勇者?いいえ、聖・魔剣使いです。〈 聖・魔剣使いの英雄談〉

カザミドリ

幕間.魔物討伐 (日野 聖治視点)

何でだ?何でこうなった!?

「拡がりすぎるな!!一塊になって抑え込むんだ!!」

「こっちにケガ人がいるの!回復魔法を……」

「数が多すぎる!こんなの敵いっこない!!」

彼らは最初こそ、有利に戦いを進めていたが、時間が経つにつれ、魔物の数が増えていくごとに、対応出来なくなっていった。

「くそ!俺は勇者だぞ、何でこんな魔物何かに…」

日野が悪態をつくのも無理はない、彼らが対峙しているのは、ゴブリンやオークの群れなのだ、訓練では何度も戦い葬って来た。
しかし、今は数が違う、倒してきたとしても、10匹や20匹が精々だ、目の前の平原を埋め尽くすほどの数など見たことがない。
それは、横で必死に剣を振る騎士も同じだろ。

「日野君!このままじゃ全滅だよ、街に戻ろう!?」

この状況で街に戻るのは、本来であればとても危険な行為だ。

しかし、澪は知っている、街に帰ればどうにかなると、街に帰ればこの絶望を打ち消す希望があると、日野は知らない、いや、認めたくない、彼の力を、自分の無力さを。

「俺は勇者だぞ、勇者なんだ、なのに何で……」

苛立たしげに日野呟くなか、とうとう辛うじて守っていた前線が崩れる、一気に魔物の波が全てを呑み込むと思われた時、押し寄せる魔物達を光が包む、その光が魔物達を葬り、僅かに勇者達と魔物達との間に空白地帯ができる。

そこに降り立ったのは、絶望を切り裂く希望であった。


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