白が浸された。

ノベルバユーザー444286

プロローグ

 「高校生になればなにか変わるかもしれない。」
 別れと出会いの季節、春。
 心のどこかでそう期待しながらくぐったであろう校門。

 「世界は不条理だと思う。」
 そう負け犬が言ったところで誰も聞く耳を持ちやしない。口が達者で実績がないやつの言葉を信じる人がいたら、私はそいつを阿呆だと思う。

 10歳の頃、「皆さんはあと10年後には立派な成人になっています。」と先生が言った。あともう半分生きるだけで大人になっちゃうんだと思った。未来の自分なんて想像もつかない。けれども一日には終わりがある。季節は巡るし、毎年疑問も抱かないまま年は明ける。

 「今年で最後なんだ。」しみじみとそう思いたかった。空白の卒業アルバムに価値はない気がする。価値のない記念品。ただの紙のまとまりにお金を払うのはちょっと癪だ。


 私はお高く纏ってみたかった。
 私は特別になりたかった。
 なんて思うのはきっと傲慢だ。
 本当の自分なんて本人でさえ分からない。私は仮面をつけてさえいない。
 そんな気がしなくもない。

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