異世界行ったら従者が最強すぎて無双できない。

カザミドリ

船の完成

マーメティア王国の城に着いた俺達は、謁見の間ではなく、王族用の食堂に案内された。


「ここで良いのか?」


「はいぃ、ちょうどお昼時ですしぃ」


 確かに時刻はいい時間になっていたが。


「それでも王族用の豪華なテーブルを使って良いのか?」


「構いませんよぉ、みんなで食べたほうが美味しいですからぁ」


 まぁ、本人が良いと言っているのだから、お言葉に甘えよう。


「さぁ、ごはんにしましょうぅ」


 ウェティアの言葉と共に料理が運ばれて来るのだが。


「わぁ、美味しそうですね!」


「そ、そうだな……」


 フェンの言う通り美味しそうでは有るんだが。


「これ、食べて平気か?」


「おやぁ、魚介料理はお嫌いですかぁ?」


 そう、出されたのは魚介なのだ、いや、嫌いでは無いんだが……。


「いや、なんと言うか………」


 魚人や人魚の前で魚は食いずらい。


「うーん!やっぱりぃ鯛はお刺身に限りますぅ」


「今日の鯛は若くて身がぷりぷりですからな」


 じいや(鯛型魚人)の前で鯛の刺身は食いずらい。


「わたくしもいつか刺身になりたい物ですな」


「もうぅ、じいやはぁ、刺身じゃなく鯛飯が限度でしょうぅ」


 食いずらい。後冗談だよね?この刺身魚人じゃないよね?ウェティアさん目が笑って無いのは気のせいだよね?


「美味しそうですね!タクト様!」


 あ、フェンに言うの忘れてた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 この上無いほど食いずらい食事を何とか飲み込み、改めて支援について話を始める。ちなみに刺身は絶品でした。


「………なるほどぉ、お話はわかりましたぁ」


 俺の考えと今後の方針を聞き終えたウェティアさんは、微笑みながら答えた。


「是非ぃ海洋国も御助力致しますぅ」


 獣王国に続いて海洋国もすんなり話が進むかと思ったのだか。


「と、本来なら言いたいのですがぁ」


「現在我が国も危機に瀕しているのです」


 ウェティアさんとじいやが申し訳ない顔をする。


「何があったんですか?」


 解決できるかはともかく、話だけでも聞いてみる。


「実は我が国は数十年に一度の危機的状況に瀕しています」


「本来はぁ重なること無いぃ災害級の魔物の復活がぁ、重なってしまったんですぅ」


 そりゃまた不幸な、でも魔物なら俺達でもどうにか出来そうだな。


「災害級の魔物ってどんなのだ?」


「はい、南のクラーケンと東のシーサーペントです」


 ん?クラーケン?それ知ってる。


「あの、クラーケンってひょっとして、獣王国との間に居る?」


「はいぃ、ご存じですたかぁ」


「皆様が襲われず良かったですな、あの海域では既に何隻も沈められています」


 ん?ひょっとして知らないのか?


「クラーケンなら襲われたぞ」


「あらぁそうでしたかぁ、ご無事で何よりですぅ」


 襲われたが奇跡的に助かったと思われている。


「………メロウお土産を出してくれ」


「畏まりました」


 メロウにお願いして例の物を出してもらう。


「お土産ですかぁ、すいませんわざわざぁ」


「ぎょっぎょっぎょ、何ですかな、楽しみでございますな」


「はい、これです」


 取り出したのは言わずもがな、クラーケン焼きである。


「まぁ、美味しそうですねぇ」


「これは、イカ焼きですかな?」


「クラーケンです」


『え?』


 ぽかんとした表情の二人。


「だから、クラーケンです、倒して船の上で食べていました」


「ま、まぁ、勇者様は冗談がお上手でぇ」


「疑うなら港で確認してみてください、船員と乗客にも振る舞いましたので」


「………じいや」


「はっ、直ちに!」


 ウェティアさんが鋭い目付きになり雰囲気が変わる、あれが王の貫禄か?


「少々お待ちください」


 頭を下げてウェティアさんとじいやが席を外す、時間が掛かるらしくお茶を出された。


「ずずず、このお茶美味しいですよ!」


「ん、海の味?」


「こんぶですね」


 出されたのは昆布茶………ではなく、純粋な昆布のだし汁、お茶?


「お待たせしました」


 しばらくしてウェティアさんが帰ってきた。


「こちらの確認不足で申し訳ありません」


 深く頭を下げるウェティアさん。


「では、信じてもらえましたか?」


「はい、深く御礼申し上げます」


 うーん、信じてもらえたのはいいのだが。


「えっと、喋り方戻しません?ちょっと距離を感じると言いますか……」


「ではぁ、御言葉に甘えてぇ」


 ぽわぽわした喋り方に戻るウェティアさん、切り替え早いな。


「あの喋り方はぁ疲れるんですよぉ」


「そ、そうですか」


 やっぱり作った喋り方だったのね。


「つきましてはぁお願いがぁ」


「シーサーペントの退治ですね?」


「はいぃ」


 それは別に構わないのだが。


「引き受けます、その代わり」


「援軍ですねぇ?わかっていますぅ」


 ふむ、それならさっさと行って終わらせよう。


「で、シーサーペントはどの辺りに?」


「今地図を持ってきますぅ」


 直ぐにじいやが地図を持ってくる。 


「シーサーペントはこの海域に居ます」


「海のど真ん中ですね」


「よろしければぁ船を出しますよぉ」


「いえ、恐らくそろそろうちの従者が……」


「タクト様お待たせしました」


 扉からクロノが入ってくる、やっぱりね。


「いや、ベストタイミングだ」


 クロノに早速今までの経緯を話す。


「なるほどシーサーペントですか」


「ああ、さっそく船の出番だ」


「その事なのですが……」


 珍しく歯切れの悪いクロノ。


「どうかしたのか?まさか船はまだ出来てないのか?」


「いえ、船事態は渾身のできでございます」


「あ、そう、じゃあ何があった?」


「実は造船所で騒ぎが有りまして」


 なるほど大体わかった、クロノの渾身のできの船を巡ったトラブルか。


「じいやさん、シーサーペントへの詳しい地図をお願いします、ウェティアさんはすいませんが一緒に造船所に来てください」


「畏まりました」


「はいぃ」


 ひとまずは造船所に行き船を貰ってシーサーペントの居る東の海域か。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 さて、シーサーペント退治のため船を取りに来たのだが。


「頼む!この船を譲ってくれ!」


「えー………」


 そうじゃないかと思ったよ、以前王都でたまたま通りかかった馬車職人に馬車を譲ってくれと言われたことがある、職人にとってクロノの作るものは芸術に映るらしい。


「いや、それは困りますよ、俺達船が必要なんです」


「船ならわしらが新しいのを造る!だからどうか!」


「新しいのって、どれくらいで?」


「………三ヶ月、いや、一ヶ月で!」


「………すいません」


 さすがにそんなには待てない、拒否を聞いて肩を落とす船大工達。
 

「………何故そんなにうちの船を?」


「………あの船があればどんな海域でも進める、それにシーサーペントだって倒せる」


 あぁ、目的は同じか、………クロノはいったいどんな船を造ったんだ?


「それでクロノ船は?」


「裏に用意しています、直ぐにでも出発できます」


 案内されて造船所の裏に行くと。


「………こりゃまた」


 クロノの事だからてっきりクルーズ船を造ると思っていたが。


「まさかの軍艦かよ」


 そこにあったのは軍艦、それも戦艦だった。


「カッコいいですねタクト様!」


「いや、まぁ、カッコいいけど………」


 タイムリーだから良いのだが、何故軍艦?


「これからの事を考え御造り致しました」


 何を想定しているのやら、だが、確かにこれならシーサーペントも狩れるだろう。


「あー、大工さん?安心してくれ俺達もシーサーペントを倒しに行くんだ」


「ほ、本当か!?」


「あぁ」


 頷くと船大工はうつむく。


「………わしらにとって船は子供だ」


「………」


 悲痛な表情で語る船大工の言葉を静かに聞く。


「その子供達が何隻もシーサーペントに沈められた、乗組員も一緒にな」


「そうか」


「だからどうかあいつらの」


「わかった仇は取ろう、約束する」


「頼んだ」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 船の中はまんま戦艦であった。


「ただ、戦艦は戦艦でも宇宙に居るやつじゃね?」


 そう、どちらかと言えば宇宙に居る方のヤマトに見える、艦長席に操舵、レーダーに左右の砲主とそろっていた。


「で、配役は?」


「はっ、タクト様はこちらへ」


「ですよね」


 示されるのは艦長席、座ると割りと景色が高かった。


「私は操舵を担当します」


「では、わたくしはレーダーに」


「ん、じゃあ砲主」


「僕は反対側だね」


 本来なら他にも人が必要なのだが、五人(艦長席には何もないので実質四人)で船を動かすためにクロノが魔改造したらしい。


「では、タクト様合図をお願いします」


「え、俺がやるの!?」


「是非お願いします」


「まぁ、やるけど………そう言えばこの船名前は?」


 出航のため聞いてみたのだが。


「ふむ、名前ですか、考えていませんでした」


 まだ名前はないらしい。


「どんなのがいいかしら?」


「ん、カッコいいのが、いい」


「うーん、じゃあヤマ」


「ストップフェン」


 フェンが最後まで言い切る前に止める、既存のはダメだ。


「………では、タクトでどうでしょう?」


「まんま俺の名前じゃん」


「じゃあじゃあ、戦艦タクトは?」


「あら、良いんじゃないかしら?」


「ん、カッコいい」


「決まりですな」


 戦艦タクト……なんか有りそうだけど、あとまんまは変わらないし、けどもうそれで決定の流れになっているな。


「まぁいいか、では改めて戦艦タクト発進!」


『はい!』


 こうしてシーサーペント退治のため船を動かす。



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