異世界行ったら従者が最強すぎて無双できない。

カザミドリ

幕間 東のギルドの変化(とある職員の追想)

「ふぅ……」


 時は遡りタクト達が西の街ノーブルへ向かっていた頃、東の街イリマ、そのギルドでは連日職員が激務に追われていた。


「お疲れ様」


「ああ、ありがとう」


 同僚にコーヒーを渡しつつ引き継ぎをする。


「で?進捗は?」


「不正をしていた職員の追及と減俸はあらかた終了、今はピンはねしてた冒険者への報酬の捻出にてんてこ舞い……」


「先は長そうね……」


 二人でため息を吐く。


「でも何で突然こんなこと始まったのかしら?」


 突然のギルドの粛正に疑問を持つ職員は少なくない。特にギルドマスターレイツを知るものは。


「それがさ、噂なんだけど……」


 声を潜めつつ彼の言葉に耳を傾ける。


「どうも、うちのギルドマスター王都でヤバい相手に手を出したらしい」


「ヤバい相手?まさか、王族!?」


「いやいや、そんなことしたら今頃ここに居ないよ、どうやら新人冒険者らしいんだけど」


「新人冒険者?ああ、いつもの悪い癖ね」


 レイツは度々気に入った冒険者を自分の手元に置く為に無理な勧誘をする事がある。そのせいで解散した冒険者チームは数知れない。


「それがただの新人じゃあ無かったらしい」


「どうゆう事?」


「………着いていった奴の話じゃあ、例によってレイツさんは、自分の側近にその冒険者の従者を呼び出させたらしい」


「側近ね……」


 側近とはよく言ったもんだ、本当は暗殺部隊の様な物なのに。


「その側近達はその従者をちゃんと連れてきたらしい」


「らしい?」


 歯切れの悪い言葉に引っかかる。


「ああ、部屋の中にはレイツさんと側近だけ入ったんだってさ」


「それで?」


「………出てきたら、ああなってた」


 その言葉にずり落ちる。


「何よ、結局分からないんじゃない!」


「そ、そうだけどさ、でもその冒険者が関わってるのは分かるだろ?何でもその冒険者、異例の速さでSランクになって、ドラゴンを捕獲するくらいらしい、絶対何か秘密があるんだよ!」


「まぁ、そうね……」


 確実にその部屋で何かあったのは事実。しかし、それ以上は分からない。


「俺ちょっとこの件調べてみようと思うんだ」


「………やめておいた方が良いと思うわよ?」


「いや、この件は絶対何かある!きっとすごい秘密が……」


 有ると思うからやめた方が良いと思うのだが。何度止めても彼は止まりませんでした。なので、あの、私は関係ありませんよ?本当です!知っていることは全部話しました!もう何もありません!何も聞いてません!だから、お願いします!ゆるし………。


 そこから先は切り取られて読めなかった。

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