消えない思い
第151話 フランス・パリ生活スタート
僕には泣き暮らす時間などなかった。
一刻も早く、先輩の元を離れなくては!
そう言う思いだけがグルグルと回っていた。
僕の今までのラインIDは先輩に知られているので、
僕は日本での思い出を消すようにラインのIDを変えた。
携帯の解約もやった。
学校は疎か、青木君や奥野さんにも何も告げなかった。
こうして僕は一つ一つ先輩との繋がりを消していった。
僕はとりあえず詰め込めるだけ私用のものを詰め込み、
トランク一つで日本から飛び立った。
フランスへは、お母さんが一緒に来てくれた。
それはとても心強かった。
お父さんも行くと言ってきかなかったけど、
どうしてもスケジュールの調整が出来ず、
泣く泣く諦めた。
でも出かけに、毎日ラインで顔を見て話すよう義務付けられた。
そして僕は、フランスの地に降り立った。
空港に着くと、小さい頃お母さんが良く遊んであげてたと言う、
お世話になる遠縁の家族の息子さんが迎えに来てくれていた。
「優く~ん! こっちだよ!」
そう言って手を振っている青年がいる事に気付いた。
彼は帽子を少し深めにかぶり、
サングラスをしていた。
僕は見つけるには分かりにくい、
変なカッコウだな~と思ったけど、
お母さんは直ぐに分かったようで、再会を喜んだ。
「ポール! 久しぶりだね~」
「今日は司兄は来てないんでしょう?」
「もう、来るってうるさかったんだけど、
どうしてもスケジュールがね~」
お母さんがそう言うと、
「ハハハ、何だか司兄の姿が目に浮かぶよ」
と、お父さんの事も良く知っているようだった。
「で? こっちが要君?!」
「あ、要です。初めまして。
これからお世話になります。
宜しくお願いします」
そう言って緊張気味に僕は挨拶をした。
息子さんの名前はポールと言って,24歳になるまだ若い青年だった。
彼は大口を開けて笑って、
僕の頭をグリグリしながら、
「大きくなったな~
前に会った時は生まれたばかりだったのに~」
と言った事にはびっくりした。
「え? 僕、赤ちゃんの時フランスに来たことあるの?
あ、それともポールが日本へ遊びに来た?」
ポールは?????と言う様な顔をして、
「あれ? 聞いてない?
要君はここで生まれたんだよ?」
と教えてくれた。
「え~ 聞いて無いです!
僕、フランスで生まれたの?」
お母さんに尋ねると、
「あれ? 言って無かったっけ?
僕、卒業前で妊娠が分かって、
卒業後、人目を避けるようにして
フランスで要を生んだんだよ~」
と初めてその事を聞かされた。
「初耳だよ!
そうか~
そうだったのか~
僕、フランスで生まれたのか~」
僕が感心していると、
「荷物それだけ?」
とポールが尋ねた。
「あ、うん。
とりあえず、今必要な物をトランク一個分詰められるだけ詰めて
持ってきちゃった。
後は冬になるし、こっちで買えばいいかと思って」
そう言うと、彼は僕のスーツケースを
「持ってあげるよ」
と僕の手から取ると、
「車はこっちだよ」
と駐車場へと歩き出した。
「パリは久しぶりだけど、
この辺はあんまり変わってないね~」
「そりゃ~ 毎年来てればそんなに変わらないよ!
でも、要君が生まれた時から比べれば
大分開けたでしょう?」
「そんな大昔の事覚えて無いよ~」
って、お母さん、あなた今幾つ? と突っ込みそうになった。
空港敷地内から出ると、
飛行機の中から見た様に、
大きな農場が広がっていた。
でも、直ぐに都心と言う様な街中に入った。
ポールの家は空港からそう遠くはなく、
16区という地域にあるアパートにあった。
「ウワ~ 凄い地域ですね~
アパートもフランスって感じで!」
「な? 凄いだろ?
僕も妊娠中の半分はここで過ごしたかな~」
そうお母さんが言うと、
「だったよね?
もう司兄が凄かったよね。
日本とフランスを行ったり来たりして……
帰る時なんか大泣きでさ~」
とポールもお父さんの思い出を教えてくれた。
それがお父さんらしくって凄く可笑しかった。
「良く覚えてるよね~
ポールまだ小さかったよね?」
「え~ あの時で6歳位だったから覚えてるよ~
でも要君、あの頃の優君にそっくりだよね?」
ポールがそう言うとお母さんが、
「似てる?」
と尋ね返した。
「うん、似てる、似てる!
要君の方が少し色が濃くてふわっとした感じだけど、
司兄とは似ても似つかないよね?」
僕はうんうんと頷きながら聞いていた。
でもフッと、
「ねえ、お母さんはポールの家と何か繋がりがあるの?」
と少しの疑問が出来た。
遠い親戚とは聞いていたけど、
詳細はまだ聞いて無かった。
「あ~ そうだね、要にはまだ何も話してないよね。
ポールのお祖母ちゃんが赤城のお祖父ちゃんの従妹なんだよ」
僕は頭の中で家系図を描いてみた。
でも、何だかこんがらがって来たので、
後で紙に書きだそうと思った。
「じゃあ僕ってポールとも血が繋がってるんだ~」
「遠いけどそうだね、僕は赤の他人なんだけど」
お母さんがそう言うと、ポールも、
「優君もちゃんと僕のお兄ちゃん、ん? お姉ちゃん?」
と言って、お母さんに頭を叩かれながら、
「ありがとう、でもお兄ちゃんで!」
と返していた。
「日本とフランスだからあまり家族としての交流は無かったんだよね~
でも講演でフランスに来たときは良く立ち寄ってたんだよ。
司君も僕に便乗したときは必ず寄ってたし……
多分、日本に居る親族では僕達が一番会ってるんじゃないかな?」
この家族は、お母さんが僕を出産する時にホームステイをしていた家族で、
お母さんの妊娠が分かった時に、
お父さんがお祖父ちゃんに頼んで連れてきてもらったところらしかった。
ポールのお祖母さんは日本に商用で来ていたフランス人と恋に落ちて、
フランスに来たようだった。
ポールの家族は皆αだけど、
第2次性については、偏見は無さそうだった。
まあ、お母さんを隠して守ってくれたことを考えると、
直ぐに分かる事だった。
ポールは凄く気さくな人で、
日本語が流暢に話せて、
日本人クオーター?なせいか、
サングラスで顔を隠していても、
日本離れした顔つきだと分かる
スラッとした長身の青年だった。
後に素の顔を見たけど、日本人の血が混じってるとは、
言わなければ分からないほどだ。
どちらかというと、目が覚めるような美形だった。
でもやはり血の所為か、
お父さんにどこか似ていて、お父さんがが外国人顔になって、
もっとシュッとしような顔だった。
それを考えると、少しおかしかった。
ポールは照れながらこっそりと、
お母さんには言わないでねと念を押した上で、
実は、僕のお母さんが初恋だと教えてくれた。
それを聞いて、なるほど~と思った。
そして矢野先輩を思い出した。
矢野先輩はお母さんが初恋では無かったけど、
そんな所や、雰囲気が矢野先輩みたいで、凄く親近感が持てた。
後にポールは、僕にとってフランスでの
矢野先輩の様なお兄ちゃんの存在となった。
車がス~ッと止まると、
「はい、僕のお姫様方、
懐かしの我が家に着きましたよ~」
そう言ってポールは車のドアを開けると、
アパートの中へと案内してくれた。
ポールの家のアパートは、
東京にある僕の家とどこか感じが似ていた。
フランス・パリは日本・東京とは違うけど、
僕はここが好きになれそうだった。
その日の夜に荷物を解くと、
スーツケースの中から一つの写真盾を取り出した。
「良かった。割れてない」
そう呟いて、自分の机の上に置いた。
お母さんの滞在は凄く短く、
秋のコンサートが入っていたので
練習がそうも休めず、
次の日には日本へと帰って行った。
帰り際に、
「ねえ、要……?」
「ん?」
「……ううん、やっぱりいいや。
何時でも覚えておいてね。
僕も、司君も、何時でも要の味方だからね」
と、何かを言いたそうにしていたけど、
グッと言葉を飲んで、
前に聞いた事のあるセリフを言うだけにとどめた。
お母さんが帰ってしまうと、
急に寂しくなり、
先輩と離れてしまった現実が急激に訪れて、
その夜僕は先輩と別れて初めて泣いた。
一刻も早く、先輩の元を離れなくては!
そう言う思いだけがグルグルと回っていた。
僕の今までのラインIDは先輩に知られているので、
僕は日本での思い出を消すようにラインのIDを変えた。
携帯の解約もやった。
学校は疎か、青木君や奥野さんにも何も告げなかった。
こうして僕は一つ一つ先輩との繋がりを消していった。
僕はとりあえず詰め込めるだけ私用のものを詰め込み、
トランク一つで日本から飛び立った。
フランスへは、お母さんが一緒に来てくれた。
それはとても心強かった。
お父さんも行くと言ってきかなかったけど、
どうしてもスケジュールの調整が出来ず、
泣く泣く諦めた。
でも出かけに、毎日ラインで顔を見て話すよう義務付けられた。
そして僕は、フランスの地に降り立った。
空港に着くと、小さい頃お母さんが良く遊んであげてたと言う、
お世話になる遠縁の家族の息子さんが迎えに来てくれていた。
「優く~ん! こっちだよ!」
そう言って手を振っている青年がいる事に気付いた。
彼は帽子を少し深めにかぶり、
サングラスをしていた。
僕は見つけるには分かりにくい、
変なカッコウだな~と思ったけど、
お母さんは直ぐに分かったようで、再会を喜んだ。
「ポール! 久しぶりだね~」
「今日は司兄は来てないんでしょう?」
「もう、来るってうるさかったんだけど、
どうしてもスケジュールがね~」
お母さんがそう言うと、
「ハハハ、何だか司兄の姿が目に浮かぶよ」
と、お父さんの事も良く知っているようだった。
「で? こっちが要君?!」
「あ、要です。初めまして。
これからお世話になります。
宜しくお願いします」
そう言って緊張気味に僕は挨拶をした。
息子さんの名前はポールと言って,24歳になるまだ若い青年だった。
彼は大口を開けて笑って、
僕の頭をグリグリしながら、
「大きくなったな~
前に会った時は生まれたばかりだったのに~」
と言った事にはびっくりした。
「え? 僕、赤ちゃんの時フランスに来たことあるの?
あ、それともポールが日本へ遊びに来た?」
ポールは?????と言う様な顔をして、
「あれ? 聞いてない?
要君はここで生まれたんだよ?」
と教えてくれた。
「え~ 聞いて無いです!
僕、フランスで生まれたの?」
お母さんに尋ねると、
「あれ? 言って無かったっけ?
僕、卒業前で妊娠が分かって、
卒業後、人目を避けるようにして
フランスで要を生んだんだよ~」
と初めてその事を聞かされた。
「初耳だよ!
そうか~
そうだったのか~
僕、フランスで生まれたのか~」
僕が感心していると、
「荷物それだけ?」
とポールが尋ねた。
「あ、うん。
とりあえず、今必要な物をトランク一個分詰められるだけ詰めて
持ってきちゃった。
後は冬になるし、こっちで買えばいいかと思って」
そう言うと、彼は僕のスーツケースを
「持ってあげるよ」
と僕の手から取ると、
「車はこっちだよ」
と駐車場へと歩き出した。
「パリは久しぶりだけど、
この辺はあんまり変わってないね~」
「そりゃ~ 毎年来てればそんなに変わらないよ!
でも、要君が生まれた時から比べれば
大分開けたでしょう?」
「そんな大昔の事覚えて無いよ~」
って、お母さん、あなた今幾つ? と突っ込みそうになった。
空港敷地内から出ると、
飛行機の中から見た様に、
大きな農場が広がっていた。
でも、直ぐに都心と言う様な街中に入った。
ポールの家は空港からそう遠くはなく、
16区という地域にあるアパートにあった。
「ウワ~ 凄い地域ですね~
アパートもフランスって感じで!」
「な? 凄いだろ?
僕も妊娠中の半分はここで過ごしたかな~」
そうお母さんが言うと、
「だったよね?
もう司兄が凄かったよね。
日本とフランスを行ったり来たりして……
帰る時なんか大泣きでさ~」
とポールもお父さんの思い出を教えてくれた。
それがお父さんらしくって凄く可笑しかった。
「良く覚えてるよね~
ポールまだ小さかったよね?」
「え~ あの時で6歳位だったから覚えてるよ~
でも要君、あの頃の優君にそっくりだよね?」
ポールがそう言うとお母さんが、
「似てる?」
と尋ね返した。
「うん、似てる、似てる!
要君の方が少し色が濃くてふわっとした感じだけど、
司兄とは似ても似つかないよね?」
僕はうんうんと頷きながら聞いていた。
でもフッと、
「ねえ、お母さんはポールの家と何か繋がりがあるの?」
と少しの疑問が出来た。
遠い親戚とは聞いていたけど、
詳細はまだ聞いて無かった。
「あ~ そうだね、要にはまだ何も話してないよね。
ポールのお祖母ちゃんが赤城のお祖父ちゃんの従妹なんだよ」
僕は頭の中で家系図を描いてみた。
でも、何だかこんがらがって来たので、
後で紙に書きだそうと思った。
「じゃあ僕ってポールとも血が繋がってるんだ~」
「遠いけどそうだね、僕は赤の他人なんだけど」
お母さんがそう言うと、ポールも、
「優君もちゃんと僕のお兄ちゃん、ん? お姉ちゃん?」
と言って、お母さんに頭を叩かれながら、
「ありがとう、でもお兄ちゃんで!」
と返していた。
「日本とフランスだからあまり家族としての交流は無かったんだよね~
でも講演でフランスに来たときは良く立ち寄ってたんだよ。
司君も僕に便乗したときは必ず寄ってたし……
多分、日本に居る親族では僕達が一番会ってるんじゃないかな?」
この家族は、お母さんが僕を出産する時にホームステイをしていた家族で、
お母さんの妊娠が分かった時に、
お父さんがお祖父ちゃんに頼んで連れてきてもらったところらしかった。
ポールのお祖母さんは日本に商用で来ていたフランス人と恋に落ちて、
フランスに来たようだった。
ポールの家族は皆αだけど、
第2次性については、偏見は無さそうだった。
まあ、お母さんを隠して守ってくれたことを考えると、
直ぐに分かる事だった。
ポールは凄く気さくな人で、
日本語が流暢に話せて、
日本人クオーター?なせいか、
サングラスで顔を隠していても、
日本離れした顔つきだと分かる
スラッとした長身の青年だった。
後に素の顔を見たけど、日本人の血が混じってるとは、
言わなければ分からないほどだ。
どちらかというと、目が覚めるような美形だった。
でもやはり血の所為か、
お父さんにどこか似ていて、お父さんがが外国人顔になって、
もっとシュッとしような顔だった。
それを考えると、少しおかしかった。
ポールは照れながらこっそりと、
お母さんには言わないでねと念を押した上で、
実は、僕のお母さんが初恋だと教えてくれた。
それを聞いて、なるほど~と思った。
そして矢野先輩を思い出した。
矢野先輩はお母さんが初恋では無かったけど、
そんな所や、雰囲気が矢野先輩みたいで、凄く親近感が持てた。
後にポールは、僕にとってフランスでの
矢野先輩の様なお兄ちゃんの存在となった。
車がス~ッと止まると、
「はい、僕のお姫様方、
懐かしの我が家に着きましたよ~」
そう言ってポールは車のドアを開けると、
アパートの中へと案内してくれた。
ポールの家のアパートは、
東京にある僕の家とどこか感じが似ていた。
フランス・パリは日本・東京とは違うけど、
僕はここが好きになれそうだった。
その日の夜に荷物を解くと、
スーツケースの中から一つの写真盾を取り出した。
「良かった。割れてない」
そう呟いて、自分の机の上に置いた。
お母さんの滞在は凄く短く、
秋のコンサートが入っていたので
練習がそうも休めず、
次の日には日本へと帰って行った。
帰り際に、
「ねえ、要……?」
「ん?」
「……ううん、やっぱりいいや。
何時でも覚えておいてね。
僕も、司君も、何時でも要の味方だからね」
と、何かを言いたそうにしていたけど、
グッと言葉を飲んで、
前に聞いた事のあるセリフを言うだけにとどめた。
お母さんが帰ってしまうと、
急に寂しくなり、
先輩と離れてしまった現実が急激に訪れて、
その夜僕は先輩と別れて初めて泣いた。
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