番外編:美術室の幸村さん「とある教師目線」

紡灯時園

数学の時間

次は1年のYコースの数Aの授業。
この学校に来てはや4年立つ。もうここにも慣れたものだ。

この学校の数学は、ZコースとYコースに別れている。 
Zコースはいわゆる特進クラス。
Yコースは基礎を学ぶクラスだ。

俺が今うけもっているクラスはYコースの数A。週2の授業だ。

「そろそろいくかー。」
俺、槻島真人つきしままさとはイスから腰を上げ、移動する準備をする。

チャイムが鳴る一分ほど前に教室に入る。
早く行き過ぎてもやることが無い。1分ほどあれば電子黒板の準備はできる。

コードを持ってパソコンと電子黒板をつなぐ時に、ふと一番前の窓際に座る女子生徒をみる。
いつも授業が始まる前、いや始まっても外を眺めているイメージがある。
いったいそんなに外を見て何がおもしろいのか、俺にはよくわからない。
あいつが外を見ながらなにを考えていようと別に俺には関係ない。
しかし、なぜか気になるのだ、いつの間にか見てしまう。


俺の授業は、一通り進めたあと、練習問題をさせる。その問題を解く時間と、他の人と解答を共有する時間をとる。

その時いつも彼女は、ボーとすでに解答したであろう自身のノートを見つめている。
隣にも大人しく、ぽつんと考えている子がいるのにもかかわらずだ。

話せばいいのにな。

俺はおせっかいにも彼女に近づき、
「キミらは話さないの?」
と笑顔で問いかける。

ふとこちらを見た彼女は、俺に言われた後すぐに隣を向いて微笑み、「できた?」と話し始める。
そう、話そうとしないだけで、コイツは、普通に会話ができるのだ。 
何故彼女はそれをはじめからしようとしないのだろうか?

個人的、ぽつんとしている生徒をほおっておけない。まぁ、そうなってしまうのが本人の自業自得なら、俺はなんとも言えないが。

この世にはありがた迷惑という言葉もある。
適度にするほうがいいのである。

授業が終わりのチャイムが響く。
やっと今日も終わった。しかしこれからまた職員室でパソコンに向かわねばならない。

あと一息だと、教室を出ていくのだった。





 

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