山々だが、名残惜しくなるから…」
「………連れて帰って下さい。今日だけ、もう我儘言わないから…!」
別れ際、次第に目に涙が溜まってしまい、今にも溢れてしまいそうだった。私はこんなに涙脆かったかな?我儘を言わないと決めていたのに寂しくて堪らなくて言葉が零れてしまった。
三か月間、一人で見習として本店に修行に行ったけれども…楽しくもあり、心寂しい日もあった。支店に戻ってから褒められたくて一生懸命に仕事内容を習得しようとしてた。邪な考えを持ちつつ、思い出すのは常に一颯さんの事だった。
「……ったく、俺の決心が鈍ってしまっただろ」
「……すみません」
一颯さんは大きな溜息を吐き再び車を月額駐車場まで走らせた。一颯さんのマンションから月額駐車場までは少しだけ距離があり、再び一緒に歩き出す。
「酔いは覚めた?」
「……はい、だいぶ。頭がふわふわしなくなりました」
マンションに着くとペットボトルの水を差し出された。その後はシャワーを浴び、スマホからアラームをかけて一緒のベッドにゴロンと横になる。
ベッドに入るとおやすみのキスをしてから、私の身体を抱き締めて「おやすみ恵里奈、今日は一日有難う」と言って本の僅かな時間で一颯さんは寝息を立てていた。
私も一颯さんを抱き締め返して、そのまま眠りについた───……
私のシャンパンと一颯さんが注文したノンアルコールのカクテルで乾杯した後、目の前に置かれたのは見た目が可愛らしい前菜。
「いただきます。…お箸使っても良いのかな?」
「箸で食べられるフレンチだから遠慮なく使って。俺も箸にするよ。創作フレンチ、一度食べてみたかったんだ」
「創作フレンチなんですね。私も初めてです。一颯さんの初めてを御一緒出来て嬉しいです」
支配人なので経験豊富とも思われる一颯さんの初めてを共に出来る事が心から嬉しくて、顔から嬉しさが滲み出て笑顔がこぼれた。
「……いいから、早く食べなさい」
一颯さんは顔が赤くなり、私から目線を外す。何か変な事を言ったかな?
お箸で食べるフレンチは野菜、お肉、お魚などの国産品がふんだんに使われている。野菜との絶妙なバランスで仕上げられているフレンチは、大人に成りきれていない私にとっては贅沢すぎる程だった。
「お昼に引き続き、とっても美味しかったです。ご馳走様でした」
デザートまで頂き、お腹いっぱい。ふわふわして、ほろ酔い気分が気持ち良い。……が先程、階段を踏み外しそうになり、一颯さんに手を繋いで貰って駐車場まで移動中。
「今後、創作フレンチも取り入れて行けたら良いなと思って、視察も兼ねて行ってみたんだけど…恵里奈が喜んでくれたから連れて来たかいがあったな」
「一颯さんはお休みの日も仕事目線ですね。私はずぅーっと前から気付いてましたよ!レストランも視察を兼ねてですよね。
私は一颯さんを見てるから分かります」
「御明答。俺も恵里奈を見てるよ。ほら、また転びそうになるから…!」
何にもない場所で足がもたつき転びそうになった為、一颯さんに助けられた。私は繋いでいた手を離して一颯さんの腕に絡みついた。
一颯さんは隣で歩く私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれている。駐車場まで後わずかの距離。この幸せな時間が終わって欲しくない。時間が止まってしまえば良いのに……。
「こんなに幸せでどうにかなってしまいそうです」
「恵里奈が幸せになれるなら毎週でも外に連れ出してあげたいって言いたいところだけど…」
駐車場に着いた時に車の前で伝えた言葉に対して、一颯さんは言葉を濁す。
「バトラーの仕事が始まったら今よりも忙しくなると思うから…そうもいかなくなるな」と言われて、車に乗せられた私。
サービス業だから、お客様の予約状況次第で公休が変更になる事もある。連休だってなかなか取れない。一颯さんとも同じ公休日とは限らないし、上がり時間もまちまちだから仕事終わりには会えなくなるかもしれない。
やっと一緒に過ごせたのに、また一颯さんと過ごす時間はお預けになりそうだ。
「……明日は何時出勤ですか?」
「8時位には行くつもりだけど…」
「明日は帰って来たばかりだから10時に出勤していいよって星野さんに言われました。今日も泊まっても良いですか?」
「……駄目だ。もう遅い時間だし、帰って寝なさい!」
頑なに拒否をされた。明日は星野さんの仕事のお手伝いから始まるので10時出勤なのに、一颯さんは保護者みたいに言い付けた。
これから先、忙しくて中々会えないなら、尚更、今を大切にしたいのに……。
一颯さんも仕事が忙しいのだから、これ以上は我儘は言わないって決めているけれど、もっと沢山独占したい。一緒に眠りについて一緒に起きたい。心の中ではそう思っていても言葉には出さない。我慢しなきゃ、と思いながら、外の景色を眺めて居たら眠ってしまった。
「……恵里奈、起きて!」
一颯さんに起こされた時は寮周辺に着いていた。目が覚めた時にはほろ酔い気分も覚めてしまった。
夢のような時間はあっという間に過ぎてしまうもので我に返った。一颯さんが私の顔を覗き込み、体制を変えた時に抱き着いた。
「おやすみなさい。今日は本当に楽しかったです。有難う御座いました」と言って、一颯さんの唇に自分の唇を重ねた。
一颯さんの両頬に私の両手を触れての軽いキスだったが、次第に形勢逆転になり深いキスへと変わった。
「……おやすみ。可愛い事をしてくれて連れて帰りたいのは山々だが、名残惜しくなるから…」
「………連れて帰って下さい。今日だけ、もう我儘言わないから…!」
別れ際、次第に目に涙が溜まってしまい、今にも溢れてしまいそうだった。私はこんなに涙脆かったかな?我儘を言わないと決めていたのに寂しくて堪らなくて言葉が零れてしまった。
三か月間、一人で見習として本店に修行に行ったけれども…楽しくもあり、心寂しい日もあった。支店に戻ってから褒められたくて一生懸命に仕事内容を習得しようとしてた。邪な考えを持ちつつ、思い出すのは常に一颯さんの事だった。
「……ったく、俺の決心が鈍ってしまっただろ」
「……すみません」
一颯さんは大きな溜息を吐き再び車を月額駐車場まで走らせた。一颯さんのマンションから月額駐車場までは少しだけ距離があり、再び一緒に歩き出す。
「酔いは覚めた?」
「……はい、だいぶ。頭がふわふわしなくなりました」
マンションに着くとペットボトルの水を差し出された。その後はシャワーを浴び、スマホからアラームをかけて一緒のベッドにゴロンと横になる。
ベッドに入るとおやすみのキスをしてから、私の身体を抱き締めて「おやすみ恵里奈、今日は一日有難う」と言って本の僅かな時間で一颯さんは寝息を立てていた。
私も一颯さんを抱き締め返して、そのまま眠りについた───……
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