タイムカプセル・パラドックス

宇佐見きゅう

第十二幕《休眠》

 第十二幕《休眠》               




娘「お父さん……、どうして予備の布団があるの? 計画的犯行?」


「計画しないし犯行しない。どうして予備があるかって、そりゃ予備だから」


娘「誰が使うのさ。こんなこともあろうかとって考えていたの? 私用の茶碗とか箸も用意されていたし。こうも都合がいいと、作為的なものを感じてしまって怖い」


「僕だって友人を部屋に招くことがあるから、そういうときのために置いといてあるんだよ。いちいち僕の生活事情に突っ込んでいたら日が暮れるよ」


娘「もう日は暮れているよ。まあいいか。せっかくの布団に文句言ったら、罰が当たるもんね。零時過ぎているのに起きているなんて、不健全極まりない! おやすみなさい!」


「うん。僕はあっちの部屋で寝ている。君はこっちのリビングで寝て」


娘「了解しましたー」


「一応、もう一つ部屋があるんだけど、今は雑貨品とかが突っ込んであって物置状態になっちゃっているから、明日片付けるよ」


娘「ああ、2LDKだからもう一部屋あるのか。……ほほう? つまりその部屋が私に割り当てられると? つーまーり、そおいうことなんですね、お父さーん?」


「……もしかして古畑任三郎か、それ? テンションうざいな、君」


娘「うざいって言うなー! うざいって言う奴の方がうざいんだぞ!」


「うざいって言う奴はうざくはないと思う。まあ、根暗よりはマシだよ」


娘「わーいお父さんに褒められた! やっぴーハッピー!」


「……うざいって言うか情緒不安定? 君、育った施設で問題起こしてないだろうね」


娘「あら。嫌ですわお父様。何を仰いますの、おほほほ……」


「急にお嬢様キャラになったぞこの娘。あからさま過ぎだろ……」


娘「……お、起こしてないよーう。私は模範的いい子生だったよーう。夜の校舎窓ガラス壊して回ってないし、盗んだバイクで走り出したこともないよう」


「尾崎節でなお怪しさが増したんだが。そういや、君の素性についてはあれこれ質問したけど、君の人格についてはまだ審議してなかったな……」


娘「本当よ。さっきも話したとおり、私はこの星でいうところのアンドロメダ二十三星雲の星からピピットサンダー号に乗ってやって来た、宇宙探索員の……」


「いつの話だそれ」


娘「ごめんごめん。ええっと、……何の話してたんだっけ?」


「何で五秒前の記憶が不安なんだ。脳みそ貧弱すぎるだろ」


娘「まあまあ、話の続きは明日。じゃあ、私寝るから、朝食が出来たら起こしてね」


「ふてぶてしいおやすみだなぁ。うん、おやすみ」



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