タイムカプセル・パラドックス

宇佐見きゅう

第三十七幕《暴露》

 第三十七幕《暴露》             




「……って感じで、どう? 今日のエイプリルフール、楽しんでもらえた?」


「面白かった面白かった。もう最高。嘘の規模がでか過ぎ」


「そう、嬉しい。今日のために頑張って考えた甲斐があったよ」


「わざわざ嘘を考えたんだ。大胆な嘘だね」


「エイプリルフールに、ちょっと嘘を吐こうかなって思って考え出したら、ストーリーがどんどん膨らんじゃって。夜中のテンションってすごいね」


「夜中のテンションってのは、そういうものだ。若返りのアイデアがいいね。魔女とか呪いが突拍子もないけれど、悲恋を主軸にすることで気にならなくなる」


「あ、若返りのアイデアは、お父さんのDVDの映画からヒントをもらったんだ」


「ああ、ベンジャミン・バトンか。あれも切ない話だよね」


「あれがなければ、今日の嘘はありませんでした。すべてあの映画のお陰です」


「すべてあの映画のせいです、とも聞こえる」


「お父さんにもノリノリで付き合ってくれて、感謝です」


「いえいえ。それほどでも。途中、素に戻っちゃったりしたし」


「まあ、あれはね。ダーリンじゃなかったかー。普通に君付けだったかー」


「彼氏をダーリンって呼んでいる人、実際に見たことないなぁ」


「魔女とか呪いってのは便利な概念だな、と思いましたね。その言葉を使うと、余計な説明が省ける。相手が勝手に解釈してくれるというか、それが説明になるというか」


「魔法や錬金術というと、ファンタジー色が強くなって、現実感が完全になくなるけど、呪いは何となくリアリティを残してくれるね、確かに。ホラーの影響かな。ホラーの呪いとかお札とかも説明が要らないし、むしろ説明したら無粋だ」


「なるほど。ホラーの影響ね。キスで呪いを解くって点については?」


「ん? いいんじゃないの? ベタだけど、分かりやすくてお手軽だし。これこれこういう道具が必要で、こういう儀式をしなくちゃで、っていうより断然いい」


「おおっ、思ったより高評価。ちょっとそこは不安だったんだよね」


「愛する者のキスの判断基準が気になるかな。キナちゃんは家族への愛情と恋人の愛情を別にしていたけど、そんなに違うものかな、と。例えば、妻相手だとどうなの? とか」


「なるほど。その点は次回に活かします」


「それは結構。じゃあ」


「うん」


「ご飯を食べよう。キナちゃん」


「そうだね。お父さん」



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