勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

9.つかの間の平和

隠密スキル、忍者刀の魔剣のスキルで、周りに感知されなくなり、隠れる事のできるスキルだ。
何故そんな事をしているかと言うと、ほら、だって、気になるじゃん、普段自分が居ない所で、どんな話してるのか。

そんな言い訳を自分にしながら、澪達とエレナ姫が話してる場に近付く。

「明くん遅いね?」

「そう言えばそうね、まぁどうせ部屋で居眠りしてんでしょ」

「いえ、部屋から出てとっくに、こちらに向かったと聞いています」

「部屋を出たのに、まだ来てないのかい?」

「ふむ、明の事だから大丈夫であろうが…」

「探しにいった方がいいかな?」

「平気でしょ?」

「あの、皆様は気にならないんですか?
私は、工藤様の事が気になってしょうがないんですが…」

「それって、明くんの事が……」

「い、いえ、そうゆうわけではなく、工藤様が見えないところで、また何かとんでもない事をしてないか心配で」

「あー、魔王と戦ってたりね」

「さすがに、それはないんじゃないか?」

「加えて言うなら、お城を壊してないかとか」

「まるで、魔物みたいな扱いだね?」

「そ、そうゆう訳ではないのですが…」

「大丈夫だよ、明くんなら、何があっても皆を守ってくれるから!」

「そうよ、平気、平気、どうせトイレで、踏ん張ってるとかでしょ」

スパンッ!しまった、鈴が女子力皆無な
発言をするんで、つい手が出てしまった。

「あいた!何すんのよ敦!」

「いや、俺じゃあ…」

「明くん!」

「え?明?」

「うん、今明くんの匂いが……」

「ど、どこからですか?」

「クン、クン……ここだ!!」

パシッ!手を捕まれる、隠密は、一度認知されると、解けてしまう、ましてや触られたら……

「やっぱり明くんだ!」

「あー!あんたいつからいたのよ」

「鈴を叩いたのは、失敗だったな」

「やっぱり、あんたかい!」

澪の異常性により、隠密は解かれてしまった。余り面白い話が聞けなかったな、どちらかと言えばしょうもない話だ、しょうがないので普通にパーティーに参加しよう。

「楽しんでいただけているようで、何よりです」

「あぁ、料理も旨いしな」

しばらく澪達と話ながら、バイキング形式の料理を食べていると、ミレナ女王が挨拶に来た。

「今回は、ご参加頂けてよかったですわ」

「近くに魔王も、居ないしな」

「そ、それは良かったです」

「前回も、参加したかったが何せこの城の警備が雑でな、魔王が潜んだりしていたから……」

「できれば、それくらいで、お許しいただけませんか?」

「しょうがないな」

と、ミレナ女王と楽しい(?)会話をしていると、邪魔をする奴が一人。
ご存じ日野だ。

「よくも、偉そうにして」

「お前こそ、何で居るんだ?ここは戦勝会、戦った者を労う場だぞ」

「ふん、僕達は城を守っていたんだ」

「街に攻めてきてるのに、城を守ってどうすんだ、バカかお前?」

「城には、女王や姫が居るんだ、守って
当然だろ!」

「いや、その二人、前線に居たし」

「申し訳ありません、伝え忘れていました」

いや、この女王の反応、わざと伝えてなかったな。当然と言えば当然か、足手まとい処か、足を引っ張る様な奴を前線に出させないか。
それが、日野も分かったのか、真っ赤な顔で、俺に怒鳴る。

「俺をバカにしやがって、工藤、俺と勝負しろ!」

「お前、誰が魔王を倒したかわかってるのか?」

「そうですね、工藤様の実力なら、怪我もしないし、させないでしょう」

「うぐ、くそ、覚えてろよ!いつか、お前を殺してやる!」

あいつじゃ無理だろ、その後は特に何もなく、平和にパーティーは終わった。

「ふぅ、食べ食べた~」

「鈴、肥るぞ?」

「うぐっ、い、いいの!たまには!」

「たまには?」

「たまには!!」

「もう、二人ともまたケンカして……」

「でも、こうやってまたいつもの話が出来るのは良いことだよね」

「うむ、そうだな、皆無事で良かった」

「まだ、終わった訳じゃないがな、魔王は後五人も居るんだ」

「大丈夫でしょ!あんたが居るんだから!」

「そうだね、明くんが居るから安心できるよ」

「お前らの信用は何処からくるんだ?」

四人が全員根拠のない信用を向けてくる、昔から解らないものだ。

「あんたが気付いてないだけよ」

「はぁ、理解に苦しむ」

「その内解るさ」

「さぁ、みんなもう遅いし寝よう」

「うん、あたし疲れちゃった、おやふみ」

各々部屋に戻り、休む事に次の日からまた長い戦いが待っているとは、この時知るよしもなかった。

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