異世界行ったら従者が最強すぎて無双できない。

カザミドリ

ドラゴン退治?

 
 王女様と王妃様の呪病を治すため、王城に来ていた俺達は王様に謁見していた。


「貴様ら!王の御前であるぞ!」


 あっ、そっか、普通膝間ずくんだっけ?


「……よい」


 慌てて膝間ずこうとしたが、それを王様に止められる、兵士は俺達をものすごい睨んでくる。


「………そなたたちが、我が妻と娘を治すと?」


「はい、正確にはこの子が」


 エニを前に出し、紹介しようとしたが。


「はぁ、そうか……」


 なんか、すごい諦め感が漂ってくる。


「では、善きに計らえ」


 そう言って、王様は謁見の間から出ていってしまう。


 俺達は兵士に連れられ城の奥へ。


「何かあんまり期待されて無いですね」


「すまないな、王は疲弊しているのだ、国中の回復魔法を使える人間を集めたが、治せる者が居なかったんだ」


 という事は結構前から呪いで苦しんでいると。


「だから、君たちもあまり気負わないでいい、治せなくとも罰は無いからな」


 兵士もやや諦め気味だ、うーん、エニなら大丈夫だと思うけど。


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 俺達が案内されたのは王妃様のきらびやかな部屋、ではなく、城の奥にある、あまり使われない客人を泊める為の部屋。


「なぜこんな所に?」


「呪病の影響で暴れられる事があるので、隔離しているんだ」


 隔離っていうか、幽閉じゃない?


「ここが王妃様と王女様の居る部屋だ」


 ガチャンと重苦しい鍵の音が響く、違った幽閉じゃなく監禁だった。


「くれぐれも気を付けてくれよ?何かあってもどうする事も出来ないからな」


「はい」


 兵士に返事をして部屋に入る、中はひどい有り様だった、調度品はこわされ、カーテンは引きちぎられていた。


「これはひどいな」


「タクト様、ガラスにお気をつけ下さい」


 中を見渡すと、王妃はベッドに寝かされていたが、王女の姿は無かった。


「………あなた達はだれ?」


 部屋の隅に蹲る少女が一人居た。


「呪病を治しに来た冒険者です」


「近づかないで!」


 側に行こうとすると、王女様にそれを拒否される。


「どうせ、どうせあなた達も治せないわ、いいから出ていって、じゃないといつまで正気を保てるか分からないの」


 うーん、王女様も諦めている感じか、どうしたものか。


「ん、タクト様」


 悩んでいるとエニに袖を引かれる。


「どうした、エニ?」


「治療、終わった」


 エニが指差す方には静かに心地よさそうな寝息をたてる王妃様の姿、どう見ても呪病に苦しめられてはいない。


「もう、終わったのか?早いな」


「ん、えらい?」


「おお、偉いぞ」


 エニの頭を撫でてやる、あー、かわいい。


「な、そんな!」


 王女様は信じられないらしく、慌てて王妃に駆け寄る。


「ほ、本当に治したのですか?」


「はい、正確にはこの子が治したのですが」


 エニを前に出そうとするが動かないので、少し体をずらして王女様に見えやすくする。


「こ、こんな少女が?」


 見た目は少女ですが、中身は伝説の魔獣ですなんて言えない、言いたいけど言えない。


「えっと、王女様にも治療していいですか?」


「え、あ、はい……」


「エニ、頼んだ」


「はい」


 王女の治療も直ぐに終わり、落ち着いた所で事情を話す。


「……そうでしたか、ギルドの依頼で」


「はい、冒険者に登録する時、エニが瀕死の重症を治したのがきっかけで」


「信じられないとは言えませんね、嘘のように身体が軽いのは、今実感してますから」


 どうやら無事に治療出来たようだ、王妃様も王女様も顔色がいい。


「じゃあ、我々は王様に報告して帰りますので」


「でしたら、私もお父様にご報告に行きます」


 王女様を連れて部屋を出る。


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 部屋を出ると、案内をしてくれた兵士に話しかけられる。


「ん?もう終わったのか?」


 王女様が出てくると兵士は驚き固まる。


「ア、アルメル様!?もう御体は宜しいので?」


「はい、彼らのお陰でお母様も今は寝ていますが呪病は解けました、お父様に取り次ぎをお願いできますか?」


「は、はい!」


 王女様に言われると慌てて走り出す兵士。


「では、私達も行きましょうか」


 王女様に連れられ再び謁見の間へ移動する。


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謁見の間に入ると、既に国王様が待っていた。


「お、おぉ!アルメル!!本当にもう良いのか?」


「はいお父様、この通りアルメルは元気になりました」


 抱きしめ合う国王様と王女様を眺めつつしばらく待つ。


「あぁアルメル、最後にお前の元気な顔が見れて良かった……」


 ん?最後?今、最後にって言わなかった?


「お父様、最後とは?」


 どうやら聞き間違いではないらしい、王女様も国王様に聞いている。


「………落ち着いて聞きなさい、今、この王都ルインにドラゴンが近づいている」


「ド、ドラゴンが!?」


 ドラゴンってやっぱりあのドラゴンだよな。


「王都近くの平原で冒険者が足止めをしているが、いつまでもつか……」


 ケインさん達の別件って、ドラゴンだったのか。


「ワシはここを離れるわけにはいかない、お前はお母様をオリヴィアを連れて逃げなさい」


「そんな、お父様!」


「いいから行きなさい!どうか、生き延びてくれ………」


 うーん、どうするかな?これって勝手に行っていいのかな?


「タクト様、ドラゴンを退治に行かれては?」


 ここでタイミングよくクロノが提案を出す。


「ふむ、そうだな」


「できるんですか!?」


「アルメル、バカを言ってはいけない、ドラゴンを退治するなど、人間では不可能だ」


「いいえお父様、この方ならきっとやってくれます!」


 王女様からの期待が凄い、でも、クロノが提案を出すと言うことは、大丈夫なはずだ。


「………よし、ドラゴンのいる場所へ行こう!」


「………分かった、妻と娘を治した君たちだ、掛けてみよう、兵士を案内に付けよう」


 ドラゴン退治、本当に大丈夫だよね?


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 王都から少し離れた平原、そこには赤い鱗に身体が覆われた巨体を持つドラゴンが鎮座していた。


「……どうだ様子は」


「依然寝そべったままだ」


 平原には多くの冒険者と兵士が集まっていた、その中にはこの世界でもトップクラスと言っていい面々もいた。


「神話クラスのクラフトさんと仕事ができるなんてな」


「よせよ、俺はこんな仕事嬉しくないぞ、何て言ったって最後になるかも知れないんだしな」


「……クラフトさんでもですか?」


 朱の鳥、ケインが神妙な面持ちで聞く。


「ああ、あのクラスのレッドドラゴンなんて、本来神話クラスが数人で相手するモノだが、今は俺以外はAランクが最高、最悪も良いところだぜ」


 現状の戦力では、討伐は無理それどころか足留めも長くは持たないだろう。


「ただまぁ、救いなのは昨日から、突然この草原で動かなくなった事だな、見た奴から聞いたんだが、いきなり怯えるように止まったとか、まぁ、見間違いだろう、ドラゴンが怯えるなんて、それこそ魔王か勇者ぐらいだろうからな」


「そ、そうですね」


 ケインはバツが悪そうに答える。


「ん?どうした、顔色が悪いぞ?」


「いえ、ちょっと心当たりが……」


「何だよ、勇者の知り合いでも居るってか?」


「勇者って言うか、何て言うか………」


 ケインが説明に困っていると、それは突如起き上がった。


『グオォォ!!』


 地響きのようなドラゴンの咆哮に冒険者は慌てて立ち上がる。


「くそっ!いよいよ覚悟を決めなきゃなられねぇか!?」


 冒険者が各々命をかける覚悟を決めるが………。


ドオォォン!


 ドラゴンの広げられた片翼が爆発を起こす、その爆発の余波は少し離れた冒険者にも届くほど。


「何だ!何が起きた!?」


「ドラゴンの翼が!?こんな事できるのは……クラフトさん直ぐに下がりましょう!」


「なに!?俺達が逃げたら、街は……」


「いいから!巻き込まれたいんですか!?」


 急いで逃げようとするケインに異を唱えようとするクラフトだが、ケインの必死の叫びに気圧される。


「おい、一体何が有るんだよ?」


 先ほどよりも更に顔色が悪いケインに聞く。


「見てれば分かります、ただもっと離れないと、彼らは周りを気遣うことはしませんから」


「おい、おい、魔王でも居るってか?」


「魔王の方がましかもしれませんよ」


 走りながらケインの話を聞くがにわかには信じられないクラフトであった。


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 王妃と王女の呪病を治し、ドラゴンを倒すため移動中のタクト達。


「ドラゴンって何れくらい強いんだろう?」


「なんだお前ら、ドラゴンの強さも知らずに討伐を引き受けたのか?」


 案内をしてくれている兵士が呆れぎみに言う。


「いいか?ドラゴンは災害に指定されるほど危険なんだ、冒険者の神話クラスが数人でパーティーを組、犠牲を出してやっと倒せるくらいだ」


 おお、勇者が出てくる案件だな。


「クロノ、倒せるのか?」


「造作もないかと」


 おおイケメン、ひょっとしたらクロノ達は勇者以上の力が有るのかも知れない。


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 それからしばらく進み、開けた所が見えてくる。


「もうすぐでドラゴンの居る平原だ」


「ドラゴンって平原に居るんですね」


「ああ、何でもそこに居座ってるらしい」


 なんと迷惑な、と、そんな会話をしていると。


『グオォォ!』


 目指す平原から、何かの唸り声、恐らくドラゴンだろう。


「たかがトカゲ風情が!タクト様に吠えるなど、万死に価する!」


「メロウ!?ちょっと……」


 待て、と言う前に、火の玉が飛んで行くのが見え、直ぐにドォン!と言う腹に響く音が聞こえた。


「ああ、やっちゃった」


 メロウは誇らしげにし、対称的に兵士が青ざめる。


「お前達、ドラゴンに攻撃何て、なんと言うことを……」


 ここからでは木の枝が邪魔でまだドラゴンの姿は見えない、なので今ドラゴンがどうなったかは定かではない。


「クロノ、ドラゴンがどうなったか分かるか?」


「翼は片翼失っていますが、健在です」


 片翼失ってるって、結構な事なんじゃ?


「兵士さん達はここまでで大丈夫です、あとは自力で何とかしますから」


「わ、わかった、では武運を祈る」


 そう言うと、そそくさと帰って行った。


「………軟弱」


 エニが残念な者を見るように言う。


「こらこら、そんな事言ったらダメだよ?」


「タクト様、先に私が様子を見てきましょう」


「あ、僕も行くよ!」


「分かった、クロノ、フェン頼んだ」


 クロノ、フェンを偵察に出したはずが、これが間違いだった。


ズズゥン………。


 クロノ達が様子を見に行ってしばらく、地震のような震動があった。


「なんだ?」


「タクト様お待たせしました、準備が出来ましたのでこちらへどうぞ」


 準備?何の?クロノに着いていくと、平原にドラゴンが居た、伏せの状態で、正確には地面に顔が少しめり込んでいた、そしてケインさん達が整列していた、一体何があったよ。


「えっと、クロノこれは?」


「ドラゴンがまだ生きていましたので」


 う、うーん、聞きたいことは微妙に違うんだよな。


「タクトくん、良ければ俺の方で説明しようか?」


「お願いします、ケインさん」


 以下はケインさんの話から抜粋。


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 ドラゴンの翼が爆発してからしばらく、様子を見にクロノとフェンが出てくる。


「あれ?まだ元気だね?」


「ええ、仮にもこの世界で上位に入る実力がありますからね、いささか丈夫ですな」


 と、そこでクロノ達を敵と認識しているドラゴンが再度吠えようとするが。


『グォ』


「させないよ?」


ゴッ、ズズゥン。


 吠える前にフェンがドラゴンを殴り、その頭が地面に叩きつけられ、めり込む。


「ふむ、フェンそのまま抑えておいてください、タクト様をお連れします」


 そう言うとクロノは森に入ろうとしながら。


「ああ、ケイン殿達も出てきて下さい、くれぐれもタクト様に失礼の無いよう」


 ここまでがケインさんの回想であった。


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「何か、うちの従者がすいません」


「いや、我々の方こそただ見てるだけで………」


 事情は概ね分かった、あと気になるのは。


「クロノ、ドラゴンはまだ生きてるのか?」


「はい、止めはタクト様に許可を貰ってからと思い、まだ生かしています」


「う、うーん、まぁ、討伐が目的だし……」


「では、止めを……」


「ま、待ってくれタクトくん!」


「え?」


 そこでケインさんが大きな声を上げる。


「ひょ、ひょっとして、生け捕りはできないか?」


「い、生け捕りですか?」


 急に生け捕りにしてくれって言われた。


「ドラゴンは希少で危険な存在だ、今までその生体は謎に包まれていた、これはギルドにとってまたと無いチャンスだと思う」


「うーん、でもなぁ」


「タクト様、少々お待ち頂いても?」


「ん?ああ、いいぞクロノ」


 クロノはケインさんを連れて少し離れた、何か相談かな?まぁ、クロノに任せれば大丈夫だろう。


「さて、ケイン殿?」


「は、はい」


「これはタクト様がSランクになるために必要な事なのですよね?」


「知っていらしたんですね、しかし、討伐よりも捕獲の方が功績は遥かに大きいです」


「ふむ、良いでしょう」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 話は終わったらしく、クロノ達が戻ってくる。


「タクト様、捕獲の方がより大きな功績になるようです」


「そうか、でもできるのか?」


「はい、可能です」


 メロウが魔法を唱える。


「体の自由を永久に奪う魔法です」


 それは呪いでは?


「何はともあれこれで捕獲成功ですな」


「まぁいいか、で、これからどうすれば?」


「荷車を数台持って来て、街まで運びましょう」


 ケインさんが冒険者に指示を出そうとしたところ。


「タクト様、これ運ぶんですか?」


 フェンが聞いてくる。


「ん?ああ、そうだよ」


「わかりました!」


 そう言うとフェンはドラゴンの元まで行き。


「よいしょ、さぁ、戻りましょうタクト様」


 軽々と持ち上げ笑顔で言うフェン、ケインさん達は顔を引き吊らせていた。


 こうして、ドラゴン退治?は終わった。

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