満員電車

あまねゆたか

11.しげる、つよし、ゆかり(2)

この二人は、私のことに非常に興味を持っている。一番は私が光っていたことだが、先ほどの私の不用意な一言で別な疑問も湧いてきたようだ。

しげるは、二人の考えていることが全て分かってしまった。

このまま中途半端な説明をしてもこの二人は納得しないだろう・・・。

つよしの疑問はどんどん大きくなっていった。

このおやじはなんなんだ?なんで俺たちが追いかけているのが分かったんだ?

ゆかりも同じような疑問がわき上がっていた。

二入はとにかく、しげるの説明を聞かなければ納得できないというように見える。

しげるはもう一度考えをまとめようとした。

最後の手段を使ったときのリスクとヘタな説明を行って拗らせるリスク・・・。

どっちもどっちだが、この二人なら最後の手段を使っても大丈夫なんじゃないか。

つながっている感じはそうしげるに伝えていた。

「何とか言ったらどうなんだ。」

つよしは、黙っているしげるに苛立ち掴みかかろうとしている。

使おう。

しげるは最後の手段を使おうと決意した。

「うっ。」

「えっ。」

突然つよしとゆかりが頭を抱えてうめきだした。

「なんだよ、これは・・・。」

「なに。なによ・・・。」

二人は頭を抑えて苦しんでいる。

「うわ、うわ、・・・・。やめてくれ。」

「あぁ。もうやめて・・・。」

約1分ほど頭を抱えていた二人は突然力が抜けたように座り込んだ。

駅の出口付近で座り込む・・・。通勤客でいっぱいの駅では迷惑だ。不思議そうにチラ見はするが三人を避けて人の流れができていく。

「解ったかい。」

しげるが二人に向かって口を開いた。

すると、二人ははっと我に返り慌てて立ち上がり同時に口を開いた。

「今のはなに。」

「今のはなによ。」

「君たちはもう理解したはずだが。違うかい?」

しげるの最後の手段・・・。

テレパスとしての能力なのであるが、相手の考えていることが分かるだけではなく、自分の考えていることを相手に伝えることができるのだ。

この二人とのようにチャンネルがピッタリ合っていないと難しいのだが、使われた相手は短時間でしげるの考えていることが理解できてしまう。

「そんなことが・・・あるんだな。」

「そうだよ。君たちが理解したとおりだ。」

「本当・・・なんですか?」

「本当だよ。もう理解できただろ?」

「俺たちも、こんな能力が・・・。」

「もしかしたら、同じ能力が芽生えるかもしれないね。だから、あまり使いたくなかったんだけど、君たちがあまり、しつこいから・・・。」

「あたし、こんな能力いらない。気持ち悪い・・・。」

「能力者になるかならないかは五分五分だと思う。だいたい、3日くらいで結果が分かるだろう。」

「なっちゃったらどうすれば良いんですか。」

「力をコントロールしないと神経が参っちゃうんで、私に連絡を下さい。コントロールの仕方を練習しましょう。」

しげるはまだ、すこし呆然としている二人に名刺を渡した。

「この番号に電話してくれれば、私か仲間と必ず連絡がつくようになってます。」

名刺には「超能力科学研究室」とだけ入っている。電話番号は都内だ。所在地も名前も入っていない。

「私の名前はもう分かっているよね。その名前で呼んで下さい。」

「私たちの名前も分かっているの?」

「そうです、あなたも理解できたでしょ?この能力はそういうものなのです。」

「あぁ・・・ どうしよう。」

「とりあえず、今日は会社に行くか。疑問も解けたし、よけいなおまけはついてきたけど、結果が分かるまで時間がかかるんじゃしょうがない。」

つよしは、案外順応が早そうだ。

「簡単に言うわね・・・。私は、どうしたらいいか・・・。」

「混乱しているなら、仕事はお休みになったらどうですか。私が言うことではないかもしれませんが。」

「そうね、今日は帰ってゆっくり考えた方がよさそうね。」

「あたしはゆかり。このおじさんのことは解ったけど、あなたのことは分からないんで名乗らなきゃね。」

「俺はつよし。俺も名刺を渡すよ。会社のだけど。」

二人は何となく変な感じだと思いながら名刺交換をした。

「それでは、私は仕事に行かなきゃならないんでこれで。何かあったら連絡をして下さい。」

「ああ。分かった。多分連絡することになると思うけど。」

「それじゃ・・・。」

三人は別れてそれぞれの方向に歩み始めた。

朝のラッシュはまだ続いている。三人がいなくなった駅の入り口は何もなかったように人を飲み込み、吐き出し続けている。

多くの人にとっては普通の一日の始まりだが三人にとっては転機となる日の始まりであった。満員電車で一緒になったばかりに・・・。

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