勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

5.食い倒れ

さて、魔王・デスから手紙を貰い、お土産を持って馬車で数日、案内が待っている場所の近くまで来たのだが。

「……そもそもいつまでも待ってるものなのか?」

「あー、確かにあたしなら五分待って来なかったら、帰る」

「鈴はもっと早く帰ると思うよ?私は明くんなら、十年でも百年でも待つよ」

澪は本当にやりそうだから怖い。

「まぁ澪はともかく、普通は待って無いよな」

「待ってる場所がエルフの森の直ぐ近くとか?」

「そっか、昼の間は待ってて、夜に帰ってるとか?」

「いや、それだと夜に僕らが来たら分からなくなるよ」

司の言う通り、俺達がいつ来るかなんて分からないから、待つのであれば二十四時間体制で待つしかない。

「うーん、じゃあそこで寝泊まりしてるとか?」

「それらしい建物は見られないが?」

付近は開けた草原、小屋処か洞窟もない。

「お待ち下さい、明様、あそこで誰かが倒れています」

「行き倒れか?」

最近、行き倒れの遭遇率が高いんですけど。

「とりあえず拾うか」

「拾うって、あんたねぇ」

行き倒れに近づいてみる。

「………まさかエルフまで食糧難て言わないよな?」

「あ、でも、この人エルフじゃあ無いっぽいよ?」

見れば、金髪に顔黒いわゆるギャルだ、そして最近何処かでギャルという単語を聞いた気がする。

「おーい、生きてるか?」

「………」

声を掛けてみるも返事はない。

「返事が無い、ただの屍のようだ」

「いや、よく有るけど、現実にあったら困るやつよね?」

「あ、それ聞いたことある!何かのゲームだよね?」

「うん、確かそうだよ、何のかは知らないけど」

「あー、確かに知らないな、よく聞くけど」

「…う、うぅ」

「あの工藤様?盛り上がっているのは良いのですが、倒れている方何か言ってますよ?」

確かに、少し動いてもいるからまだ生きてるんだな。

「おーい大丈夫か?」

「うぅ、お、お腹が……」

「減ったのか?」

やっぱり食糧難?

「い、痛いぃ……」

え?そっち?

〈マスター、こんな物が落ちていました〉

ナビさんが拾って来たのは、茶色に紫の斑模様をした見るからに毒々しいキノコ。

「これ、どう見ても毒キノコだよね?」

「そりゃ、食中毒にもなるよ」

「明様、よろしければ対処いたしますか?」

「え?クロエ処置の仕方知ってるのか?」

「はい」

おぉ、さすが暗殺メイド、毒の扱いは知ってるって、かっこいいな。

「以前食して毒に当たった経験があります」

「食った事あるのかよ!?」

訂正、かっこわるい。

「はい、やむを得ずそこら辺に生えている………原生している物を」

「言い直したけど意味同じだからな?」

「ねぇ、それより良いの?あの人泡吹き始めてるけど?」

鈴の言葉に見てみると、泡を吹いてピクピク衝撃していた。

「はぁ、もういいや、クロエ助けてやれ」

「畏まりました」

応急処置をするため馬車へ運ぶ。

「しばらくはここで足止めか」

「うん、そうだね、道案内の人ってあの人だよね?」

「たぶんな」

「それより、あの格好でしょ!あれってギャルだよね?」

「鈴、分かってる、分かってるから言わないでくれ」

鈴だけじゃなく、澪達も何か言いたそうだが、一旦待ってもらう。

「明様、彼女は……」

「ミーア、やっぱりそうなんだな」

「………はい、残念ながら」

元仲間から見ても残念に映るんだな。

「明、どうするんだい?さすがに助けるのはまずかったんじゃ?」

「司、俺はな、この世界には二種類居ると思っている、一つはモルトやインセクトみたいな危険な種類、もう一つはデスのようなギャグな種類」

「あー、うん、そうだね」

何がとは言わないが司は分かってくれた。

「そこで問う、あきらかに毒であろうキノコを拾い食いし、食中毒で倒れる奴はどっちだ?」

「………どうみてもギャグだね」

「だろ?」

方針として、ギャグサイドのはなるべく会話を試みるようにする。

「明様、お伺いしてよろしいですか?」

「どうしたミーア?」

「わたしはどちらでしょうか?」

「………ミーアはどう見てもギャグの方だが?」

「そうですか!良かったです!」

嬉しそうにするミーア、それで本当にいいのか?いや、本人が良いならいいのか。


さて、しばらく足止めをくらう事になったが、問題があった。

「………暇なんだけど」

「まぁまぁ、最近忙しかったし、いいんじゃない?」

「いや、この間バーベキューしたじゃん」

「いや、あの状況でゆっくり出来なかったでしょ」

確かにバーベキューしてたら餓えた獣(獣人)に囲まれたはゆっくりとは言わないか。

「でもなぁ、暇なんだよなぁ」

ぼやいていると治療に当たっていたクロエが近づいてくる。

「明様、ひとまずは落ち着きました」

「そうか、あとどれくらい掛かる?」

「おそらく二日ほどは様子をみた方が良いかと」

「はぁ、それくらい掛かるか………」

まぁ、食中毒の治療だ、それなりに掛かるのは仕方ない、何てったって薬が薬草なんだから。

「そこで、ご相談が有りまして」

「相談?」

「はい、滞在期間が伸びた事により、食料が心許なくなる可能性があります」

「食料を採ってきて欲しいと?よし、分かった採って来よう!」

「念のためメイドを着けますので何かの際にはお申し付け下さい」

クロエには感謝だな、良い暇潰しができた、ん?待てよ?メイドにパシらされる主人ってどうなんだ?まぁ、いっか。


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