僕のシリウス
エニフ
ガヤガヤと騒がしい喧騒の中にヘラヘラとただ微笑うだけの私はまるで一人みたいだ。
そんな事をただ考えながら、呆然と、唖然と、釈然としない気持ちで眺めていた。
物知りな私にもまだまだ知らないことや興味のない事は沢山ある。
アイドルなんかもその類だ。
私にはいけめん……?が理解ができないのである。
でも、分からない、知らない、私のわかる話をしろ、と言ってもいいほどこの世は甘くない事ぐらいは私でも理解している。
「えー。絶対リッキーの方がかっこいいよ!ね、進藤さん。」
「え、ああ、うん。私もそうだと思うぞ……?」
空気が一瞬で冷え、息が出来なくなる。
皆んなの視線に耐えられず、はは、なんて乾いた嗤いが漏れる。
もうこのわらいは自分に対する嘲笑でしかなかった。
世間は甘くないからこそ、こうして同意してヘラヘラと笑うしかない。
「……だっよねぇー!さっすが進藤さん!わかってるね!」
「ちょっとリナ!あんた上から目線すぎー!」
「だって私と進藤さんは友達だもんねー!」
彼女たちの高らかな笑いと、肩に回される腕。
その全てに間違っていなかったと安堵し、胸を撫で下ろし、一緒になってまたへラリと笑う。
一体、私はいつからこうなってしまったんだ?
そう考えかけ、まるでアイツみたいだな、と思わず笑んでしまう。
これ以上彼女達といたら気分が下がってしまうと思い、私はトイレに行ってくる、と声を掛けその場を後にした。
笑い声を尻目に廊下に逃げ出て大きく息を吸う。
やっと息が出来た様な気がして体が軽くなる。
どうも私にはこういうのは向かないらしい。
でも、折角話かけてくれたものを無下にするほど私も人徳が無いわけでは無い。
だから毎日、何となく誘われるまま輪に入ることが増えてしまった。
ふ、と短く息を吐けば後ろからタタタ、と軽快な駆け足の音がする。
その音に自然と口角が上がり後ろを振り返る。
「かける!」
「星奈ちゃん!」
目の前に走ってきた駆の頬は上気し少し息が上がっている。
それだけで走ってきた事が分かり、思わずからかってみたくなり一歩近付く。
それだけのことで彼の頬はみるみるうちに林檎の様に真紅に染まっていく。
「せ、星奈ちゃん。アイドル好きなんだ、意外だね!」
少し上擦った声でそっぽを向いて話す駆。
痛いところを突かれ、う、と低くくぐもった声を漏らす。
適当に知ったかぶったとも言えずに暫く口を閉ざしてしまう。
……。駆にはあんまり使いたくなかったのにな、と考えながら口を開く。
「まあな、私も女だ。仕方が無いだろう?」
首を傾げあやふやな笑みを漏らす。
一瞬、彼の瞳の奥がギラリと光った様な感覚に陥り視線を下に逸らす。
この感覚が何度味わっても慣れない。一瞬が一生に感じてしまう。
「ふーん…?」
まるで見透かされた様な気持ちになる。
「まぁ、そっか。そうだよね。かっこいいもんね……。あ、僕、先生に呼ばれてるから行かなくちゃ。ごめんね、星奈ちゃん。」
拗ねた様に唇を尖らした姿は子犬の様に見える。
尻尾と耳が見える気がするぞ……。
でも、そんな表情も束の間すぐにふにゃり、と笑う。
本当に、こいつの十面相には今まで何度救われたか分からない。
軽い足音と共に小さくなっていく背中を眺める。
姿が見えなくなったあたりで全身の力が抜け地面にへたり込む。
「私が守るって決めてたのにな……」
窓から入る風の音と共にそんな声が小さく漏れた。
そんな事をただ考えながら、呆然と、唖然と、釈然としない気持ちで眺めていた。
物知りな私にもまだまだ知らないことや興味のない事は沢山ある。
アイドルなんかもその類だ。
私にはいけめん……?が理解ができないのである。
でも、分からない、知らない、私のわかる話をしろ、と言ってもいいほどこの世は甘くない事ぐらいは私でも理解している。
「えー。絶対リッキーの方がかっこいいよ!ね、進藤さん。」
「え、ああ、うん。私もそうだと思うぞ……?」
空気が一瞬で冷え、息が出来なくなる。
皆んなの視線に耐えられず、はは、なんて乾いた嗤いが漏れる。
もうこのわらいは自分に対する嘲笑でしかなかった。
世間は甘くないからこそ、こうして同意してヘラヘラと笑うしかない。
「……だっよねぇー!さっすが進藤さん!わかってるね!」
「ちょっとリナ!あんた上から目線すぎー!」
「だって私と進藤さんは友達だもんねー!」
彼女たちの高らかな笑いと、肩に回される腕。
その全てに間違っていなかったと安堵し、胸を撫で下ろし、一緒になってまたへラリと笑う。
一体、私はいつからこうなってしまったんだ?
そう考えかけ、まるでアイツみたいだな、と思わず笑んでしまう。
これ以上彼女達といたら気分が下がってしまうと思い、私はトイレに行ってくる、と声を掛けその場を後にした。
笑い声を尻目に廊下に逃げ出て大きく息を吸う。
やっと息が出来た様な気がして体が軽くなる。
どうも私にはこういうのは向かないらしい。
でも、折角話かけてくれたものを無下にするほど私も人徳が無いわけでは無い。
だから毎日、何となく誘われるまま輪に入ることが増えてしまった。
ふ、と短く息を吐けば後ろからタタタ、と軽快な駆け足の音がする。
その音に自然と口角が上がり後ろを振り返る。
「かける!」
「星奈ちゃん!」
目の前に走ってきた駆の頬は上気し少し息が上がっている。
それだけで走ってきた事が分かり、思わずからかってみたくなり一歩近付く。
それだけのことで彼の頬はみるみるうちに林檎の様に真紅に染まっていく。
「せ、星奈ちゃん。アイドル好きなんだ、意外だね!」
少し上擦った声でそっぽを向いて話す駆。
痛いところを突かれ、う、と低くくぐもった声を漏らす。
適当に知ったかぶったとも言えずに暫く口を閉ざしてしまう。
……。駆にはあんまり使いたくなかったのにな、と考えながら口を開く。
「まあな、私も女だ。仕方が無いだろう?」
首を傾げあやふやな笑みを漏らす。
一瞬、彼の瞳の奥がギラリと光った様な感覚に陥り視線を下に逸らす。
この感覚が何度味わっても慣れない。一瞬が一生に感じてしまう。
「ふーん…?」
まるで見透かされた様な気持ちになる。
「まぁ、そっか。そうだよね。かっこいいもんね……。あ、僕、先生に呼ばれてるから行かなくちゃ。ごめんね、星奈ちゃん。」
拗ねた様に唇を尖らした姿は子犬の様に見える。
尻尾と耳が見える気がするぞ……。
でも、そんな表情も束の間すぐにふにゃり、と笑う。
本当に、こいつの十面相には今まで何度救われたか分からない。
軽い足音と共に小さくなっていく背中を眺める。
姿が見えなくなったあたりで全身の力が抜け地面にへたり込む。
「私が守るって決めてたのにな……」
窓から入る風の音と共にそんな声が小さく漏れた。
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