勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

1.女王への報告と脅迫

ベアトリス女王国防衛編

1.女王への報告と脅迫

パーティーの次の日、俺は、女王を謁見の間に呼び出していた、そう、呼び出していた。
本来であれば、女王が呼び出す場であるが、今は逆だ。

扉が開き、女王が入ってくる、一緒にいる澪達は膝間付くが、俺は膝間ずかん。
その無礼に対し、騎士から、視線を送られる。何か言おうとする騎士に、女王がそれを制する。

「構いません、控えなさい」

「このまま、話させてもらうぞ?」

「ハイ、本日はどのような用件でしょう?」

「昨日の夜、城内に侵入していた、魔王・モルトを倒した」

ざわざわざわ
場が一気に騒がしくなる、聞いてみると、大抵が、嘘だの、戯れ言だのである。

「静まりなさい!クロエそれは事実であるか?」

「ハイ、女王様、ワタクシも確認しました」

実は、あの場にクロエも居た、クロエの
称号は、メイド長と暗殺部隊隊長だ、つまり、お世話係兼監視係なわけだ。

その後、クロエが詳しい経緯を女王に話す。

「なんと、では、本当に、魔王が城に…」

「あぁ、あんたらが、楽しそうに、パーティーをしてる時にな」

女王が、顔を青くするなか、事実を突き付ける。
そして、残念なことに、もう一つあるんだなぁこれが。

「では、何か褒美を…」

「あぁ、その前に、まだ伝えなきゃいけない事があるんだが?」

「まだ、何か?」

女王が、身構えるなか、この国の者にとっての、絶望を告げる。

「もう一人、別の魔王が、この国に進行してきている」

「今、なんと?」

「簡単に言うと、魔王がこの国を滅ぼすために、攻めて来ているだな」

先ほどよりも、大きなざわめきが上がるなか、女王も、青を通り越し白い顔をする、
女王が、俺に視線を止めると、希望にすがる様に聞いてくる。

「お力を、貸していただけませんか?」

「ふむ、貸さないこともないな、条件次第では」

「どのような条件でしょう?」

「そういうのは、自分達で考えてもらいたいが、まぁ、今回は助言しようか、まず、今まで、働いた分の報酬を貰おうか?」

「ハイ、直ぐに準備させます」

「次に、今回、魔物や魔王を倒したのは、勇者ではないと、国内外に公表すること」

「それは……」

女王が言い淀む、そこに、割って入る声があった。宰相らしいおっさんだ。

「お言葉ですが、工藤様、それは残念ながらできかねます」

「なぜだ?」

「この世界は、今、希望に餓えているのです、勇者が活躍した事で、皆いきる希望を見いだしているのです」

要するに、勇者の道具になれと言うことか。
そろそろ、立場をはっきりさせた方がいいな。
俺は、徐に聖剣・デュアルホーンを取り出す。その行動に、女王を初めその場に居る全員が息をのむ。
俺はデュアルホーンを壁に向かい、半分程度の力で突き出す。

ドォォォン!

轟音と共に、壁には大穴が空き、外の良い景色が見えるようになる。

「いい加減にしてもらいたいものだな?そんなに、勇者に活躍してもらいたいなら、勇者に頼め、俺を勇者の道具にしようとするな!」

女王を見据えて、大きく宣言する。

「これは、明確な意識表現だ、これからも、力を貸してほしいなら、正当な報酬を出せ!でないのなら、今度こそ、俺はこの国を出る!」

「畏まりました、直ぐに、国内外に工藤様の事を、公表することを誓います」

「それと、知っているとは思うが、俺を殺そうとしたものが居るんだが?何故野放しにしている?」

「……申し訳ありません、その者は、この国にとって、重要な役割を持っています、ですからどうかご容赦いただけませんか?」

「いただけないな、明確な殺意を持って、来たんだ、対処してくれないと、安心して眠れないだろ?それとも、養護してくれるのは口だけか?」

「解りました、アリシア、宰相を拘束しなさい!」

「な、何故です女王陛下、わたしが何をしたと言うのですか!?」

「あなたは、工藤様に毒を盛ろうとしましたね?言い訳は、無駄ですよ?」

そう、この宰相は、前に俺に毒を盛ろうとした、メイドに指示をした人物だ、ついでに言うと、物置小屋に閉じ込めた、兵士に指示をしたのも、この宰相だ。
それを知っていながら、女王は野放しにしていた、なのでこの際、はっきり言わせてもらい、本当に養護する気があるのか確かめさせてもらう。

「その者は、重罪を犯しました、故に、この場で、処刑に処する事を言い渡します、連れて行きなさい!」

俺に、害をなす事が、どれ程の事か、明確に示す形で、判決を言い渡す女王。
ここまでされたら、こちらも、力を貸さざるを得ない。

「これで、ワタクシの言葉を信じていただけますね?」

「ある程度わな」

「今は、それで構いません」

「ちなみに、信用を落としすぎると、この国が、あの壁みたいになるので、お忘れなく」

「ええ、心得ています」

む?もう少し、狼狽えると思ったが、涼しい顔で、返された。
まぁ、他の者には、効果があったようだがな、全員顔面蒼白だ。

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