僕が守りたかったけれど

景空

第59話

「情報の伝え忘れは無いぞ。ただ常識の注意喚起をしてなかっただけで」
僕はがっくりと身体の力が抜けるのを感じながら
「で、その注意喚起ってのはなんなんですか」
「いや、極々一般的な注意だぞ。単にアンデッド化した魔獣は1ランク上の強さを持つようになるから気をつけろと」
確かに極々一般的な注意事項だ。
「つまり、キュクロプスアンデッドは、聖剣以外でも傷つけられるけれど、下位王種並みの強さだって言いたいわけですね」
「ま、そういうことだ」
「だから一般的な注意事項ですか。確かにそれこそわざわざ言う必要がない一般的な注意事項ですね。僕は当然そのつもりでしたし」
王種並みの言葉に顔を引きつらせる天の剣とグランの翼のメンバー。
「ちょっと待て。下位王種並みの強さって簡単に言うようなものではないだろう。正気か」
イジドールさんが顔を引きつらせながら抗議してきた。
「いや、聖剣以外でも傷つけられる以上どうにでもなりますよ」
僕の言葉に、今度はウィレムさんが
「貴様、本当に正気か。下位王種並みってのはちょっとした国が全力を挙げて討伐するレベルだぞ。それを1級冒険者パーティー2パーティーと4級冒険者パーティーで討伐だと。死にたいのか」
「そこまでムキになるようなものじゃないですよ……。下位王種との戦いは経験ありますし」
最後の1言はボソっと呟いた。そうしているとノエミさんがホセさんに何か耳打ちをしていた。それを聞いたホセさんが
「ふむ、そうだな」
そして改めて天の剣とグランの翼に対してことばを掛けた。
「本来であればファイとミューは絶対に失ってはならない戦力ということで護衛を兼ねて天の剣とグランの翼をつけるつもりだったのだが。この様子では討伐では足手纏いにしかならなそうだ。そこで提案だ。天の剣とグランの翼はキュクロプスアンデッドに遭遇するまで2人の消耗を防ぐための護衛をする。遭遇後は退避。退却を許可する。その代わり報酬は予定の1割。これでどうだ。これでも無理ならファイとミューには悪いが単独パーティーでの討伐依頼となる」
「少しメンバーと相談させてくれ」
天の剣とグランの翼はメンバーを集めて相談を始めた。
僕とミューはと言えば、手持ち無沙汰になってしまったので口を開くこともなく、なんとなく手を繋いで肩を寄せあって座っていた。
しばらくして、2つのパーティーは話がまとまったようでホセさんの前に集まっている。そしてウィレムさんが口を開いた。
「2パーティーを代表して俺が話させてもらう」
そう言って周りを見回し、そして僕たちに視線をしばらく向けた後で
「俺たちとしては先のギルマスの条件を基本的に受け入れる。ただし、その前にそこの4級冒険者の実力を見せてもらいたい。本当に俺たちをしのぐ実力があるのか、それが確認できたなら俺たちは彼らのサポートにつこう」
ホセさんは大きなため息をひとつ
「実力を見たいと言われてもな。どうしたら納得する」
「俺たち2パーティーと模擬戦をしてもらいたい。先のギルマスの話が事実ならば俺たち9人がかりより彼ら2人の方が強いのだろう。それを証明してもらいたい」
僕は面倒なことになったと目を伏せ溜め息をついた。

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