猫とマッチョと縁の円

涼木行

 


 数分後、スタッフルーム。


「傷口洗って消毒したからとりあえず大丈夫。ネコの爪も結構ばい菌とかあるからさ」


 と鵜ノ浦は言い、消毒液を救急箱にしまい棚に戻す。


「わざわざ悪かったな」


「いいよ、店の中でうちの猫がしたことだしこっちの不手際みたいなもんだから。それで客の傷悪化させたりするわけにもいかないし、最悪業務停止とかもあるしさ」


「なるほど。んじゃ約束通り全部話してもらうぜ……なんで俺のこと知ってる。てかなんで気づいた。完璧な変装してたのに」


 いや、割と普通にすぐわかる変装だったぞあれ。第一あんた特徴ありすぎてあれじゃ全然隠せてなかったし……などと思うが黙っておく鵜ノ浦。


「いやまあ、変装っていっても見覚えあったから……ていうか一応聞くけどそっちは私に全然見覚えない?」


「……ねえな多分」


「そう。一応同じクラスなんだけど」


「……マジか?」


「うん。ついで言うと去年も同じクラス。菜更木って人の顔とか覚えるの苦手なタイプ?」


「いや、知らねえけど、そもそも人の顔あんま見ねえし。こんな面だからちらっと見るだけでガンつけてるみたいに思われるしよ」


 ああ、確かに。こいつも結構大変なんだな……ていうか少しは気にしてたんだなそういうとこも、などと思う鵜ノ浦。


「あ? いや、ちと待てよ……ちょっと後ろ向いてくんねえか?」


「え? まあいいけど」


 鵜ノ浦はそう言って後ろを向く。菜更木も立ち上がり、その後姿をじっくりと見る。


「ああ、言われてみりゃ見覚えある気がするわ」


「え、今ので何見たんだよ」


「何をっつうか身長だな。知り合いに背高い女子いっからそこまでじゃねえけどなんか結構たけぇ女いんだなって軽く印象に残ってるっつうかよ」


「そこか。知り合いの女子ってそれもしかしてうちのクラスのあの人?」


「おお。そういやお前も同じクラスなんだよな。大甕美日光な。多分あいつの次か次の次くらいにでけえんじゃねえか。けど去年同じクラスだったってだけなんだろ? なんでお前はわざわざ名前まで覚えてんだよ」


「いや、別に覚えてるっていうか菜更木の場合はデカくて目立つし顔も特徴あるから印象に残ってるってだけで。名前はまあ、珍しいから」


「そういうことかよクソッ……そういやそっちの名前まだ聞いてなかったな」


「鵜ノ浦宇乃」


「ウノウラウノ? なんかすげえ名前だな。で、たまたまここでバイトしてたっつうことか」


「いや、ここうちの店なんだよ。親の店。だから暇な時手伝ってるだけ」


「はー、そういうことか……まあそれはさておき本題に入らせてもらうぜ……」


 菜更木はそうすごみ、間をとる。とたん室内の空気がピンと張り詰める。菜更木の表情はまさに極道映画などでよく見る相手をこれから脅しつけるヤクザのそれであった。その顔を前に鵜ノ浦も思わずごくりと生唾を飲み込む。




「鵜ノ浦、わりぃんだけどよ――このことは絶対秘密にしといてくれ! 頼む!」


 菜更木はそう言い、膝に両手をついて勢い良く深々と頭を下げた。


「――え、いや、このことって、」


「俺がわざわざ変装して一人で猫カフェ来てたこととかそこであった諸々とか全部全てだ! 金はいくらでも払う! なんだって言うこともきく! だからどうか頼む!」


 と再び深々と頭を下げる菜更木。


「……あー、うん。別に構わないけど……」


「……ほんとか?」


「うんまあ。元々誰かに話すつもりとかなかったし」


「……ほんとか? 噂広めたり影で笑ったりバカにしたり気持ち悪がったりとかしねえのか?」


「いや、しないってそんなこと」


「ほんとのほんとにか?」


「ほんとのほんとにだけど。ていうか逆になんでそこまで疑ってるのかわからないし。私そういうことしそう?」


「いや、そういうわけじゃねえが、このくらいの歳の女ってもんはそういう生き物だっつう先入観っつうか防衛意識っつうか、まあうちの姉妹に散々そういうことされてきたからよ……」


「あ、そう……あんたも結構大変なんだな」


「まあな……ともかく助かる、あんがとな。で、俺は何すりゃいいんだ?」


「は? 何が?」


「秘密にしてもらう代わりの見返りだよ」


「いや、いいよ見返りとかは」


「は? いやでもそれじゃあお前に何のメリットもねえだろ。なんで黙っててくれんだよ」


「いや、なんでってあんたが秘密にして欲しいって言うからだけど。黙っててくれって頼まれたら普通秘密にしとくでしょメリットとか見返りとか関係なく」


「……鵜ノ浦、お前――めっちゃいい奴だな!?」


「……いや、普通だと思うけど……」


「んなことねえって。お前ほどのいい奴そうそういねえぞ? 同じクラスだってだけでよ。いやーできた人間もいるもんだな!」


「それはまあ、どういたしまして……けどなんでそこまで秘密にしてもらいたいの。そんなに人に知られたくない?」


「まあな……やっぱ似合わねえって自覚もあるしよ」


「ふーん……でも猫好きなんでしょ?」


 その言葉に菜更木は再び「ビクッ!」と体を強張らせる。


「な、なんでだ……?」


「変装してまで猫カフェ来るってことはそうなんじゃないの?」


「いや、それはまあそのだな、その、まああれだ、なんっつうかその、あれっつうか……」


「……わかった、言わなくてもいいよ。猫好きだってのも知られたくないってことね」


「―――――そうです……私は猫が好きです……」


 目一杯の沈黙の後、犯行を認める容疑者のように菜更木はがっくりとうなだれながら答えた。


「た、頼む! 後生だからこれも秘密にしといてくれ! 絶対誰にも言わないでくれ! なんでもするから、なんでもしますから!」


「いや、だから言わないって誰にも」


「ほんとかマジでか無償でか!?」


「ほんとだしマジだし無償だよ」


「……仏かよ……」


「普通に人間だけどね」


「信じられねえぜ……そういやお前さっき普通に猫捕まえてたよな」


 と菜更木が続ける。


「いや、捕まえたっていうか普通に抱いただけだけど」


「似たようなもんだろ。それに猫がしょっちゅうお前の周りうろついてたし後つけてきてたぜ、足に頬ずりしたりな……いつもあんな猫に好かれてんのか?」


「好かれてるかは知らないけどまあこういう店してるし昔から猫飼ってるからいつもあんな感じだけど」


 なるほど、つまりこいつは俺とは真逆で相当な「猫縁」の持ち主だってことだな……まさかこんな身近にこんなすげえ奴がいたとは。おまけに俺の秘密を全部無償で黙っててくれるっつうんだからこんなありがてえ奴はいねぇ……


「――鵜ノ浦、お前の好意に甘え過ぎだと思うが一つ頼みがある……」


「なに改まって」


「鵜ノ浦……俺を弟子にしてくれ!」


「――は?」


「俺をお前の弟子にして欲しいんだ! 頼む師匠!」


「……弟子ってなんの」


「何ってこう、猫に好かれる人間の?」


「あー、つまり猫に好かれる方法みたいなのを教えてほしいってこと?」


「そうだな、できればそれも教えて欲しいが、一番重要なのは俺が常にお前のそばにいることだ」


「――いきなり何言ってんのあんた」


「確かにいきなりすぎるかもしれねえけどよ、どうか俺にお前のそばにいさせてくれ。邪魔にならねえようにするしなるべく迷惑かけねえようにもする。大抵の事なら手足のように働いたっていい。まあ自分で言うのも何だが力仕事だのは得意だからな」


「待って、なんかズレてきたっていうかすごいややこしいこと言ってる気がするんだけど、一応確認するけどそれは弟子的にそばにいさせてくれってことだよね?」


「おう、もちろん。カバン持ちみたいな感じでよ。それでお前が猫と関わる様子を観察させてほしいんだよ。なんかコツとか掴めるかもしれねえしいい影響もあるかもしれねえしな。猫だって俺がお前の近くにいて親しくしてりゃ俺のことも味方だって思うかもしれねえだろ?」


「あー、言いたいことは大体わかった。でもなぁ……」


「頼む! 俺はどうしても猫と仲良くならねえといけねえんだ! 俺は、俺はどうしても猫と仲良くならねえといけねえんだ!」


 何で二回言ったんだこいつ、と内心突っ込む鵜ノ浦。しかしその滑稽ながらも悲痛な姿にさすがに同情せずにはいられなかった。


「そ、そう……どうしてもってなんでよ」


「そ、それは……」


「言いたくないなら別にいいけど」


「……いや、みなまで言うな鵜ノ浦。師として弟子にふさわしい人間か試してることは俺だってわかってる」


 いや、別に試してなんかないしそもそも師じゃないしいつの間に師匠にされてるんだよ私……などと思う鵜ノ浦をよそに菜更木は一人深呼吸をし意を決する。


「――夢のためだ」


「……夢って?」


「そ、それも言わなきゃダメですか師匠?」


「いや、だから言いたくないなら別にいいって」


 そして私は師匠じゃないし、などと思うがそんな思いはやはり菜更木には届かない。


「いや、わかってるちゃんと言うちゃんと言えるぜ……ただどうか他言無用で頼む……」


「だから誰にも言わないって」


「――い、岩合光昭先生の弟子になって師のような猫カメラマンになることです……」


「あぁ……そりゃ今のままじゃ無理っぽそうだな……」


「だろ!? 後生だから頼む! ほんの少しだけでもいいんだ!」


「ほんの少しって言われてもなぁ……」


 くっ、何故ここまで渋る……やはり俺がこんな面だからか……猫に嫌われまくるような人間だからか……――はっ! もしや……。


「――わかったぜ鵜ノ浦……門外不出の秘術なんだな?」


「……は?」


「そうだよな……考えてみりゃ当然だ。家が猫カフェなんだからそれで食ってるようなもんだしよ、そう安々と外部の人間に教えられるようなもんじゃねえよな……厚かましいにも程があった。わりぃ、許してくれ」


 そう言って菜更木は頭を下げる。


「で、だ。よそ者には教えられないなら俺をここの人間にしてくれ! タダ働きで構わねえから頼む!」


「……一人で話し進めてるとこ悪いけどさ、つまりうちで働かせてくれってこと?」


「おう! 金はいらねえ。無償がだめなら少しだけでいい。考えてみりゃこの場所自体猫縁が集まる俺にとっちゃパワースポットみたいなとこだしな。確かに俺みたいなのがいたら猫も心休まらねえかもしれねえがそこは適度な距離をとって何とかする。下手に猫に近づいたりもしねえ。裏でずっと雑用でも構わねえ。だからどうか頼む!」


「…………ま、まあ、私は別に構わないけど、言った通り私はあくまでただの手伝いで経営者はうちの母親だからお母さんに聞いてみないことには……」


 と、そこへ、


「その必要はないわよ、話は全て聞かせてもらったわ!」


 という大人の女性の声が割って入る。見ると扉の縁にもたれかかり腕を組む一人の女性がいた。


「お母さん……」


「どうも初めまして、菜更木くん、っていったかしら? 宇乃の母でこの店の店長でもある鵜ノ浦有良うのうらうらです」


「あっ、どうも。こちらこそ初めまして、菜更木っす」


「……いつからそこいたの」


「あんたが彼の傷を手当してる頃からずっとよ」


「店は?」


「………………それより彼のことよ! 菜更木君、話は聞かせてもらったわよ! あなたの猫への愛、情熱、けれども儚い一方通行への悲しみ、絶望、それでも夢のために前を見つめ続けるその眼差し……しかと見届けさせてもらったわ」


「お、お母さん……」


「いや、その呼び方はさすがに、」


「細かいことは気にしない! まあ今は店長と呼んだほうが適当ね……ともかく、菜更木君、あなた猫は好き?」


「……はい、好きです……愛してます!」


「猫のためならなんでもする?」


「……愚問っすよ。全ては猫のため」


「タダ働きでもなんでも?」


「無論です」


「いや、タダ働きはさすがにマズいでしょ」


「……うん、まあそこはあくまでこの場のノリっていうか熱意を確かめたかったっていうか普通に最低賃金は払うから。ともかく話は決まったわ。丁度あなたみたいな人材が欲しかったのよね」


「菜更木みたいなのが?」


「そうなのよ。菜更木君、あなたを用心棒としてうちで雇うわ!」


「マジっすか!? ありがとうございます!」


「いや、ちょっと待って。用心棒ってなに? うち猫カフェなんだけど」


「だからこそよ。店員も女性ばっかだからねえ。それにやっぱりうちの店としては単身男性拒否とかしたくないからねえ」


 宇乃の母はそう言うと菜更木に背を向け、宇乃に肩を寄せ近くでささやく。


「それにあんたのためでもあんのよ」


「あー……いや、でも、」


「丁度いい機会じゃない。私だってこのままでいいとは思ってなかったしあんたの身の心配はしてるんだから。あんただって同じクラスの子なら安心でしょ?」


 同じクラスの「子」って外見じゃないけどね……などと思いながら鵜ノ浦は再びちらっと菜更木を見る。


「そりゃまあ赤の他人よりは多少は安心だけど……」


「そうよ。私だって何も適当に選んだわけじゃないし『いいカモが来た!』と思って食いついたりしてるわけじゃないのよ」


 思ってるんだ、と宇乃は内心でつっこむ。


「私だってちゃんと人を見る目はあるからね、菜更木君を見て話を聞いてこのこなら間違いない! って思って選んでるわけよ」


「……まあその話はいいとして、用心棒ってどうすんの」


「そりゃ外国の高級店みたいに黒服着せてドアの前に立たせとくのよ」


「客が逃げるわ」


「まーそれは冗談として、普通に店の中にいてもらうだけで違うんじゃない? あんな怖いのいる中やらかそうだなんて思う人いないでしょ。それにもしもの時なら彼がいれば大人しく対応してもらえるだろうし。あんたあのことは話したくないんでしょ?」


「まあね……」


「話して協力してもらったほうがより確実だと思うけど、まああんたが嫌だって言うなら当面はしょうがないわね。とりあえず客に怪しい動きしてるのいないかとか見てもらう感じにしればいいかしらね。彼の眼力と強面なら不届き者なんてひと睨みで脱兎のごとく逃げてくわよ」


「他の客も逃げてく可能性は」


「大丈夫、何もやましいことのない人間は気にしないし第一そういう人は猫しか見てないから」


「……肝心の猫が怯えて逃げ出した場合は」


「そこはほら、あんたの腕の見せどころよ。飴と鞭ってね」


「使い所が微妙に違うでしょそれ」


「細かいことはいいのよ。それにあんたがちゃんと菜更木君と猫の関係を取り持ってあげれば万事解決じゃない? 私も手が空いたら協力するし。それに男手あるとだいぶ助かるじゃない。彼なんて見るからに力持ちそうだし背も高いし雑用でもなんでもやるっていうんだからこんなお買得物件どこにもないわよ。唯一難がありそうな外見だって今回はそれが武器になるわけだしね。まあもちろんあんたが嫌だって言うならやめるけど」


「嫌ではないけど……」


「じゃあ構わない?」


「……お母さんの店なんだからお母さんが決めて。私は構わないから」


「ほんとにいいの? 少しは自己主張したら」


「だから私は構わないって」


「そう、わかったわ」


 宇乃の母はそう言うとくるっと振り返る。


「おまたせ菜更木君。ごめんね二人でこそこそ話してて」


「いえ、お気になさらず」


「それでさっきの話だけどあなたを主に用心棒兼雑用って形で雇いたいんだけど大丈夫? タダ働きなんて言わずにちゃんと最低賃金以上は払うから」


「ここの人間にさせてもらえるならいくらでも構わないですしなんだってやりますよ! で、用心棒ってなにすりゃいいんすか?」


「借金取りのヤクザとの攻防」


「……マジっすか?」


「嘘よ嘘。まあちょっとした防犯よ」


「まさか猫に何かする輩がいるんじゃないですよね……」


 と、途端鬼の形相になる菜更木。その面を前に鵜ノ浦母も思わず(怖っ。カタギの顔じゃないでしょこれ……)などと少し怯える。


「いや、そういうわけじゃないんだけどね、まあそういうこともあるかもしれないからそっちも睨み効かせてくれればありがたいんだけど、いやでも睨み効かせるっていってもほんとに睨みつけるんじゃなくてこう防犯的な意味でミテマスヨーみたいな感じでね? その顔で睨んだりしてたらほんとにお客いなくなっちゃうから」


「そんなっすか? 割りと普通にしてるつもりなんすけど」


「それで……ま、まあともかく怪しい動きしてる人とかいないか見てほしいのよ。まぁあなたがいてくれればそれだけでもだいぶ防犯になる気もするけど。もちろん一応店の仕事もある程度しつつね」


「了解っす。具体的に怪しい動きってなんすかね。猫になんかするの以外に」


「えーっとその……撮影?」


「ここって猫の撮影禁止だったんすか?」


「いや、猫は禁止してないわよ。もちろん近くでフラッシュ焚いてとかはダメだけど。猫の目に影響あるからね。なんていうか、隠れて猫以外を撮影しようとしてるんじゃないかなーみたいなのとかね?」


「……よくわかんねえっすね」


「あー、とにかくこう、猫目当てで来てるわけじゃなさそうだなーっていう人をね、もっと言うと特に一人で来てる男性とか、そういう人を注意深く見てほしいのよ。ともかくその都度言うから」


「了解っす。まあどんなことでもするんでそんときゃ遠慮無く言ってくれていいっすから」


「うん、ありがたくそうするわ。よろしくね」


「こっちこそよろしくお願いします。ほんとありがとうございます恩に着ます」


 菜更木はそう言うと深々と頭を下げ、続いて宇乃の方に向き直る。


「師匠もほんと色々とあんがとな。これからもよろしく頼むぜ」


「うんまあ、どういたしまして。ていうかそれこれから師匠って呼ぶ気してんの?」


「いや、だって師匠だろ?」


「いや、だから師匠じゃないって」


「じゃあ先生か?」


「先生でもないし」


「……先輩?」


「同級生だろ」


「姐御?」


「なんでそうなる」


「……姐さん」


「ほぼ同じでしょ。いやだからそういうことじゃなくてさ、そういう変な呼称は全部なし。普通に名前呼べばいいでしょ」


「いいのかそれで?」


「いいというかそうして」


「んじゃ鵜ノ浦さんか」


「……菜更木にさん付けされるとなんか気持ち悪いな……ていうかさっきまで普通に呼び捨てしてたでそ。あれでいいよ別に」


「いや、でも師匠なんだから最低限の敬意は払わねえとよ」


「いいってそんなの。第一師匠じゃないし」


「そうか、まあそっちがそこまで言うなら仕方ねえけど。とにかくよろしく頼むぜ。そっちもなんかあったら遠慮なく言ってくれよ。いくらでも恩は返すからよ」


「うん、まあ気が向いたら。店のほうもよろしく」






 ということで菜更木は大きな収穫を得て意気揚々と帰っていった。鵜ノ浦はそれを見送り、ふっと肩の力を抜く。


 しかしまさかあの菜更木があんな猫好きだったとはな……夢が岩合光昭に弟子入りって。けど意外に面白いんだなあいつ、まさかあんな変な奴だったとはな……


 鵜ノ浦はそんなことを思いつつ、すぐに切り替えて店の手伝いに戻っていった。









「猫とマッチョと縁の円」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「コメディー」の人気作品

コメント

コメントを書く