幼馴染みが婚約者になった

名無しの夜

第11話 決闘の行方

「決闘を前に呑気にランチとは……。ふふ。やはり私を舐めまくっているようですわね」
「いえ、暇だったので。それより本当にやるんですか?」
「しつこいですわよ。怖いのなら敗けを認めなさいな。そうすれば怪我をしなくてすみますわよ」
(ん? 別にそれでもいいような)

別に敗けて失うものは何もないし、さっさと敗北を宣言してしまえば丸く収まるのでは? と、考えていたらーー

「言っとくけど、私の代理で出ておいてわざと負けたら許さないからね」

後ろでティナが拳をパキパキと鳴らした。

「……仕方ないか。それならさっさと終わらせよう」
「その余裕が剥がれる時が楽しみですわ。リリラ」
「はい。お嬢様」

剣を鞘へと戻したリラザイアさんの元に大きな槍を持った黒髪のメイドさんが近付く。明らかに通常のモノより二回り以上も大きなそれをリラザイアさんは片手で受け取った。

「ふふ。どうです? 凄いでしょう。これこそ私が対魔物用に開発した大槍『激砕』ですわ」

(…………あのメイドさん、何か……変?)

「ん? あれ? ちょっと視線がおかしくありませんこと? こら、こっちを見なさいな。こっちですわよ~。……ちょっと! 聞いていますの?」

肩の辺りで切り揃えられた黒髪。美人だけど表情が変化しなさそうな美貌と、何よりも身に纏っている鋭い雰囲気が少しだけ剣聖様に似ていた。

ティナとサーラを見れば二人もリリラさんを警戒するように注視している。

ふと、奈落のように深いひとみと目があった。

「……何か?」
「えっ!? いや、あの、えっと……貴方は?」
「ご挨拶が遅れ申し訳ありません。私はリラザイア様専用メイド、リリラ・アギドナウスと申します。以後お見知りおきを」
「アロスです。よろしく」
「そうですか、そうですか。あくまでも私は眼中にないと言いたいわけですのね。いいですわ。叔父様、早く開始の合図を」
「あー。それでは二人とも前へ出ろ」

言われるままにリラザイアさんと向き合う。

「ふふ。覚悟はよろしくて? ここから先はふざけている暇なんてありませんわよ」
「……本当にやるんですか?」
「くどいですわよ。叔父様」
「それでは今より決闘を執り行う。敗者は対価を支払うことになるが互いに異論はないな?」
「ええ」
「……はい」
「それでは……始め!」
「ふっ!」

と鋭い呼気と共にリラザイアさんが踏み込んでくる。その速度は五十キロは有に超えているであろう大槍を持っているとは思えないほどに速く、繰り出される一撃は質量と速度に相応しい威力を秘めていた。

(あれ? この人思ったよりも強い?)

だから俺はーー



「ありえませんわ! こんなのあり得ませんわ!!」
「よくやったわアロス。それでこそ私のおと、お、お、幼馴染よ」
「アロスさん、格好良かったです」

リラザイアさんになるべく怪我をさせないように完勝したら、ティナとサーラがそれぞれ労ってくれた。

「私が……この、私が……」

地面に両手をついて深く項垂れるリラザイアさん。綺麗な金色の髪が泥に汚れるのを見ると、ちょっぴり罪悪感が込み上げてくる。

「あの、決闘は俺の勝ちですが、奴隷にはならなくていいですよ」
「先生、それじゃあ話の筋が通らねぇ。きっちりそこの馬鹿をこき使ってくれ」
「いや、そうは言いますけどね」

俺が視線を向ければリラザイアさんはビクリと身体を震わせた。

「……とはいえそんなでも可愛い姪だ。あんま酷い扱いはせずに先生の愛人くらいに留めてくれると助かる」
「あ、あ、愛人ですって!?」

ボリュームのある髪を揺らして、一瞬で顔を真っ赤にしたリラザイアさんが跳ね起きた。

「なんだ? まさかと思うがお前、自分から奴隷になると言い出しておいて処女でいられると思ってたのか? 自分の容姿を客観視できてなかった訳じゃないよな」
「自分の美しさくらい知っていますわ。そうでなくて、その、その……」

リラザイアさんは不安から自身の体を抱きしめる……のはいいんだけど、胸の下に入った腕のせいでただでさえ大きな乳房が見てよとばかりに強調される。

「アロス? アンタどこ見てんのよ?」
「まさかと思いますけどアロスさん。本気でリラザイアさんの処女を狙っているんですか?」
「えっ!? ち、違うよ! ただちょっと大きいなって思っただけ」
「変態! 変態!」
「変態じゃないから。男なら普通だから」
「はぁ? 開き直ってんじゃないわよ」
「ティナこそ、自分のオッパイが小さいからって当たんないでよね」
「なっ!? 何ですって~。と言うかレディに向かって堂々とオッパイって言わないでくれる? その……は、恥ずかしいじゃない」
「ん? オッパイって単語が恥ずかしいの? それとも小さいことが恥ずかしいの?」
「よーし。その喧嘩買ったわ」

凄い怖い目をしたティナが拳を鳴らしながらこっちに近づいてくる。

「ち、違うって。純粋に気になっただけだから」
「私の胸の小ささが? 言っとくけど言うほど小さくないからね」
「うわっ? これ本気で怒ってるパターン? サーラ、ヘルプヘルプ」
「まぁまぁティナさん、落ち着いてください。アロスさんも年頃の殿方、オッパイが気になるのも仕方のない話ですよ」
「それは……まぁ、そうかもね」
「そうですよ。それに小さくないことを証明したいならアロスさんに見せれば良いだけの話では?」
「なっ!? と、突然何言ってんのよアンタは」
「サーラ、それは実に良い考えかもしれないね」

正直今までティナ達をそういう目で見たことはなかったけど、アリアさんにディープな接吻をされて以降、前よりもずっと女の人の裸が気になって仕方ない。

「え? アロス、アンタマジで言ってるの?」

今までの俺との違いを敏感に察知したティナが意外そうな瞳をこちらに向けてくる。

「ふふ。やっぱりアロスさんも殿方なんですね。……安心しました」

微笑むサーラ。三日月を描いた口元がそっと俺の耳元へと近付いてきた。

「な、なに?」
「もしオッパイが見たくなったら遠慮せずに言ってくださいね」
「え?」

この幼馴染みは何を言ってるのだろうかと思って見つめていると、チラリ、とサーラの服が捲られた。しかも何故か下着がズレていて、柔らかな双丘の尖端が……尖端が……

「ぐっはっ!?」
「ちょっ、ア、アロス? アンタ凄い鼻血だけど大丈夫?」
「だ、大丈夫」
「まさか私の秘められた力が遅延効果でダメージを?」
「流石ですお嬢様」
「いや、まぁ、お前さんもアレを武器にしていたら勝機はあったかもな」

周囲が好き勝手言う中、サーラが小さく舌を出した。

「すみません。ちょっと冗談が過ぎましたね」
「じょ、冗談? だ、だってアレが、アレが見え……」
「ふふ。そうですね。……もう一度見たいですか? 言っておきますけど、私がこんなことするのはアロスさんだけですからね?」
「そ、それは……」

どういう意味なんだろうか? 俺が考えてるとーー

「もう、なんでアンタは急にそんな鼻血を出してるわけ? はい、これ」
「ふがっ!?」

ティナの手によってティッシュを鼻に突っ込まれたんだ。

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