勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

7.ベアトリス王国で一度休憩

現在ベアトリスに急いで戻るべく、急ぐ理由を説明する事にした。

「俺が急いでいる理由は日野じゃない、むしろ日野の亡命した国にある」

「日野が亡命した国って、確かエレナちゃんの幼なじみがいるルクレア法国だっけ?」

「その国がどうしたんだい明?」

「法国は現在魔王の手に堕ちている可能性が高い」

「魔王の?」

「そ、それってやばいんじゃ…」

「王族を亡き者にし入れ代わっているか、もしくは操っているか……」

「明様!」

そこでアリシアが大声を出し話を阻害する。

「……すまない配慮が足りなかった」

「いえ、大丈夫です、それに工藤様が急ぐという事はまだ希望があるんですよね?」

「……あぁ、多分な」

「なら、急がなきゃね?」

「うん、私達だって、もしも五人の誰かが危ない状況だったら居ても立ってもいられないもん」

「よし、なら出発しよう!」

その後直ぐにベアトリス城へ出発する、砦を出て二日間エレナ姫は落ち着かない様子だった。


砦を出て二日半予定より速くベアトリス城に着くことが出来た、しかし休憩を最小限にした代償は大きく皆満身創痍であった。

「はぁ、やっと着いた……」

「鈴じゃないけど、少し休みたいね」

「安心しろここで二日間は休む」

「え~二日だけ?」

「二日だけ」

「ぶぅ~」

「でも何で二日なんだい?」

「理由は二つ、一つは休息のため、さすがにこれ以上の連続移動は辛い」

「ふむ、そうだな無理をして身体を壊したら元も子もないな」

「じゃあ二つ目は、情報収集だね?」

「司が正解だ、日野のその後の情報を知りたいのでな」

「既にメイド達を向かわせています」

「休み無しにすまないな?」

「いえ、至上の喜びです」

「あぁそう」

メイド達には疲れは無いのかね?

〈…メイド達にはそれぞれマスターが使った物が報酬として渡されています…〉

ん?ナビさん?何か今言ってた?

〈いえ、何も〉

そう?気のせいか?

「では、本日はお部屋でお休み下さい」

「あぁ、そうするとしよう」

「私はお母様に面会をお願いしておきます、アリシア一緒に来てください」

「畏まりましたエレナ様」

今日の所は部屋で休み可能なら明日女王と面会、ダメだったら女王の執務室を襲撃だ。

「工藤様?良からぬことを考えていませんか?」

「気のせいだろ」

エレナ姫の怪訝な視線を無視して、部屋に行く。


部屋で一休みし特にやることもないので、風呂に入るため大浴場に行く。
この世界の風呂事情は結構発展していて、街には風呂屋があり庶民でも安価で入る事ができる、王城では大浴場が完備されており兵士やメイド等が入る事ができる。

「やぁ明、君もお風呂かい?」

「俺達も風呂に入りに来たんだ」

風呂に向かう途中、司と敦に合い一緒に風呂に入る事に。

「こうやって三人でお風呂に入るのは久し振りだね」

「うむ、昔は銭湯によく行ったがな」

「近くの銭湯がなくなっていらいか?」

「うん、それぐらいだね」

昔話に華を咲かせつつ、風呂でまったりする。

「そう言えば、こんなにゆっくりして大丈夫なのかい明」

「平気だろ、さっきも言ったが焦って休みを取らない方が危険だ、それにひょっとしたら日野の亡命を手引きした奴が要るかもしれない」

「手引きした奴が?」

「それを調べる為にも時間が必要なのさ」

「なるほど」

「何はともあれ今は休め」

「わかったよ」

「にしても、風呂でゆっくりできるのはやっぱりいいな~」

「最近馬車移動続きで、水浴びくらいだったからね」

「うむ、しかし温くないか?」

「敦は熱いのが好きだからな」

「うーん、僕は普通だと思うけど」

「今、何度くらいなんだろうな」

「現在は40度ですので、人によっては温いと感じると思われます」

「へぇ~そんなもんか、確かに銭湯に比べたら温いかもな」

「この国ではこの温度が最適と言われています」

「なるほどねって、ん?」

『うわぁぁぁ!』

隣を見ると何処から居たのか、クロエが居た、いや、一緒に入っていた。

「ク、クロエ?何してんだ?」

「お風呂に入っています」

「いや、そうではなく……」

「湯に浸かっています?」

「………」

「ク、クロエさんここは男湯です!」

呆れて言葉が出なくなった俺に変わり司がクロエを問い質す。

「ハイ、存じています、明様の背中を流すために来ました」

なるほど、喜ぶべきか、躊躇無く男湯に入ってくる行動力に引くべきか?

「そ、そうですか、じゃあ僕達はお先に失礼しますね……」

「う、うむ、明はゆっくり入るといい……」

「あっ、待て逃げるな!」

「いやいや、邪魔しちゃ悪いから」

くっ、こうなれば最終手段!

パン、パン!

『お呼びですか明様!』

俺が手を二回叩くと、何処からともなくサリーとミリーの双子メイドが出てくる、ちゃっかりタオル一枚で。

「……司と敦も背中を流してやれ」

「えっ!」

「くっ、この裏切り者め」

「裏切り者はどっちだ!いいから諦めろ!」

こうして、三人仲良くメイドに背中を流される、ちなみに俺だけ三回流された。


翌朝、起こしに来たクロエと一緒にミレナ女王の執務室を訪れる。

「入るぞ」

「工藤様、できればノックをしてください、一応女王の執務室ですから」

「それはすまなかった、次回から覚えていたら気を付ける」

「……はぁ、お元気そうで何よりです」

「お互いにな」

「では、まず日野様の件から……」

「いや、その前に一つ聞きたい事がある」

パン、パン、パン!

「あっ、明様」

「ん?」

「ひぃっ!」

手を叩くと次の瞬間五人のメイドが女王の首筋にナイフを突き付けていた。

「なぜだ?」

「先ほど明様は手を三回叩かれました、二回で集合、三回で暗殺せよです」

「使いづら!何でそんなにややこしい暗号にしたんだよ!」

「く、工藤様!は、早く命令を取り消してください!刃が少しずつ首筋に食い込んでいます!」

おぅ、元雇い主に躊躇無くナイフを向ける胆力はすごいな、ただミレナ女王が慌てているのは結構楽しい。

「……もう少しこのまま」

「工藤様!」

「冗談だ」

メイド達を下がらせ改めて話をする。

「俺が聞きたいのは、このメイド軍団についてだ」

「はぁ、やはり明様の所に行ってましたか」

「ということは、女王は知らなかったんだな?」

「はい、申し訳ありません」

「そうか、ならいい」

「よろしいのですか?」

「退職した人間の事まで管理しろとは言わん、何よりこうなることを予想できた人間がいるか?」

「確かに予想外でした……」

女王と二人で呆れた視線をクロエ達に向ける。

「そんなに見つめられては困ってしまいます」

もじもじと答えるクロエにため息しか出ない。

「この話題はもう止めよう、頭が痛くなる」

「そ、そうですね、では、改めて日野様の現在の状況を……」

女王から日野が亡命した時の状況を詳しく聞く。

「つまり、日野を手引きしたのは騎士の一人だと?」

「はい、ですが本人は覚えていないの一点張りで……」

「ふむ、他に手がかりは?」

「今のところ……」

「手詰まりか、クロエの方では何かわかったか?」

「いえ、わたくしの方でも同じような話です」

「そうか、現在日野は何処に居る?」

「現在はルクレア法国に入ったと報告が来ています」

「やはり行くしかないか」

「問題は法国の結界をどう抜けるかですが……」

「そんな物どうとでもなるだろう」

「……正面突破はお辞めくださいね?」

「……善処しよう」

「辞めてください!国際問題になります!」

「国際問題が怖くて、魔王に立ち向かえるか!?」

「明様、僭越ながら馬車を行商に偽装した物を用意しています」

「おっ!さすができるメイドは違うね、文句や命令しかしない何処かの女王とは違う」

「うっ、いえ、それは……」

「じゃあ俺達忙しいんで、失礼しますね何処かの女王様」

「うぅぅ……」


執務室を出てルクレア法国へ行く準備に取り掛かる、女王の呻き声?そんなの知らん。

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