勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

2.吟遊詩人

冒険者活動を始めてから三日後、俺達はダイアに呼ばれ帝城に来ていた。

「今日は何の用だろうな?」

「いや~大体予想はつくけど」

「そうか?」

鈴以外も予想がついているらしい。

「まぁ、行ってみれば分かるだろう」


直ぐにダイアの所に通される。

「来たぞ」

「あぁ、すまない、わざわざ来てもらって」

「構わん、で、何のようだ?」

「あぁ、実はな、明達の冒険者活動についてだ」

「言われた通り冒険者として活動しているが、何かあったか?」

「何かあったか?じゃない!いったいお前達は何をしたんだ!?」

突然怒り出したダイア、いや、若干涙目か?

「あ~、ダイア様?お前達じゃなくて、明一人です」

「別になにもしてないぞ、魔物を狩っただけだ」

「なら、その魔物の名前を言ってみろ!」

「そんなの、一々覚えてるわけないだろ?」

「え~っと、初日が、トリプルヘッドベアー、マーダーホッパー、ライトニングフォックス、スターウルフの群れ、で、群れを率いていたフェンリルスっていう伝説上の魔物ね」

「二日目は、ソニックフェザー、ガイアアリゲーター、バーストトータス、レッドドラゴン、ブラックフレアドラゴン、と、ロストドラゴンっていうこれも伝説上の魔物だね」

「へぇ~二人ともよく覚えてるな?」

「いや、ギルドであんだけ騒がれたら嫌でも覚えるよ」

鈴と澪の記憶力に感心する、でも確かにかなり騒がれた記憶が何となくあるな。

「な、な、で、伝説上の?そんなのが、この国に?本当に?」

「あぁ、いたな全部」

「いったい、何をしたら、そうなるんだ?」

「ただ、探索してただけだぞ?」

「ダイア様、残念ながら事実です、あたし達は探索してただけです」

先ほど上げられた魔物の数々は、探索してたらたまたま遭遇しただけだ、何故か知らんがそういう引きは昔からいい。

「くっ、百歩譲って、その魔物はいいとしよう」

「いいのか?」

「いいわけないだろう!百歩処じゃない、千歩いや、一万歩だ!」

「落ち着けよダイア」

「あ、あぁ、すまない、何せ魔王を退けたばかりなのにそんな伝説上の魔物まで居るなんて………」

「正確には居ただけどな」

「そうか、そうだな、居ただな、ハッハッハッハ、って笑えるか!」

「いや、だから、落ち着けよ」

「すまない、少し待ってくれ」

ダイアが落ち着くまで少し待つ、部屋に静けさが降りる、これ何の時間?

「……ふぅ、すまない待たせたな」

「ホントにな、で、何のようだ?」

「実はな、復興資金が尽きた」

「何してんだよ?」

「お前のせいだよ!」

「俺?」

「あぁそうだ!お前がバカスカ高ランクの魔物を狩るから、資金がそこをついたんだ!」

「まぁ、やりすぎよね」

「明は自重を覚えるべきだな」

「うーん、ごめん、てへ」

「てへ、じゃなーい!」

「わかった、わかった、もう冒険者活動は辞めるよ、ぶっちゃけ飽きてた所だし」

「あ、あきた、い、いや、大人しくしてくれるならいいか、幸い調査をちゃんとしてくれたから、一般の冒険者に依頼も出せるようになったし」

「じゃあ、俺達は少しばかり観光させて貰うな」

「あぁ、余り復興は進んでないが楽しんでくれ」

「あ、そうそう、ダイア」

「うん?何だ?」

「フェンリルスとロストドラゴンが報酬を直ぐに付けられないから国から払うので、待ってくれって言われているんだ、できるだけ早く払ってくれ」

「……鬼かお前は!!」

こうして俺達の冒険者人生はダイアの悲痛な叫びと共に幕を閉じた、あぁ無情。


突然暇になった俺達はそれぞれ街を見て回ることに、澪と鈴は買い物、司と敦は冒険ギルドに事情説明と挨拶に行った、どちらに着いていくのも嫌な俺は一人ふらふらする。

「ふぁ~」

欠伸をしながら歩いていると広場に出る、水の出ていない噴水の前に人の輪が出来ていた、輪の中心には吟遊詩人が居り物語を披露していた、近づくと物語はちょうど良いことに百年前の勇者の話らしい、しかし、物語は終盤らしく勇者が魔王に戦いを挑む時の話だ。

「勇者は聖剣を携え、悪の魔王に立ち向かいます、勇気の名の元共に立ち向かうのは、エルフの魔法使い、人族の騎士、獣人族の盗賊彼らは勇者と旅を共にした勇気あるもの達~」

ふむ、やはりエルフが共に居たのか、そして獣人族?が共に居たと、ここら辺も調べるべきだな。

「勇者は見事魔王を討ち果たし、世界を救いました、勇者を召喚したカロン王国に帰ると、多くの人々から感謝と労いが送られました、そして勇者は元の世界に帰る時を迎えたのです~」

勇者が魔王を討ち果たしたのは事実らしい、問題はこの先だな。

「しかし、勇者は元の世界には帰らず、この世界で、一人でも多くの人々の笑顔を作るために、旅をし続ける事にしたのです、そして生涯の伴侶と共に人々の幸せを願い続けましたとさ」

最後あやふや過ぎないか?詩が終わり囲んでいた人達が立ち去るなか、吟遊詩人に近づく。

「ちょっといいか?」

「はい、何でしょう?」

近づくと二十代後半位の若い男の吟遊詩人は、快く話をしてくれた。

「なるほど、勇者がどうなったのか詳しく知りたいですか」

「あぁ、加えるならカロン王国だったか?その国がどうなったのかも知りたいな」

「なんだよ、兄ちゃんそんなのも知らないの?」

何処からともなく聞こえた声に視線を移すと、十歳くらいの少年が近くに立っていた。

「なんだ?有名な話なのか?」

「そうだよ!オレだって知ってる話だぜ!」

「ええ、わたしが話しているのも、ほとんど史実から変えていない有名な話です」

「なら、勇者が帰らずっていうのは?」

「そうだぜ、勇者様は皆の幸せを守るため魔王を倒したあとも、魔物と戦ったんだ!」

「はい、それが今の冒険者の発祥とされています」

なるほど、こりゃいい情報集めになるな。

「じゃあカロン王国は?」

「カロン王国はな、悪い事をしたからなくなったんだ」

少年の言葉を聞き吟遊詩人の方を見ると、首を僅に横に振るどうやらここは脚色により変えられている部分らしい。

「少年はずいぶん詳しいな?」

「うん、毎日ここでいろんな人の話を聞いてるからな!」

「この噴水には元々、吟遊詩人の語らいの場になっていたんです、彼はその常連でして」

「なるほど、なら、吟遊詩人はどうやって話を作るんだ?」

「基本的には、色々な国を渡り歩き話を聞きながら、一つの物語にするのです」

色々な国ね……

「最後に一つ、色々な国と言ったが、エルフの国には行った事あるか?」

「いえ、エルフの国は鎖国してしまっているため入った事はありません、何でも、勇者と共に旅をして争いが嫌になり森でひっそりと暮らすようになったとか」

「そうか、時間を取らせて悪かった、これは謝礼だ」

そういって、小さな革袋を投げる。

「いえ、別によいのですが……ぶっ!何ですかこれは!」

中には金貨がぎっしり詰まってる。

「あぁ、気にしないでくれ、最近無駄に儲けたんだ、少年にも一枚だ」

「あ、ありがとー兄ちゃん!」

「あぁ、じゃあな」

中々いい情報が手に入れ、城に行く。
ダイアにあることを確認してその日は休むことに。

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