勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

3.暇

翌日、また吟遊詩人が来ていないかと思い澪達と広場に来ていた。

残念ながら吟遊詩人は居なかったが、噴水には人だかりができており近づいて見ることに。

「あ、昨日の兄ちゃん!」

人だかりの中には昨日の少年が居り、俺を見つけて声を上げる。

「昨日の少年か、これは何の集まりだ?」

「失礼します、ひょっとして昨日この子にお金を下さった方ですか?」

「うん?そうだが貴方は?」

「オレが住んでる教会のシスターだよ!」

「お前孤児だったのか?」

「うん、父ちゃんと母ちゃんは魔王に……」

「そうか」

「でも、シスターが居るから平気だぜ!それにいつまでも泣いてたらカッコ悪いからな!」

「そうだな」

「もう、さっきから聞いていれば失礼でしょ、コニ!」

「う、ごめんなさいシスター」

「申し訳ありません」

「いや、気にしないでいい、で、この集まりは?」

「あ、はい、どうにかして広場の噴水を直せないかと……」

「噴水を?」

「この噴水は、魔宝石で動くんですが、以前まであった魔宝石は魔王に奪われてしまい、新しい魔宝石を用意したのですがその石には魔力がなく……」

「魔法を使えるシスターに魔力を入れてもらおうとしたんだ!」

「しかし、わたしは水の魔法が苦手で……」

「なら、澪やってあげたら?」

「うーん、でも確か魔宝石に魔力を入れるのってかなり難しいんじゃ?」

「あー、すまない、ちょっといいか?」

「誰だ?」

「この近辺の復興を任されてる、大工のクマゴロウだ」

「クマゴロウか、いい名前だな」

「ぶふっ!」

「鈴、笑ったら失礼だよ?」

「いや、だって、熊に似てるおじさんの名前がクマゴロウって、ぶふふっ、ご、ごめん」

「どうした?」

「いや、何でもない気にするな、で、大工が何のようだ?」

「ああ、できそうなら、一度魔宝石に魔力を流してみてくれないか?実は冒険者に頼もうかと思ったんだができなくなってな」

「それはなぜだ?」

「何でも、復興の資金が尽きかけているらしく、そんな事に使う余裕は無いと言われてな」

やっぱりか、澪達の視線が刺さる。

ナビさん、魔宝石に魔力を入れるのって大変なの?

〈常人には難しいものです〉

なら、俺には?

〈私がサポート致しますので、難はないと思われます〉

じゃあよろしく!

「大工のおっさん、俺がやってみていいか?」

「いいが、お前さん魔法使いなのか?」

「いや、ただの元冒険者さ」

「おいおい、大丈夫なのかよ」

周りからも不安の声が聞こえるが気にせず魔宝石に近づく。

〈ではマスター、魔宝石に手を置いてください〉

了解

魔宝石に手を置くと淡く光出す。

〈魔宝石がマスターの魔力を関知している証拠です、では、ゆっくり魔力を流してください、この時に……〉

よし、魔力を流せばいいんだな!

〈いけませんマスター、魔力が強すぎます!〉

へ?

ブシュゥゥ!

結果、水は出るようになったが、噴水などと言う穏やかなものではなく、間欠泉と言った方がしっくりくる水柱が立っていた。

どうしてこうなった?

〈……魔宝石に魔力を流す際強すぎると、魔力が飽和状態になり、入りきらなかった魔力が溢れ出してしまいますと、お伝えしている途中でマスターがとんでもない強さの魔力を流したからです〉

ごめんなさい……これ、いつになったら収まりますか?

〈恐らく、二、三日掛かります〉

……マジか、二、三日このままか。

水柱は目立つらしく、周りにはどんどん人が集まり、元々居た皆は余りの出来事にあんぐりと空いた口が塞がらない様子だ。

「これは、いったいどうゆうことだ!」

水柱が見えたからかダイアがやってくる。

「皇帝陛下!」

「挨拶はいい、説明しろ!」

「ハッ!噴水を直そうと、そちらの者に魔宝石に魔力を流させたら、ご覧の有り様に……」

「また、お前の仕業か、明!」

「わざとじゃないぞ!」

「皇帝陛下、お知り合いで?」

「何を言ってるこの国を救った張本人だぞ?」

「な、この方が、も、申し訳ありません、そんな方とは露知らず……」

「いや、こちらこそすまない、こんな大惨事になるとは……」

現在周囲は水浸し、これでは復興どころではない。

「まったく、いくら問題を起こせば気がすむんだ?」

「わざとじゃないと言ってるだろ!」

「結果、復興の妨げになってるだろ!支援を頼んだのに妨害してどうするんだ!?」

「そ、それは……」

今回は反論の余地がない。

「お前はしばらく城で謹慎してもらう!」

「な、しかし……」

「問答無用!これ以上問題を起こされては困るのだ!」

「くっ、了解した」

「すごいねダイア様、明くんにあんなに言えるの」

「いや、多分テンパリ過ぎて自分の言ってる事理解できてないと思う、あとで思い出して戦慄するやつだね」

こうして、謹慎処分が決まった。


翌日、俺は城で謹慎していた、ぶっちゃけ暇である。

「はぁ、暇だ」

「仕方ないですよ、騒ぎを起こしてしまったんですから」

「起こしたくて起こした訳じゃない…」

監視?として、エレナ姫とクロエが部屋にいるが、やることもないので、ただ、ただ暇だ。

「とゆーかこれ、監視の意味をなしてないよな?」

「ほえ?」

「いや、だってエレナ姫で俺を止められると思うか?」

「ク、クロエもいるじゃないですか!」

「わたくしは明様の御心のままに」

「……な?」

「………」

「明様一つご提案が」

「ん?なんだ?」

「いざというときは、エレナ様を人質に取るのが得策かと」

「なんてこというんですか!」

「なるほど、そうゆう手もあるな」

「感心しないで下さい!」

「冗談はさておき、ふぁ~、暇だな~」

「本当に冗談ですよね?」

「では、暇潰しをさせましょう、明様手を二回叩いてください」

「ん?こうか?」

パン、パン!
ザザザッ!

『お呼びですか、明様!』

手を叩くと、見馴れない人影が五人何処からともなく現れた。
誰!?

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