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本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~

桜井 響華

レストランの研修期間です。【2】

食事休憩が終わると結婚披露宴の会場セッティングのヘルプに行った。週末に盛大な結婚披露宴が行われるらしく、男性が一人でテーブルにクロスをかけていた。

「お疲れ様です。篠宮さんに中里さん、今日は一日よろしくお願いします」

「よろしくお願い致します」と私達は声を揃えて挨拶をすると、「そんなにかしこまらなくていいよ」と言ってくれた。

この男性は、披露宴や宴会などを担当しているレストランの宴会マネージャーの星野  蒼太ほしの  そうたさん。

星野さんはニコニコ笑顔の女顔の男性で、見るからに優しそうだし、アイドルに居そうな感じがする。

「真壁とは同期なんだ。だいぶ、差がついちゃったけどね!もう十年来の付き合いになるかなぁ。鬼軍曹とか冷酷支配人とかってあだ名だけど、新人の時は一緒に色々とやらかしたよね…」

私達に向けて支配人の昔話をしようとした時、すぐ近くから低い声で掻き消す様に放たれた言葉。

「下らない話はするな、星野。今日は本店にて会議があるから、星野と行動を共にしてくれ。夕方には戻る」

その言葉に「はい」と私達が返事をした時、星野さんは小さな声で「怖いーっ」と言って笑ってふざけていたので、支配人が去り際にギロりと睨みを効かせた。

支配人が去った後に私達はクロスをかけ、椅子に白いカバーを被せる。

三百脚を超える椅子のカバーかけには相当な労力を使い、足腰に疲労を感じた。

「はぁっ、疲れるんだよね、この作業は!ちょっと一息つこうね」

カバーのかけてない予備の椅子に座り、休憩タイム。

星野さんが自動販売機から買って来てくれた、ストロー付きの紙パックのカフェオレを三人で飲みながら、疲労を癒す。

「元々、俺達は本店に居たんだけどね、真壁が支配人になるって聞いて興味深くて着いて来ちゃったんだ。真壁の仕事ぶりは上役にも気に入られて、新規オープンのホテルの支配人を任せられる程だった…」

支配人が居ないからか、ここぞとばかりに話を弾ませる星野さんは楽しげな表情だった。

「さっき言ってた新人時代の話、聞きたいでしょ?」と言い、ニッコリと微笑むと返事を聞く前に話し出していた。

お互いに大卒の新入社員で、最初の一年は研修期間だから各部署を回ったらしい。

一年後の配属先は支配人はフロント、星野さんはレストランサービスに決定された。

支配人のルックスは女性の目線を釘付けにし、特におば様達のファンが多く、顧客を獲得した上に仕事熱心の真面目君だから、上役にも気に入られ若くして支配人を任されたらしい。

「ありえない位のスピード出世だな、とは思うけど上役も見る目あるよなって思ったよ」と話の終わりに星野さんは付け加えた。

星野さんの話に妙に納得がいく部分があった。

確かに支配人のルックスは女性の目を惹き、仕事熱心なところにも共感出来る。
顧客を獲得する為の入口が、自分のルックスだとは支配人は自覚してないだろうけれど…。

「アイツさ、最初は緊張してお客様にロクに挨拶出来なくて、フロントマネージャーに鏡の前で『いらっしゃいませ』の練習して来い!って言われて必死で練習してた。そしたら、いつの間にか女性を惑わす流し目と微笑みを習得してたんだよね!」

星野さんが面白おかしく話すので、私達は緊張感も忘れて吹き出してしまう。

支配人とは違い、気さくに話せる方で休憩後も楽しく仕事が出来た。

三百枚以上のナフキンを扇型に折り、皿を並べた上に広げた。

支配人が戻って来た頃に一段落がついて、定時時間が近付いている事に気付く。

「残りは明日やろうね」と星野さんから言われて、今日の業務は終了。

この後、星野さんは別な業務に取り掛かるらしく、掛かって来た電話を受けつつ、慌ただしく会場を後にした。

「明後日は披露宴のサービススタッフとして入って貰う」

星野さんが去った後、本店より戻って来た支配人が披露宴会場を見渡しながら、私達に向けて話す。

「披露宴のサービスかぁ。精一杯頑張ります!」

系列のリゾートホテルでも披露宴のサービススタッフのヘルプに入ったが、綺麗な花嫁さんの姿を見ては自分の事のようにワクワクドキドキしてしまう。

煌びやかな会場を見るだけでも、胸が高鳴る。自分もいつか、花嫁になる日が来るのだろうか?とサービスしながら想像してしまうんだ。

「篠宮、口元が緩んでるぞ!大丈夫か?そんなに披露宴サービスが嬉しいか?」

「…わぁ、だ、大丈夫ですっ。嬉しいです、花嫁さん見たいです」

支配人に指摘をされ、嬉しさが顔に出ていた事が恥ずかしくなり、慌てて口元を隠す。

「そうか。小学生が式に呼ばれたみたいに喜んでいるのは見て分かるが、粗相しない様に気をつけろよ」

「は、はい…」

クスクスと笑う支配人は、私を子供扱いするかのように頭をポンポンと軽く叩く。

頭に触れられた手の感触を確かめるように、頭に手を添えた私は思わず支配人を見上げてしまった。

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