勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

5.作戦会議

魔剣をしまいながら、話をしていると、
兵士が駆け込んできた。

「どうかしましたか?」

「ハッ、先ほど伝令が来て、魔王の軍勢が、街に攻めて来はじめたと」

「魔王の軍勢が……」

「わりと速かったな?」

「なんで、あんたはそんなに落ち着いてんのよ」

「私は、お母様の下にいきます」

「なら俺たちは、街門の監視台に行くかな」

エレナ姫と別れ、魔王が来たと言う、街の門までいく。
街の門の上から見えた光景は、見渡す限りの蟲である。

「正直、キモいな」

「ひぃぃ、鳥肌が立つ」

「うぅむ、俺でもさすがにきついな」

虫は平気な方な、敦でさえたじろぐ程である。どれだけいるのやら。

〈数をお教えしましょうか?〉

いや、いい、知ったら知ったで、やる気が失せる。これじゃあ、聖剣で一撃とはいかないな。

〈その事について、一つご報告があります〉

ん?ナビさんから、報告という事は何かあったんだな?

〈ハイ、こちらをご覧ください〉

ステータス
名前: 無し 年齢:0歳
レベル:1  種族:蟲人 性別:無し
称号:寄生蟲 元聖職者
スキル:寄生 聖属性耐性

蟲人なのに、耐性を持ってる?

〈ハイ、おそらく、村に居たシスターや神父が蟲人になったため、スキルを得たのでしょう、その為聖剣は効果が薄いと思われます〉

なるほど、さっそく魔剣の出番てわけだ。

ナビさんの注意に耳を傾けていると、
ミレナ女王達がやってくる。

「女王が前線に出てきていいのか?」

「我が身を守るために、国民を犠牲には、
したくありませんから」

「申し訳ありませんが、直ぐに作戦会議と、情報共有をしたいと思います」

「あぁ、いいぞ」

「現在、進行してきているのは、全て蟲系魔物です、ですのでおそらく、魔王インセクトが近くに居ると思われます」

「ふむ、蟲系魔物の弱点は何なんだ?」

「弱点は多く、火や水、光もある程度は有効です、但し物理攻撃に耐性のあるものが多いので、注意が必要です」

「蟲人の中に、聖属性耐性を持つものが
いるので、それも注意が必要だな」

「その話は、本当ですか?」

「あぁ、どうやら、村に居たシスターなんかが、蟲人になったらしい」

「そうですか……」

重苦しい、空気になるが、事態は急を要する。無理やり話を続けさせて貰う。

「じゃあ、火と水の魔法を使った、戦法でいいんだな?」

「ハイ、それが一番良い戦い方だと思います」

「わかった、ならなるべく、引き付けるようにしてくれると助かる、魔王インセクトは、俺が討ちに行く」

「よろしいのですか?」

「元々、俺しかいないだろ、それに、
会った事はないが、気に入らないからな」

「よーし、鈴ちゃんの魔法の見せ場ね!」

「私も、がんばるから、明くんも負けないでね!」

「俺は、魔法は得意ではないが、囮ならできるだろう」

「ここは、僕達に任せて、明は魔王を頼んだよ!」

「あぁ、任せろ!」

「……皆さんは、怖くないんですか?」

不意に、エレナ姫が呟く、その声は徐々に大きくなる。まるで、悲鳴のように。

「だって、だって、魔王なんですよ!
世界を滅ぼす力を持つ!私達なんて、それこそ、雑草のように、転がっている石のように、虫けらのように潰されてしまうかも知れないんですよ!?」

「エレナ!」

ミレナ女王の声に、ハッとなるエレナ姫、
自分が今、士気を下げていることに気付く。しかし、澪達は優しげに微笑んでいた。

「エレナちゃん、私達も、怖いよ?
でも、私達は信じてるから、希望の光が
あるって」

「そうそう、普段は悪態ついて、口が
悪くって…」

「しかし、根は優しく、困っていたら手を差しのべてくる」

「うん、だから、僕達の中心には、いつも彼が居るんだ」

「いったい誰の事を、言ってるんだ?荷が重すぎるぞ……」

「あ、あの、私もその希望の光を、信じてよろしいのでしょうか?」

エレナ姫が、俯きながら聞いてくる。

「……俯き、下を見てたら、見えないんじゃないか?顔を上げて、前を見ろ、そうすれば希望の光が在るかも知れないな?」

「ハイ!」

「そんじゃま、希望の光になりにいきますかね」

そうして、それぞれ配置に着きに行く、直ぐに蟲達が向かって来るのを、澪達が魔法で応戦し始めるのを見て、俺は魔王インセクトのところに向かう。

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