タイムカプセル・パラドックス

宇佐見きゅう

後書一《禁断》

 後書一《禁断》              十二月三十一日 二十三時四十五分




「今年ももう終わりということで、『この物語』のタブーに触れてみてもいい?」


「年末だからって触れてもいい理由にはならないと思うけど、これまで色んなメタ発言をしてきたキナちゃんが、これ以上どんなタブーに触れるっていうんだい?」


「お父さんの名前、どうして本編で一回も出てこないの?」


「……そこは触れちゃいけないところでしょうが……! っつか本編って言うな」


「私の名前もさ、キナちゃんってばかりで、ちゃんと名前出てこないし、お母さんの方も某魔法学園ファンタジー小説の、名前を言ってはいけない例のあの人みたいに頑なに『彼女』で通していたし。何なのこの秘匿主義」


「ぐいぐい来おるよこいつ……。何で名前を隠したかなんて、僕が知るわけないだろう。この話を作った作者本人に聞いてくれよ」


「本編って言葉で思い出したけど、今回のこの会話、あとがき的なボーナストラックとして書かれているみたい。ライトノベルのあとがきにキャラ同士が語り合うものがあって、いつか作者自身もそれをやってみたくて、ここが実現したみたいだよ」


「へえー。じゃあ、ここあとがきなんだ。君もそうだけど作者自由だな、おい」


「タブーへの接触第二弾。なぜ地の文が存在しないの?」


「いや、そこはふんわりさせとけよ。いいじゃん、地の分なんかなくたって。というか僕たち小説のキャラクターが、どうやって地の文の有無を認識しているんだよ」


「そこは雰囲気で。まあ、このテーマをこれ以上ほじくっても面白くないね。次のタブーに行きましょう。タブー三連発。タイトルのタイムカプセル出てくるの、最初だけじゃね? 前半は私の正体をSFチックに探るのが、テーマだった気がするんだけど、後半は完全に趣旨変わってね? お母さんが私を捨てて消えた理由、あやふやにされてね?」


「怒涛の三連続……! お前は作者を殺す気かっ! 作者を自責の念で殺す気かっ! まあ、その三つをまとめると『途中でテーマを見失ってね?』ってわけなんだけど、当初のテーマを貫いていれば、タイムカプセルも、キナちゃんと彼女の関係も、伏線回収できていたはずなんだよ」


「おっと? お父さん、作者代理人ですか? やけに饒舌すね」


「テーマを見失った原因としては、僕たちの性格にあるらしい。ほら、僕たちって妙に達観しちゃっているところがあるじゃない? 目の前の謎や不条理をそのまま飲み込むことのできる性格だったせいで、もろもろの疑問を追わせられなかった、とのこと」


「自分で作ったキャラクターのせいにするとはとんでもねえ作者だな! まあ、いいや。作者の怠慢は許せないけど、あの本編も楽しかったから」


「ほらね、そういうところ」



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