異世界女将 温泉お宿においでませ♪

ひさら

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子供たちと市場に行く。
結構楽しみ!市場って初めてなんだ~♪
元の世界では、買い物はもっぱらショッピングモールかスーパーマーケットだった。
最寄駅には○○商店街なんてものもなかったし、旅行も朝市があるところには行った事がなかった。本当の本当にお初!
 
市場は夕方の買い物客で賑わっていた。
セラムが案内をしてくれるって。
冒険者になる前は使い走りをしていて市場には詳しいとか。

野菜で持ってない物はほしいなぁ。
果物もほしい。果物は買ってなかったからキャリー様の中にはないのだ。
お肉もある物だけじゃレパートリーが限られちゃうよな・・・。
頭の中で色々考えながら物色する。
 
「君たち、好きな果物はある?」
「あまり食べた事がないからわからないや」
「私もこの国の果物はよくわからないから、セラム、何が美味しいか教えて」
「え?いや、俺もあまり果物は食べた事ないからわからない」
「ん?果物ってあまり食べないものなの?」
「いや、そうでもないと思うけど、売ってるし。でも腹にたまらない物は買って食べようとは思わないっていうか・・・」
「あぁ、そうなんだ」
 
なんて話しながら歩いている。
初夏だし、さっぱり爽やかなものが食べたいなぁ。

あ!
 
「おじさん、これください!」
「あいよ! 銅貨五枚ね!」
 
立派なスイカみたいなのを発見!
こんなに立派なのに銅貨五枚って!めちゃくちゃ嬉しい!!
これくらい大きければみんなで余裕で食べられるだろうしね♪
 
「いきおいで買っちゃったけど、これけっこう重いわね。これじゃ他が買えないわ」
「あぁ、俺が持つよ。そのためについてきたんだし」
「えぇ!いいよいいよ!ケガ人に持たせられないよ!」
「このくらい平気だよ。少しくらい世話になってるお返しさせてよ」
 
心のこもった言葉に、そういう事ならお言葉に甘えようか・・・。
 
「ありがとう」
「いやいや、そりゃこっちのセリフだから」
 
笑顔でお礼を言えば、ちょっと照れたように返される。
 
「コハルさん!俺だって持てるからね!」
「おぉエラム♪頼りにしてるよ!」
 
エラムが男気を見せるのが微笑ましい。小さくても男なんだよね♪
そんな風にして、持てる分だけちょっとずつお買い物をする。
 
お肉がほしかったんだけど、鮮度がいまいちに見える・・・。
野菜も、キャリー様の中の二週間くらい前の物の方が新鮮そうだし。
やっぱこの陽気で冷蔵されてないからかな。朝市なら朝取れ野菜なんかがあるんだろうか?また今度来てみたい。
結局、手持ちにない野菜を何種類かと、マスカットみたいな果物を追加で買って終了した。
 
「今度は朝市に来てみようね♪」
「「うん!」」
 
立派なスイカは、セラムが家まで持ってくれたよ。
すまないねぇ、ありがと!

ついでだからと夕ご飯に誘う。
 
「ごめん!夕飯の下心ありました!」
 
ちゃっかり言ったのには、みんなして笑ってしまったよ。
 
 
 
夕ご飯は昨日に引き続きカレー!
本当にこの子たちの、気に入ったものを飽きるまで食べるというのは何とかならないもんだろか?
アラサーの小春さんにはカロリーオーバーだよ!飽きるしさ。
 
という事で、上の子たちはカレー。
お昼も食べている下の子たちと私は親子丼にした。
夕方までのお出かけで時間もなかったし、どんぶり物ってそういう時の強い味方だよね!
 
ちょっと焼き色のついた鶏肉と、半熟玉子の親子丼。出汁の匂いもめっちゃ食欲をそそるよ!
まぁカレーの匂いには負けるけど。

ナルセにどっちを食べるか聞いたら、かなり長い事悩んでいた。
親子丼を見た上の子たちが、お代わりに親子丼をリクエストしたのを聞いて、遠慮がちに自分もそれで、と言ったのは可愛らしい。
 
後から来たサイードも、カレーと親子丼を食べてたよ。
サイードさんや、大人の味覚を持っているであろうあーたまでその食べ合わせですか。
まぁいいけどね・・・。
 
湧水で冷やしておいたスイカも切る。
ささ、ナルセ。重たい思いをして君が持って来たんだ、お食べなさい。
 
甘さは私の知っている物と比べて弱いけど、さっぱりしてて美味しい。みんなもぺろりと平らげてたよ。
甘い物は別腹だもんね!
 
ナルセは、お腹いっぱい幸せいっぱいって顔で帰って行った。

気をつけてね!また明日!
 
 
 
さて、仕事復帰チームがラス日の本日。
昨日約束した通り、ちょっと楽しいお昼ご飯にしようと思っている。

本当は上の子たちも一緒に食べたかったけど、この世界がなのかこの国がなのかと、もう何度も思って考える事をやめる。
 
だってありえる?休日がないなんて!こっちの人には普通に常識らしい・・・。ケガや病気をした時しか休めないなんて・・・。だけど休めば死活問題とか。

いや、元の世界でも日本の常識は世界の常識ではないと聞いた。
二十一世紀なのに?!と言いたくなるような国はたくさんあったもんね・・・。
 
気持ちを切り替えて、日課の家事をする。
今日もお昼ご飯の支度があるから、私は掃除担当だ。
私はイベントがあっても日常生活は手を抜かない主義だ。
まぁ朝早くからお出かけなんかならその限りではないけど。
今日はユーリンと掃除をする。
 
「おはよう、コハル、ユーリン」
「おはようみんな。調子はどう?」
 
いつもと同じくらいの時間にみんなはやってきた。
挨拶を交わすと、手を止めなくていいと勝手に温泉に行ってくれる。
 
「麦茶のポットを持って行ってね!」
「ありがとう」
 
サクサク終わらせて、お昼ご飯の下準備をしよう!

今日のお昼はバーベキューです! 
とはいっても、バーベキューコンロがある訳でもなし、なんちゃってだけどね。
 
家の前の庭に石を組んで焚火ができるようにする。川なんかで魚を焼く、あれを想像してもらえたらいい。
それを二つ。塩味用とタレ味用ね。
 
問題はお肉なんだよね・・・。
牛肉は薄切り肉しかない。カルビやハラミなんかがほしかった。
豚肉は生姜焼き用のロース肉だし。これはカットしないで一枚で焼いちゃおう。
鳥モモも一枚で焼いちゃおうか。ゴージャスに見えるからね!
それからウインナーと、ベーコンも一枚のまま焼いちゃおう!
 
野菜、食べるかな?
子供とか男の人とかって、肉!肉!肉!のイメージなんだよね・・・。
まぁいいか。私は食べたい!
よく焼いた玉ねぎなんか甘くて美味しいじゃないか♪
それからピーマンも好きだ♪
キャベツは焼き用と生食用を用意しよう。
 
あぁ!焼きそばがほしかった!!
キャリー様の中にあるのは残念ながら乾麺だけなんだよね!
 
さっさと掃除を終わらせたら、ユーリンと下準備をする。
お肉に塩コショウしたり、タレに付け込んだり、野菜を切ったり。
そのうち洗濯が終わった三人も手伝いに加わる。
色々忙しいけど、初めての外での食事に子供たちは楽しそうだ。
 
最後に、大きなザルに山盛りパンも出して、麦茶も作ったら準備オーケーだ♪
バーベキューだから昼からビールもありなんだけど、彼らはケガ人だし、子供たちもいるから今回はなしで。
 
準備が終わるとタイミングよくお昼の鐘がなった。
すぐにクバード達がやってきた。簡易バーベキューを見て驚いているよ。
 
「討伐先で野外での飯には慣れてたけど、形は同じなのに何だ!この違いは!!」
「な!俺もそう思った!めちゃくちゃ美味そうじゃねーか?!」
「まったく別物だな・・・」
「別物だな」
 
ひとしきり驚いたり愚痴ったり?して、それじゃあとお肉を焼き始める。
鳥モモはちょっと時間がかかるけど、ロース肉とベーコンとウインナーはすぐ焼ける。
ジャンジャン焼く。焼いたそばからなくなっていく。
 
「美味ぇ!なんだこりゃ!」
「同じ事をしてる筈なのに、何でこんなに味が違うんだ?!」
「これ!! タレ味最高!!」
「コハルさん、ウインナーって美味しいね!」
「コハルさん、この鳥もういいかな?」
「コハルさん美味しいね!」
 
野菜も焼きたいけど、この分ではまだ先になりそうだ。ちぇ。
こういった火の扱いになれている男衆に焼き手を代わってもらって、私は台所に行く。
よしよし、もういいな。
私は茹であがったばかりのじゃが芋を持って戻る。
 
「これも美味しいよ!塩でもバターでもマヨネーズでも、どれでも好きなのをかけて食べてみてね!」
 
みんな、ワッと手が出る。 
私はまずはシンプルに塩でいこう♪
それにしても、外で食べるご飯って何でこんなに美味しいんだろうね!




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