タイムカプセル・パラドックス

宇佐見きゅう

第二十四幕《仮想》

 第二十四幕《仮想》                




「あ。ごめん。お父さん静かにして今いいところだから」


「僕、何も言っていないんだけど……」


「うん。だから。静かに。して」


「…………」


「……おおぉ……」


「……エンドロールだし、そろそろ喋ってもいいかな」


「え? いいに決まっているじゃん。喋るのに娘の許可をもらうなんて、何を言っているの? まったく、おかしいことを言うなあ、お父さんたら」


「…………。うん、まあ、君のリズムにも慣れてきたけどね」


「それにしても、いやぁ、すごかった! すごい面白かった。すごい震えた。最後、溶鉱炉に沈んでいくところなんか、ちょっとウルッと来ちゃったし。あれは名シーンだね」


「まさしくね。『2』と言えば、あのラストシーンだ。僕も風呂とかプールでよくあのシーンを真似して遊んでいたよ。……しっかし、うーん。むむう」


「どうしたの? また分かりやすく難しい顔をして」


「君って、もしかしてこれかい?」


「はあ? 『これかい』ってどういうこと? 何が?」


「んー、だから、君は、遠い未来から来た僕の娘か子孫で、この時代でとある女性と僕を結び付けるために、タイムスリップして来たんじゃないのかなって。このままの運命じゃ自分が産まれないと分かって、それで」


「はあ……? 何をいきなり面白おかしいこと言っているの? それじゃあ、あの思い出のタイムカプセルがタイムマシンだとでも言い出すの?」


「いいや、僕の推論ではあのカプセルは時間移動の際に重要な座標点の役割だな。時空間的に僕との関わりが強い地点を選ぶ必要があったんだ。タイムマシンほどの重要なアイテムを手放すはずがないから、今も持っているんじゃないのかな」


「はあ……。よく回る頭ですことって思うし、突っ込みどころ満載の妄想だけど、でも、もしお父さんの言うとおりだったらどうする?」


「さっさと運命の女性を出会わせて結婚させてくれ君の力で」


「他力本願は期待しないなー。情けないよ、色々と」


「そういうのはいいから早く仕事をするんだ僕のキューピット!」


「自力で未来を掴め駄目親父! 何? 結婚する自信がないの?」


「はっきり言おう。ちっともない!」


「しっかり言い返そう。はっきり言うことではない!」



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