幼馴染み百合カップルの異世界転生〜異世界転生で百合カップルから男女カップルへ〜

りゅう

武器選びはお洒落が大事!突然凱旋!?





 「絶対ダメ!!!」
 冒険者ギルドを出て町で買い物をしている最中、千尋は千奈美に大声で怒鳴りつけた。
 「とは言ってもな…前衛で戦うからには防具は必須だろ…」
 「そうだけど…ちなちゃんの魅力が最大限に生かされる服装は高校の制服なの!鎧とかそんなの身につけてたらちなちゃんの可愛さ半減だよ。絶対ダメ!!!」
 と、防具装備を売っているお店の前で千尋と千奈美は言い争っていた。千奈美はこんなしょうもないことで争いたくはないのだが、やはり装備はきちんとしておきたいので引き下がることはできない。とても決着が着きそうにないやり取りを防具屋のおじさんはボーっと眺めていた。
 「お嬢さん…今着てるその服を防具装備化することもできるぞ…だいぶ割高になるがな…」
 千尋と千奈美の口論を見兼ねた防具屋のおじさんが千奈美に向けて言うと、千尋が話に食いついた。話し合いの結果、千尋が全額負担することで千尋と千奈美が今着ている服を防具化してもらうことにした。千尋が全額出して服を防具化できるというのに千奈美は性能が…とかステータスが…とかぶつぶつ言っているが千尋は気にしないことにする。
 千奈美が装備している服は防具化で、制服の防具としての耐久力強化や、ダメージカット効果、千奈美のステータス補正などの基本的なものを付加してもらい、千尋の服は服の耐久力強化とダメージカット効果の付与だけになった。これだけでも10000コル(100万円)使うことになり、千奈美の服の防具化をしてもらっている間に千尋は冒険者ギルドに戻りお金を下ろしてきた。
 そして、千尋と千奈美の服の武具化が終わり、千尋と千奈美の服には武具としてのステータスが付いた。
 千尋の服
武具レベル1
耐久力:50
武具スキル:ダメージカット

 千奈美の服
武具レベル5
耐久力:450
武具スキル:ステータス補正(守備力150)、ダメージカット

 武具化が終わり、千尋は千尋と千奈美、両方の服の武具化代金を支払い武具屋を出た。そして、武具屋を出た千尋はクリーニングの魔法を習得した。クリーニングの魔法を使用し、千奈美に毎日綺麗な状態で制服を着て貰おうという企みだ。
 「千尋、私は武器屋で武器装備を買いたいのだが千尋はどうする?」
 「うーん。武器屋の隣にマジックアイテムを売っている魔導具屋があるからそこに行きたいかな」
 「じゃあ、一緒に行くか」
 「うん」
 千尋は笑顔で千奈美に答えて千奈美の手を取り、千尋と千奈美は手を繋いで武器屋のある通りに向かった。
 「千尋、何かめぼしいマジックアイテムは見つかったか?」
 「うーん。あんまりいいマジックアイテムがなかったから何も買わなかった」
 千奈美と別れてマジックアイテムを探すために魔導具屋に向かった千尋だったが、入ってしばらくしてめぼしいマジックアイテムがないと見切りをつけて千奈美のいる武器屋で千尋は千奈美と合流した。
 「ちなちゃんは良さそうな武器見つかったの?」
 「私もめぼしいものは見つかっていないな。私たちのレベルが急に上がったせいで私たちに合う武器やマジックアイテムは少ないのだろうな…あまりしっくり来ないが一番私に合う装備を買うことにするよ」
 「武器のこと、一回冒険者ギルドで相談した方がいいかもね…」
 「だな…」
 千奈美は千尋に返事をしながら一番、使いやすい剣を購入して、購入後すぐに武器を装備した。

中位の剣
武器レベル:12
攻撃力上昇:150
適正必要値:186
武器耐久力:425
武器スキル:強靭、諸刃の剣

 5000コルで購入した装備だが、やはり千奈美はまだ気に入ってはいないようだ。やはり千尋と千奈美のレベルならばもっと都市部に向かった方がいいのだろうか…などと千尋が考えていると町の門付近が騒がしくなってきた。
 何があったのだろう…と千尋と千奈美は門の方に向かう。
 門の周りには人がたくさん集まっていて町の人たちは門から町への道を作るように片膝をついて頭を下げていた。
 「え…何これ…どういう状況?」
 「おい、そこの若いの!お前らも早く並ばんか…」
 状況が理解できずに立っていた千尋と千奈美に地面に片膝をつけて頭を下げていたおじさんが声をかけてきた。
 「あの、これはどういう状況なんですか?」
 「あぁ、知らねえのか…急な話だから無理はないな。最近、この近隣に魔王軍の軍勢が陣取っていたらしくてな、この国の第二王子様が国王軍を引き連れて魔王軍の軍勢を討伐して、王都に帰る途中の休息地にこの町、ストリングを指定したから凱旋のお出迎えだよ。ほら、もうすぐ第二王子様が到着なさるからお前らも並びな」
 おじさんはそう言い、千尋と千奈美の手を引っ張り強引におじさんと同じ姿勢にさせた。この世界の常識がわからない千尋と千奈美はおじさんの言う通りにした。
 しばらくして、かなりの軍勢が門の付近に現れ、町の中に武装した集団が入ってきた。武装集団が列を作り、町の中央へと歩み続ける。すると、列の中央の白馬に跨った太り気味の男がこちらをじっと見つめてきた。太り気味の男はじっとこちらを見つめた後、ニヤリと笑い白馬に跨ったままこちらの方へやってきた。
 「おい、そこの女、グレイシア王国第二王子ザナック様に顔を見せることを許す」
 太り気味の男が千奈美に向けて言うと千奈美は下げていた頭を上げて太り気味の男に顔を見せた。
 「うーむ。中々に美しい。気に入った。よし、お前をグレイシア王国第二王子ザナック様の第十二婦人として我が嫁に迎え入れてやる。光栄に思うといい」
 太り気味の男は千奈美に向けてニヤニヤとした表情で言った。
 「「え…えぇ!?」」
 千尋と千奈美は驚きの声を上げる。千尋は恐る恐る千奈美の表情を見た。千奈美は千尋のことを愛してくれているとは思うがこの突然のプロポーズに千奈美がなんて答えるのか…千奈美に捨てられたりしないか不安だったからだ。
 「お断りさせていただきます。私には私の全てを捧げると誓った者がおりますので、私はあなたの婦人になることはできません」
 千奈美ははっきりと断言した。千奈美の回答を聞いて周りが青ざめた。当の本人は凛とした表情で太り気味の男に引き下がれと表情で訴えている。
 一国の王子様相手に凛とした態度で自身の思いを告げてはっきりと意見を言い、千尋に全てを捧げると千奈美が言ってくれたことで千尋は千奈美に惚れなおしてしまった。
 「そうか…無礼だが気に入った。よし、我が婦人として招き入れる話はなかったことにしよう」
 第二王子はニヤリと笑い、まるで何か企みを持っているような雰囲気を匂わせて凱旋の列に戻り町の中央へと向かっていくのだった。












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