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本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~

桜井 響華

公休日は予想外な一日!?【1】

疲れているはずなのに深い眠りにつけず、何度も目を覚ましては時間を確認する。

やっと眠りについた時には、朝8時を過ぎていてカーテンの隙間から、陽射しが入り込んでいた。

寝不足気味で火照りのある身体、更には疲れが抜けずに気だるく、鉛の様に重だるい脚でベッドから降りる。

カーテンを勢い良く開けて、心地良い柔らかな陽射しを全身に受け止め、まだ寝ていたい気持ちをリセットする。

急遽、支配人とお出かけする事になり、楽しみな気持ちもあったが緊張感も重なり、何度も目を覚ましてしまったのである。

今日は暖かい一日になるらしいので、フリルのついたオフホワイトのブラウスにスカート、春らしく淡いグリーンのカーディガンという清楚系なコーディネートに決めた。

いつもなら楽さを選んで、ジーンズにシャツとかチュニックとかの組み合わせにしちゃうけれど…支配人とお出かけするんだから、少しでも綺麗に見られたい。

…そう思う事態が恋の始まりなんだろうか?

本当は明日、月曜日が公休だったが、支配人が今日、日曜日が休みになったので、同様に変更された。

決定された月間シフトの公休だが、明日は希望休ではなかった為に支配人の一存で変更されてしまったのだ。幸い、友達との約束もなく何にも予定はなかったのだが…。

社員寮を出て、十時に指定された待ち合わせ場所まで行くとカジュアルな服装に身を包んだ支配人が立っていた。

「おはようございます!」

ジャケットに黒いインナー、ベージュのチノパン、前髪を下ろしているので雰囲気も違うが、すぐに支配人だと気付いた。

職場でのスリムなスーツに身を包んだ姿とは違うギャップに、ドキリと跳ね上がる心音。スーツ姿もカッコイイと思うけれど、これはコレでキュンキュンする要素が満載。

「……おはよう。ちょっと予想外な私服に驚いた。もっと子供っぽい感じだと思っていたから…」

支配人に声をかけるとすぐに気付き、私の姿を見て驚いた様だった。

支配人の中での私のイメージは、どんなに幼稚さがあるのだろう?…と考えると気持ちが沈んでしまう。

ショックを隠せずに下を向いていると支配人が申し訳なさそうに私に言い寄る。

「公休を変更して悪かったな。明日も休むか?」

「いえ、特に用事はなかったですから大丈夫です。明日はきちんと行きますよ」

「…分かった」

凹み気味な心を隠して、愛想笑いをする。

支配人は愛想笑いに気付いたのか、それとも私とは特に話題もないからか、少しの間、無言で歩いた。

私から話をかけても良いのかな?折角のお誘いなんだし、出来る事ならば沢山話をしたい。

緊張しながらも話かける決心をして口を開くと…

「し、支配人っ、」
「篠宮、」

お互いに話をかけようとしていたらしく、言葉が混じり合い、顔を見合わせる。

「何だよ、篠宮」

自分からも話をかけてきたはずなのに、私だけが話をかけてきた流れにしようとしている。

クスクスと笑いながら流し目で見られたら、まともに顔を合わせる事も出来ずに目線を反らす。

不意打ちで毒牙(色気)を振り撒くのは、心臓に悪いからやめて欲しい。

「しーのーみーや?…篠宮さん?」

「……っ」

「……篠宮?」

待ち合わせ場所は人気の少ない通りで、今は私達の周りには誰も歩いてはいない。

支配人の事が目線に入らないように下を向いて歩いていたが、ピタリと足が止まったので私も立ち止まる。

「やっぱり帰るか?」

少しだけ悲しげな表情をした支配人が小さく呟いた言葉が、私の胸の奥に突き刺さる。強引に誘ったくせに、今更…。

「嫌ですっ、帰りませんっ!」

ブンブンと首を横に振り、抵抗をして拒否をして、キッと目尻に力を入れて睨み付ける。

「下を向いて歩く程に嫌がってるなら、無理強いはしない。…嫌だよな、休日まで上司と一緒に居るなんて…」

「……ち、違うんですっ。嫌、だか、ら…じゃないんです…」

私の態度が支配人を傷付けてしまっていた。職場での傲慢な態度ではなく、か細く消えてしまいそうな声で私に話しかける。

私も語尾に近付くにつれ、小さくなりながらも否定をする。

前を向けなかったのは…、顔を見て話せなかったのは意識をしてしまい、恥ずかしかったから…。

「…むしろ、逆なんです」

「逆?」

「…支配人の毒牙にやられて、顔を見れないんです。と、とにかくっ、上司と部下の関係は保ちたいので、あんまり毒牙を振り撒かないで下さいっ」

必死に声を絞り出し、思いの丈を伝えた。

恋なのか、恋じゃないのか、今はまだ分からないけれど…、一緒に居れば居る程に上司と部下の関係は崩れて行くだろう。

優しくされればされる程、支配人を知れば知る程、深みに嵌るのは自分だけだと思う。

支配人程の聡明で周りからの信頼も厚く、麗しさを併せ持つ人が、私なんかを好きになるはずがない。

───だから、その前に、好きになる前に気持ちを抑えるしかないんだ。

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