タイムカプセル・パラドックス

宇佐見きゅう

第六十一幕《秘話》

 第六十一幕《秘話》              五月十日 十八時二十五分




「ただいまー。あー、急げ急げ。見たいドラマ始まっちゃう」


「…………」


「あれ? もしもしただいまー。鍵開いてたけど、お父さんいないのー?」


「おかえり……」


「え、あれ? もしかしてお父さん、私の部屋にいるの? 何で?」


「うん……。ごめん。この部屋に置いといたファイルを探していたら」


「あらら……。何やっているの、人の部屋に入って。しかも人の日記を勝手に盗み見するなんてマジクズ最低ぇー死ね変態。お父さん大っ嫌い(棒読みー)」


「うん、それについては本当にごめん。えっと、これ何?」


「何って、何が?」


「これの内容。これ、どういうこと? 異世界とか、装置とか」 


「ああ、そのこと。いや、SF小説読んでいたら、ちょっと想像が喚起されて」


「だよね。創作だよね。フィクションだよね。そうかそうか……」


「フィクションに決まってんじゃん。まさか本気にしたの?」


「馬鹿を言え。そんなわけないじゃないか。ちょっと真に迫ってて、引き込まれただけ」


「おお、引き込まれた、ですか。そんなに気に入っちゃった?」


「いや、面白いよ、これ。ここで終わってるけど、これでおしまい?」


「んー。そうだね。思いつきで書いたもんだからねー」


「続きは書こうと思わない? 書いてみたら?」


「ぐいぐい来るねえ。書いてみたいもんだけど、そこでアイデアがストップしちゃってさ。そっからの展開が思いつかなくて、寝ちゃったんだよ。だからムリポ」


「ええー、勿体ない。せっかく上手く書けているのに」


「……まあ、気に入ったんなら、気が乗ればまた書いてもいいけど。あ、でも全然期待しないでね。ホント、全然プロットとかないし、難しい話考えられないし」


「期待して待ってるよ。こういう話書いたりするの好きなの?」


「べーつに。嫌いってわけじゃないけど、趣味ってわけでもないし。他人に見せようと思ったことも一度もないし。大体恥ずかしいじゃん。自分の妄想そのまんままでさ」


「その妄想を文章にしているのは君だけどね。……ふうん。素で書けちゃうのか。前にしていた話を引っ張りだすけど、やっぱ演劇の台本を書いてみたら?」


「それも気が乗ったらねー。とりあえず今の興味はドラマなので」


「ああ、ごめん。どうぞごゆるりと」


「……あー、オープニング見逃した! 残念!」



「コメディー」の人気作品

コメント

コメントを書く