勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

8.決着

魔王とのつばぜり合いの中、背後に現れた日野。

「日野、お前確かエルフの里で、牢に入っているはずじゃないのか?」

「手薄になったからな、抜け出すのは簡単だったよ!」

確かに戦力は集めるべきだけどさ、看守は残しとけよ!

「ふふふふ、この時を待っていたんだ、この時を……」

「日野くん!いくら何でも状況を考えて!」

「そうだ、今、大事な場面で……」

「だからこそさ!」

前門の魔王、後門の日野(異常者?)ってしゃれにならないな。

「工藤、僕は君が嫌いだよ、いつもいつも、君は多くの人の輪の中に居る……」

「それを言うなら、お前だって人の中心に居るだろ?」

「違う!そうじゃない、僕に付いてくるのは、金魚のふんばかりだ……」

自分で言うかい?いや、こいつも自覚有ったんだな。

「君は自然と人が集まった、羨ましかった……」

こいつ、どうした?頭を打ったか?

「……そして、同時に憎かった!」

あ、正常だわ。正常?

「お前は、僕の欲しいものを、自然に手に入れていた、それを奪ってやりたかった!」

「日野……」

そんな事を言う日野だが、何故かその目には暗いものがない、むしろ晴れやかとさえ見れる。

「工藤 明!」

そして、日野はこちらに近づいてくる。

「明くん、どうするの!?」

「どうもしないさ」

恐らくだが、日野は……。

「工藤 明、お前にばかりいい格好はさせない!」

日野は、味方だ!

「日野、ガラドボルグを握れ!」

「ああ!」

戦列に日野が加わった事により、一層聖魔剣の輝きが増す。

「己れ勇者め!!」

押されていたつばぜり合いは一気に形勢が逆転する。

「………過去にお前がどんな目に逢ったかは知らない、だが、人々の明日を奪っていい理由には成らない!」

「………人は他者の思いを踏みにじる、貴様とて、思うところがあろう?」

魔王が俺を見据えながら言う。

「それは」

「それは違うよ!」

俺が反論しようとしたところで澪が先に大きな声で叫ぶ。

「確かに、明くんはなかなか答えてくれないけど、でも、私を大切にしてくれる、私を見てくれる!だから、私の好きって気持ちは変わらない!」

「………人は他者を傷つける」

「あたしは傷つけられた、でも、明や皆のお陰で立ち直れた!人は癒す事もできる!」

「………人は力を使い他者を壊す」

「俺は力の使い方を間違った、だが、明は俺を止めてくれた!人は支え合う事ができる!」

「………人は妬み他者を蔑む」

「僕は明を妬み、明になりたいと思った、でも、それは違った、僕は明になりたいんじゃない、明みたいになりたいんだ!人は妬むけど、尊敬し合える!」

「ぬぅ!?」

全員のガラドボルグを握る力が強くなる。

「………人は明日を望む、誰かと居る明日を、その明日は誰にも奪う権利はない!それが例え魔王だろうと、神だろうと、俺達が打ち砕いてやる!」

俺が魔王に宣言すると。

〈よく言いました、人の子よ〉

いつの間にか後ろに居たのはナビさん………ではない、瞳が黄金に輝く、別の誰かだった。

〈貴方の想いに、わたしも僅かな光を添えましょう………〉

そう言って巨大な魔方陣を作り出す、そこから出てきたのは俺の所有するはずの聖剣と魔剣の全て。

〈今、切なの光を!〉

召喚された百本ずつの聖剣と魔剣は、白い光の帯と黒い光の帯に成りガラドボルグへ集まる。

「ぬぅ、己れ女神よ!又しても我が道の邪魔御するか!!」

女神?今、ナビさんの中には女神が?

〈…………〉

女神?と目が合う。

〈……さぁ、人の子よ、魔王に最後を!〉

女神が言い放つと聖魔剣の光が強くなる。

「明くん!」

「ああ、今は何でもいい、力を貸してくれるなら有りがたく使わせてもらう!」

ガラドボルグを握り直し、足を踏ん張る。

「ぐぅ、己れ!おのれ!!」

「さぁ、決着を着けるぞ!」

『おぉ!!』

「光に紡いで、明日を切り開け!ガラドボルグ!!」

掛け声と共にガラドボルグを振り抜く。

「……お、の、れぇ…………」

魔王が光に包まれていく。

あとは………。



「ぐぅ、我が、我が消えていく……」

光の中、魔王は自分の最後を悟。

「………魔王、デスを返してもらうぞ?」

「聖魔剣使い………」

魔王の腹にガラドボルグを突き刺す。

「ぐふぅ、くっ、くくく、良かろう、お主もいずれ気づく、所詮我らは、神の………」

その言葉を最後に、魔王の気配は霧散する。これで魔王の脅威は去った。

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