異世界行ったら従者が最強すぎて無双できない。

カザミドリ

皇帝襲来

さて、船を手入れシーサーペントを退治するため海に出たのだが。


「以外に遠いな」


 渡された地図を見ながら船の行く手を見る。


「他に船も居ませんね」


「そりゃあ、封鎖されてるからな」


 現在はこの海域では侵入を禁止されている、そのため俺達以外に船は見当たらない。


「このままだと着くのは夜になるな」


 時刻は既に日暮れ、太陽が沈み始めていた。


「今日はここで停まって、明日シーサーペントの棲みかに突撃しよう」


『はい!』


 船を停め一晩を明かす、食事の心配をしたが十分な食料はちゃんと積まれていた、さすがクロノ抜かりないな。


 明くる日、日の出と共に動きシーサーペントを探す。


「この辺りのはずだが」


 地図と現在地を照らし合わせて間違いない事を確認していると。


「っ!艦長、ソナーに反応有り、二時の方向です!」


 突然メロウがそれっぽい事を言い始める。


「え?あ、そういう感じでやるの?」


「艦長、目視にて確認しました、どうやら敵はまだこちらには気づいていないようです」


 目視って、俺には水平線しか見えないんだが、望遠鏡もないのによく見えるな。


「よし、シーサーペントの右……右舷から周り込む」


「了解、面舵一杯」


 クロノが舵を切る、な、なんとなく言い直したけど有ってるよね?


「むっ、艦長敵に気づかれました」


「え?」


 先ほどクロノが目視した方を見るとシーサーペントが近づいてきていた。


「って、早!?回避を!」


 慌てて指示を出すが。


「いえ、その必要はありません」


ガイン!


 シーサーペントが船に当たる前に何かに阻まれる。


「こんな事もあろうかと、魔法障壁を張っています」


 急にファンタジー混ぜてきたな。


「フェン、エニ攻撃を」


『………』


 あれ?聞こえてるはずなんだが……。


「………主砲用意」


「あいあいさー」


「ん、目標、敵、シーサーペント」


 二人もやりたかったのね。


「目標捕捉第一射………うてー!」


 ドォーンという腹に響く音を出しながら、シーサーペントに砲撃が命中する。


『キシャァァー』


 どうやら効いているらしい、シーサーペントが威嚇する。


「誤差修正、第二射………うてー!」


 そのあとも砲撃は続き、シーサーペントはとうとう逃げ出した。


「ほっほっほ、逃がしませんぞ?」


 クロノが再び舵を切ると、何故か座席からシートベルトが出てきて固定される。


「これは?」


「ほっほっほ、飛ばしますぞ!」


 一気に急加速、海の竜シーサーペントに追い付く勢いで戦艦進む。


「いい加減非常識だな」


「いえいえ、まだまだです」


 これ以上あるのか?


「フェン、あれを」


「了解、ターゲットスコープオープン」


 フェンが出てきた銃の様なものを手に持つと、船首が二つに割れた。


「ちょっと待って、あれ知ってる、あれ宇宙に居る戦艦のやつだよね!?」


「シーサーペント距離七十」


「ターゲット捕捉」


「総員対ショック用意」


 俺のツッコミはスルーされ、粛々と準備が進む。


「発射五秒前………四、三、二、一、発射!」


 船首が一瞬光、光線が発射される。


「うわぁ……」


 まんま実写版みたいなやつ。


「敵沈黙を確認しました」


「あれで生きてたら奇跡だよ」


 惑星を破壊するミサイルを相殺する位だもんな。


「跡形もないな」


「はい、蒸発しました」


「とりあえず近づいて見てくれ」


 船をシーサーペントが居た所まで移動させ甲板に出る。


「何か討伐の証明になるものは無いか?」


「あ、タクト様!尻尾だけ残ってました!」


「どれ……尻尾も結構でかいな」


「では、牽引して行きましょう」


 尻尾にフックを着けて、船で引きながら港に帰る、ちなみに着いた頃にはポロポロだった。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 港に着くと直ぐに騒ぎになった。


「お、お前ら本当にシーサーペントを倒したのか!?」


「ええ、まぁ、これが証拠です」


 吊り上げた尻尾を見せながら、船大工に言うと。


「ま、待ってろ直ぐに姫様を呼んでくる!」


 ドタドタと駆けていく船大工を見送り、数分後。


「あらまぁ、本当に討伐されたんですねぇ」


「ぎょー、これは見事ですな」


 港に来たウェティアさん達が見上げながら言う。


「尻尾しか残らなかったんだけど、解るのか?」


「はいぃ、これは間違いなくシーサーペントの尻尾ですぅ」


「確かに、こんなに大きな尻尾は他に有りますまい」


 おぉ、と言う周りからどよめきが起きる。


「で、では姫様」


「はいぃ、シーサーペント、クラーケンの二体が倒されましたぁ、これにより我が国マーメティアの未曾有の危機は去った事をぉ、ここに宣言しますぅ」


 今度はわぁ!っと言う歓声が起き、たちまち街中に広がる。


「タクト様ぁ、なんと御礼を言って良いやらぁ」


「いえ、魔王軍との事協力していただければ、十分です」


「はいぃ、勿論協力させて頂きますぅ」


 承諾を受け、これからについて話し合いをと思った矢先。


「女王陛下ー!」


 城の方から兵士が一人慌てて走って来た。


「どうしましたぁ?」


「は、はい、今帝国から連絡が有り、これから皇帝陛下が来られると!」


 帝国の皇帝が?何かあったのか……。


「あらぁ、やっぱりぃ待てませんでしたかぁ」


「待てなかった?」


「申し訳ありません、御手数ですがぁお城まで来ていただけますかぁ?」


「それは構いませんが、皇帝は急ぎの用では?」


「いえぇ、恐らく皆様にぃ関係のあることなのでぇ」


 俺達に関係?首をかしげつつウェティアさんについていく。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 城で待つこと一時間程。


「よぉ、勇者会いたかったぜ」


 深紅の髪を棚引かせやって来たのはレバイア帝国皇帝グラン・レバイア。


「お久しぶりですグラン皇帝」


「あー、固っ苦しい挨拶は無しだ、本題に入らせてもらうぜ?」


 物々しい雰囲気を出す皇帝の言葉に、息を飲みながら耳を傾ける。


「………何で来ない」


「え?」


「何で帝国に一番に来ない!?同じ人族だ、普通は最初に帝国に来るだろ!」


 えー、何か怒ってらっしゃる。


「いえ、特に順番は考えた訳ではなく、強いて言うなら、帝国って何か近寄りがたいイメージが……」


 あくまでも個人的な意見だが、帝国って怖そうなイメージがある。


「な、何ぃ!?よーしわかった、なら俺が直々に帝国を案内してやる」


 またこのパターンか、行く先々で国王にしか案内して貰ってないぞ。


「そうと決まれば、行くぞ!」


「えー、今からですか?」


 もう少しゆっくりしたいと言うか、マーメティアの観光をしたいのだが。


「安心しろ、帝国の飛竜なら一っ飛びだ」


 そう言ってグラン皇帝に連れて来られたのは、四匹の飛竜が待つ城の広場。


「じゃあなウェティア、世話になった」


「はいぃ、タクト様もまた来てくださいぃ」


「あ、はい、ってやっぱりこのまま帝国に行くんですね」


「当然だ」


 そのまま四匹の飛竜の持つ篭に乗せられる。


「あの、これめっちゃ怖いんですけど……」


 篭を支えるのは四匹の飛竜のみ、篭の四隅にロープが通され、それを飛竜が足で持って飛ぶのだが、安全のためのフェンスなど勿論ない。


「平気だ、うちの飛竜を信じろ」


「えー……」


 今までクロノ達の作った安全な乗り物に乗ってきた為か、かなり不安である。


「よし、行くぞ」


 そう言ってグラン皇帝が合図を出すと。


『キュイィー』


 一斉に羽ばたく飛竜達。


「うわぁ、すごい揺れる……」


「タクト様、しっかり御掴まり下さい」


 篭の枠に掴まりながら下を見ていると。


「余り身体を出すなよ、落ちるぞ?」


 慌てて篭の中に戻る、やっぱり危ないな。


「………これ何れくらいで帝国に着くんですか?」


「うーん、まぁ、夕方には着くだろ」


「えー……」


 現在は朝、要するに半日はこの状態って事か。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 日が沈み始めた頃、ようやく着いた帝国は。


「おー……」


「どうだ夕陽に染まる帝都は?」


「綺麗ですねぇ」


 オレンジに染まる帝都はとても美しく、芸術と言って良いものだった。


「さぁ、降りるぞ」


 グラン皇帝は飛竜を帝都の少し前、街道に降ろし始めた。


「え?このまま城に行くのでは?」


「悪いが直接城に行く事はできない、街門で出入りのチェックをしなきゃならないからな」


 以外に警備がしっかりしている。篭を降りてグラン皇帝の案内で帝都の中へ。


「皇帝陛下!」


「おうご苦労さん、こいつらは俺の客人だ、入場の手続きを頼む」


「はっ!直ちに!」


 入場するために書類を書いたり、水晶型の魔法具に手を置いたり、札を貰ったりした。


「この札は?」


「それは一時滞在用の札だ、失くすなよ?」


「一時滞在?」


「ああ、それは一定期間しか帝都に居れない、必要なやつは役場に行って期間を伸ばしたり、住民登録したりだな」


 おお、ちゃんと国としている、いや、他の国も実はそうで、俺達が正規の手順を踏んでないのか?


「所で、これから何処へ?」


「城だ」


「できれば先に宿を取りたいんですけど?」


「なら、城に泊まれ部屋を用意させる」


 えー、城の宿泊率の高さ。王国、獣王国、帝国の三つで城宿泊、海洋国は船での宿泊だったけど。


「普通の宿をお願いしたいんですけど……」


「無理だな、とてもじゃねぇが、今話題の勇者様御一行を泊められる様な宿は無い」


 その話題が気になるのだが。


「安宿でも気にしないですけど?」


「お前達が気にしなくても周りが気にするんだよ、お前達を安宿に泊めたら、それこそ国の面子が潰れる」


「そういうものですか」


「そういうものだ」


 グラン皇帝に連れられ、都を歩いて程なく城に着いた。


 入り口では、グラン皇帝が「ご苦労」と言うだけで素通りできた、さすが皇帝顔パスだ。


「………気のせいですかね?地下に行ってません」


「ああ、地下にある宝物庫に向かっている」


 闘技場、食堂に続いて次は宝物庫か。


「えっと、なぜ?」


「見てもらいたいものがある」


 グラン皇帝が案内した先には。


「ん?あれって」


 どうにも見たことのある一本の剣。


「メロウ」


「はい」


 普段メロウの空間魔法に保管している剣を出してもらう。


「………似てる」


 見比べて見ると細部は違うが大間かな形状は同じに見える。


「ほう、これは懐かしい」


「やっぱりか、クロノこの剣はお前が?」


「はい、何れ程前でしょうか、曾て私がとある若者に造ったものです」


 懐かしむ表情で剣を見つめるクロノ。


「や、やはり貴方様は刀匠神サイクロプス様でしたか!?」


「ほっほっほ、神等と私程度がおこがましいですな」


 膝間付くグラン皇帝と穏やかに笑うクロノ、ここはクロノに所縁のある地のようだ。



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