僕のシリウス

ノベルバユーザー456566

ウェズン

出会ってから僕は姿を見かける度に声をかけ続けた。
毎日毎日毎日毎日。
何にも続かなかった僕が一週間も話かけ続けた。
それぐらい彼女は僕の中で大きな存在になっていた。


「いつでも会うな!ふふ、私のストーカーくん?」


そう笑いかけ首を傾げる姿にまるで小動物みたいだなぁ……。
なんて考えていた思考を止めふ、と思った。
なんか僕凄い扱い受けてない??


「ストーカーじゃ、な……わ、わたしの!?」
「はは、そうだろう?熱心に毎日話しかけてさ。しかもわたしだけに」


な?、といたずらっ子みたいに笑う表情と、私の、と言われた事に舞い上がってしまい何も言い返す言葉が見つからない。
ああ、こんなにもぞっこんなのに伝える勇気が出ない事をもどかしく思ってしまう。


「なあ、そんなストーカーくんにお願いがあるんだけど、聞いてもらえるか?」
「その呼び方、他ではしないでね?……進藤さんが僕にお願い?」
「止めろよ、そんな他人行儀な呼びかた。名前で呼んでくれてもいいんだぞ?」


少し頬が赤らんで見えるのは僕の見え方にフィルターがかかっているからなのか。
でも、照れた様に見える姿に思わず視線を逸らす。
彼女の照れが僕にも移る。
暑くなる身体にもうこれ以上体温が上がることは無いだろうと勇気を出す決断を下す。
乾く唇を舌で舐める。喉が乾く。


「星奈……ちゃん」


折角名前を呼べたのに、絞り出した様な掠れたそれに、聞こえていないのでは無いかと思い彼女のほうを一瞥すれば嬉しそうに笑う彼女と目があった。
子供の様に瞳を輝かせ一歩擦り寄る。
ああ、もう。正直に言います。
めちゃくちゃにかわいい。
本人にはとてもじゃ無いけど言えないけど。
ありえない。話し方は少し乱雑だし、僕にひどい事言うけど、すっごくかわいい。
名前を一言、口にしただけなのに。


「駆!!私を図書館に連れて行ってくれないか」
「かっ…け…なまっ、え!いいよ!?」


名前を呼ばれた事に過剰に反応をしてしまったせいで何も考えずに軽はずみに返事をする。
で、で、デートじゃん!


「今からでもいいか?」
「い、い、けど。」


そうか。と笑い先に歩き始める姿に、期待して意識していたのは僕だけだったと悟る。
仕方ないか……。
僕は丁度、今いるところから五分ぐらいの場所にある図書館まで案内した。
周りにはファミレスや本屋、駅も近いと言う都市に近目のその図書館は街で一番大きいと、僕は思っている。
入り口の前に立てば、ウィーンという機会らしい音とともに、僕らを涼しい風が迎え入れてくれた。


「やっぱり、建物に入ると風が涼しくていいね」


そう話かけながら隣を向けば、さっきまで一緒に暑い暑いと言っていた小動物の姿はなかった。
探究心が抑えられないと笑っていた姿を思い出し、フッと笑い短く息を吐く。
館内を見渡す様に視線を巡らせれば大量に積み上がった本の山が目についた。


「ふふ、多分あそこかな?」


小さく声を漏らし、歩みを進めれば僕の大好きな優しい古書の香りが鼻を擽る。
絶対そうだ。


「星奈ちゃん?」


呼びかけて覗き込めば、キラキラと輝く瞳が僕を見上げた。
その表情に何か既視感を感じたが、僕はあまりそれを気に止めなかった。


「あのな、駆。私は知ることが好きでな。知ることは素晴らしいことだと思っているんだ。」
「知ってるよ。僕も興味があることなら沢山知りたいと思うよ。」


相槌を打ちながら席に着き適当に興味のありそうな本を手に取る。


「私はこの世の全てを愛しているんだ。だから知りたいと想うんだ。」
「もちろん、きみのことも愛している。だからもっときみの事を教えてくれないか?」


ポツリポツリと紡がれるその甘美な言葉に僕は変な汗をかいてしまう。
本気?どういうつもりでいってるの?それがどういう意味か知ってる?止めてよ。
そんな冗談。どうせ僕のことなんかなんとも思って無いくせに。
勘違いさせる様なことを言ったり、したりして、コロコロと翻弄して。
頭の中をそんな考えが支配し気分を沈ませる。
冗談ばっかり言わないで、って言おうと思い彼女の方を向く。
その言葉は彼女の表情を見て綺麗さっぱり消えた。
まるで大事な話をするかの様な表情で更に言葉を繋げる。


「もっと愛するために。君は何が好きなんだ?」


ボフンっと音をたて耳まで勢い良く赤くなる。
思わず‘君が好きだ’なんて漏らしそうになったけどグッと堪える。
ここは慎重且つ素直に……。


「ほ、星とか……。」


辿々しく弱い声を漏らせば、彼女はまるでシリウスの様にニコリと満面の笑みを浮かべる。


「かわらないんだな。」


ポツリと漏らした声に聞き返そうとしたけど彼女の声に遮られる。


「今なら、、、丁度、有名な夏の大三角形が見られるんじゃ無いか?解説してよ。一緒に見に行こう!」
「日付はそうだな……。夏休みに入って学校で会えた日なんかどうだ?」


淡々と紡がれ決まっていく予定に茫然としていると彼女の小さな顔が耳に近付く。
彼女は小さな声でとんでもないことを囁く。


「会ってくれるだろう?私のストーカー。」


囁き身体を離し彼女は小指同士を絡ませる。


「約束、な?」


見上げる顔の周りにチカチカと小さな星が舞う。
まるで頭を殴られた様な衝撃に襲われ、一瞬彼女と小さな女の子が重なって見えた。
ギュウッと目を閉じ見開く様に目を開くとその影は消えていた。
僕は少しでも離したくなくてキュッと小指に力を込め、僕らはとってもあやふやで確かな約束を結んだ。

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