僕が守りたかったけれど

景空

第115話

ノーリス駐在の騎士団に狩った魔獣の処理を任せ森から溢れた魔獣を間引く。いつもなら僕とミーア2人だけの戦いなのだけれど、今日は隣で勇者パーティーが戦っている。その戦いは力強く堅実でそれでいて効率的。勇者様自身の戦闘能力も以前とは段違い。今は聖剣を使っていないけれど、それでもそろそろ上位魔獣をひとりでも狩れそうだ。他のパーティーメンバーも以前聖国で見た時とは見間違えるほどに成長している。これなら十分に肩を並べて戦えそうだ。背中を預け合う自分のパーティーメンバーとしては抵抗があるけれど、同じ目的のための別パーティーとしてなら……。そんなことを考えながら目の前の上位魔獣を右手のブロードソードで切り伏せる。ミーアも今となってはこの程度なら無双状態だ。あっという間に魔獣の死骸が山になっている。ふと見ると、ミーアが手を伸ばして……魔法を発動した。勇者パーティーの後衛に手を伸ばしかけていた魔獣が吹き飛んだ。
「いくら調子がよくても、油断したらだめよ」
ミーアも魔法の使い方にだいぶ慣れたようだ。僕も魔獣相手の魔法に少し慣れておいたほうがいいかもしれない。少し離れた位置にいる上位魔獣に加減無しで風の刃を向ける。
「フェイ」
「何かな」
「当分魔法禁止ね」
「はい」
バラバラになった魔獣達を目の前にしてミーアに釘を刺されてしまった。まさか上位魔獣がこま切れ肉になるとは思っておらず、自重せず普通に放った魔法は狙った上位魔獣を先頭に10体ほどの上位中位魔獣を巻き込み素人さんには見せられない状態に。そして僕は当分の間は魔法を禁止されてしまった。
その日森の外に溢れていた魔獣を狩りおわりノーリスに入った僕達だったのだけれど、勇者パーティーの面々が興味津々な顔でこちらを見ている。僕たちの目の前にいるのはアーセル。
「ね。フェイとミーアって魔法つかえなかったわよね」
「ああ、まあ、なんというか最近使えるようになったんだよ。こないだの決闘でも使ったんだけど見て……ないか。アーセルは来てなかったな」
「そんな簡単なものじゃないでしょ、あの魔法。うちのアスセナだってトップクラスに強力な魔術師だけど、あそこまで規格外じゃないわ。いったいどうしたら……。ってごめん。冒険者は詮索タブーだっけ」
「別に秘密にしてるわけじゃないからいいさ。あれはドラゴンの祝福のおかげだよ」
「ああそっか、フェイとミーアはドラゴン討伐に成功したんだったっけ。てことはドラゴンに勝てれば祝福もらえるの」
「それがそうとも言えないらしくてね。過去記録にあるドラゴンスレイヤーには祝福はなかったらしいんだよ」
「でもフェイ、グラハム伯はドラゴンの祝福についてある程度知ってる感じじゃなかった」
「ミーアも気づいていたんだ。そうなんだよね、あの時は単にアイリーマン伯爵を止めるためにああいう言い方をしたのかと思っていたんだけど……」
「グラハム伯の言った事は本当だったものね」
「どこまで知っているのか、帰ったら聞いてみよう。ところでそっちのパーティーも随分とよくなってたね」
「あの時からギーゼも心を入れ替えて鍛えたから。メンバーのみんなもそれにこたえてくれたの。今では1級冒険者パーティーよ」
そう胸を張る幼馴染に微笑ましいものを感じながら
「国や有力者からの干渉は、どうにかはねのけたようだね」
「う、うん。結婚を決めるまではそれでも酷かったけどね。フェイにあれだけ忠告されていても大変だったわね。あそこまで露骨だとは思わなかったわ。でも最後までギーゼがあたしだけだって言ってくれて……」
話の流れとはいえ、幼馴染の惚気を聞かされるとは思わなかった僕とミーアは顔を見合わせて。
「幸せそうでなにより」
そう言うしかなかった。

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