猫とマッチョと縁の円

涼木行





 菜更木英士の朝は早い。早いといってもそこまで早くはなかったが、とはいえ大多数の高校生に比べれば早かった。理由は単純、朝ごはんと昼食の弁当を作るためである。


 菜更木家は一応五人家族だ。そのうち一人はほぼ365日家にいない。いわゆる「戦場カメラマン」である父である。年に二回帰ってくればいい方であり、また戦場カメラマンという特殊で危険も伴う仕事であるため「俺のことは死んでいるけど盆にはたまに帰ってくる仏さんみたいなもんだと思え」などと家族に対しては言っている。


 母は看護師。夜勤も多く、昔から朝や夜に家にいないことは多い。そのため昔から家事の多くを兄弟三人で分担して行っていた。私は仕事で忙しいから家事は家族みんなで分担しましょうという母の提案と、夜勤のある母に自分たちの夕食や朝食や弁当を作ったり洗濯物等家事をしたり云々はさすがに大変すぎるだろうと見かねた子供らからの提案であり、結果家族四人全員で分担して協力してという現在の体制ができたわけであった。


 とはいえ、父がほぼ家にはおらず英士以外は三人全て女性であるという環境上、唯一男の英士はどうしても一番立場が弱く必然的に家事も姉と妹から押し付けられ気味であった。どれだけ体を鍛え筋肉を肥大させても、女ばかりの環境の中徒党を組まれてはどうしても従わざるをえない空気があった。加えて春から姉が高三になり大学受験を控えているということで家事負担も減り、その分英士に回ってきて、一層しなければならないことが増えるという状況である。とはいえ家事も含めてそんなことにはとっくに慣れたし、家事自体どちらかというと好きですらあった英士にとってはさほど苦痛なことではなかった。


 とはいえとはいえ、起きた時には今日から新学期でまた早く起きて朝飯弁当作る日々に戻るのか、などと多少の憂鬱さはあったわけである。




 英士は手慣れた様子で朝食と弁当を作り終え、その頃にはすでに起きて各々支度や多少の家事もすませていた家族が食卓に集まっていた。しかしそこに夜勤の母の姿はなかった。そして、


「朝食は毎日英士君が作っているんですか?」


「そうですよ。朝食と弁当はこいつの担当。料理全般そうですけどね。おばーちゃんの店でがっつり叩きこまれたから結構なもんですよ」


 と英士の姉、今日子は当たり前のように食卓に腰を下ろしている昨日現れた謎の居候の女、百目木どうめきエンに答えていた。




 昨日、あの出来事の後。すべては猫のため、とエンを家に泊めるべく英士は母に相談。しかし仕事で忙しい母とはまともに話はできず、「とりあえず母さんに一任するからおばあちゃんに聞いて!」と一方的に電話口で言われる。
 そこで英士は彼女を祖母が経営するカフェアンドバー、「キープハート」に連れて行った。


「キープハート」は母の母親、英士の祖母が経営する店であり、元々の経営者である祖父がなくなってからは英士の祖母と叔父が中心となっていた。常連客も多くバーと言っても敷居は低い地域に根づいた大衆居酒屋的な要素すらもっていた。


 ともかく、自宅からそう遠くはない店にエンを連れて行き、祖母に会わせて説明した。エンの方からも真偽の程は定かでない虚実入り交じってそうないかにもつくり話といった同情心掻き立てられる物語が語られ、またその語り口も慣れているのか実に巧妙であり、結果、店の人間全ての同情を買い(ついでに何故か酒までごちそうになり)、


「いくらでもうちに居候しな! うちっていってもまあ娘一家の家だけどね、一軒家で客室もあるしどうせろくに使ってない旦那の部屋が一つ余ってるしそもそもあの男も世界中で色んな人に助けられ居候とかもしてるんだから巡り巡って恩返しみたいなもんよ! それに大人が一人くらいいたほうが私もあの子も多少は安心できるしね」


 などということであっさり無期限の居候が決定したわけである。英士は自分の体験とその多少異様な様子から、


(こいつもしかしてさっき俺にやった縁結びみたいなもん使ったんじゃねえか? いやにうまく行きすぎだろ……)


 などと思ったのだが、それは彼女を家に連れて行き姉妹に合わせたところで確信に変わる。祖母の許可があったとはいえ、完全に初対面のエンを二人もまたあっさりと受け入れたのであった。


 確かに姉妹は人見知りなどせずコミュニケーション能力とやらも高く初対面だろうと誰とでもそれなりにすぐに関係を築ける器用さ、懐の深さのようなものがあったのだが(女性に対しては特にそうであり、そうした能力は戦場カメラマンたる父の幼少期からの教えや振る舞い、カフェアンドバー経営者である曽祖父の教えや振る舞いの賜であり、さらにそういった様々な年齢層の不特定多数の人間が集まる場所に子供の頃から出入りしていたことや店繋がりでの交友関係の広さもあってのものであった)、それにしてもこれはさすがにトントン拍子に行きすぎだろ、絶対縁結びとかなんかそういうのでうまくやってんだろこいつ、などと英士は確信に近い疑念を抱いたのであったが、まあなんだかんだ俺からしても都合よくいったし言わぬが花? とかいうやつだな、と特には何も言わずにおさめたのであった。


 とまあそういうわけで縁使いを名乗る百目木エンは何事もなく菜更木家の一員となり、最初からそこにいたかのように朝の食卓に混ざっていて、そのあまりの自然さに、


(うちの家族が外部の人間にかなりおおらかだってのはあるけど、それにしたってすんなり収まりすぎててさすがに怖いなこれ……縁使いってのはマジなんだなやっぱ。てかすごすぎだろ、マジでなんなんだよこいつ……)


 などと多少の警戒心を抱く英士であった。








 昨夜、エンを家に招いた後、英士の部屋でようやく「話」が行われた。


「ここがあなたの部屋ですか。しっかししょうもない部屋ですねぇ」


 エンは部屋に入ると開口一番そう言い放った。英士の部屋は二階にありそこそこの広さがあって、白い壁に床はフローリングと比較的殺風景なものである。部屋の中にはベッドに机があるくらいであり、スペースのほとんどはバーベルなどの筋力トレーニングのための道具が置かれていた。


「入って早々人の部屋しょうもないとか言ってんじゃねえよ」


「いやぁ、だって筋トレ道具ばかりじゃないですか。バーベルだとかなんかジムにあるベンチプレスの台みたいなのとかそんなので部屋埋め尽くして。年頃の高校生の部屋がこれってさすがにちょっと引きますよ」


「しょうがねえだろ他に置く場所ねえんだし。筋トレの道具は結構場所とんだよ」


「部屋を犠牲にしてまで筋トレにかけるってのが若干引くんですよね……なにか目的があってやってるんですか?」


「別にただの趣味だよ」


「高二にして趣味で筋トレ……そこはかとなく気持ち悪いですね。何がそこまで筋トレに走らせるのか……」


「うっせえな。色々あんだよ」


「……あなたさっき猫のためならなんでもするって言いましたよね? 教えて下さいその色々」


「……なんで」


「ただの好奇心です。まあ知ろうと思えば知れますけど勝手に人の心読むのもあれですしね。それに本人の口から直接聞いたほうが面白いですし。さあ」


 その言動に(性格わりぃなこいつ……)などと思いながらも猫のためだと自分に言い聞かせる英士。


「――こう、自分のことを無条件に全肯定してくれるもんは鏡に映る自分の筋肉だけっていうかよ……」




「――何が原因かは知りませんが、だいぶ追い詰められていたようですね……」


「別にそんなんじゃねえよ。ただ体動かしてりゃスカッとするし筋トレもそうだしな。結果もはっきり目に見えて達成感みたいなのもあるし。その、猫の方が全然な分……」


「愛する猫に嫌われる悲しみを筋トレで肥大する筋肉で埋めていたというわけですか……やっぱり最高に気持ち悪いですね」


「うるせぇほっとけ」


「まあ人それぞれですしね。ところでその猫の方はどうなってるんですか? ぱっと見た限り部屋のどこにも猫に関するものはありませんけど」


「いや、それはまあ……」


「まあ言わなくてもわかってますけどね。どこに隠してあるかも」


「……マジで?」


「縁の力ですよ。決して誰にも見つからないようクローゼットやベッドの下に隠しているわけですね。それで、なんで隠してるんですか?」


「……もうわかってんだろどうせ。その縁の力とかでよ」


「確かに知ることもできますけどこういうことは自分の口から言うべきだと思いますね。それが猫との関係を改善する第一歩です。さあ、猫との縁をきっちりと結びバラ色の猫ライフのためにも打ち明けるのです!」


「――お、俺みたいなのが猫を好きだなんて恥ずかしいからです……」


「もっとはっきりと、そこを詳しく! 俺みたいなの? 猫を? 恥ずかしい? ごまかさないでちゃんと言葉にして!」


「お、俺みたいな図体デカい筋トレ趣味の強面野郎がちっちゃくてかわいい猫みたいなものを好きだなんて人に知られるのは恥ずかしいし知られたら絶対バカにされるからです! って何言わせてんだてめえ!」


 菜更木はそのままでかい体を縮こませて(うわーマジこれ恥ずかしいわ死ぬ)と顔を両手で覆う。


「ノリノリで言っといて何言ってんですかあなた。でもまあ自分の口で言えたのは少しばかりですが進歩ですね。しかしそこに問題の本質があるんですよ。あなた、猫を愛することを恥ずかしいと思っているような人間が猫から愛されると思いますか?」


「そ、それは、」


「否、愛されるわけないじゃないですか。人だろうと猫だろうと基本は同じですよ。人の目など気にして愛することを恐れ恥ずかしがっているような者が誰かから愛されるなんてことはまずありません! そこを克服しないことにはあなたと猫の縁が結ばれるような日は決して訪れないでしょう! ガッテンしていただけましたでしょうか!?」


「……ガッテン、ガッテン」


「結構です、あなたも少しわかってきたようですね。まあともかく、あなたは今目標への階段を一段登りました。その一段は遥か高みを見上げればわずかばかりの一段でしょうが、あなたにとってはかけがいのない一歩なのです……」


「なんでそんな自己啓発セミナーっぽいんだよ」


「好きなんですよそういうの。こう、相手を意のままに操ってるぞフフフフフ、という感じが。ていうか自己啓発セミナーなんて見たことあるんですか」


「いや、完全にイメージ」


「ですよね。まあ長ったらしい前置きはこの辺にしといて本題にいきましょうか。その前になにか質問とかありますか?」


「質問……あぁ、そういや少し気になってたんだけどお前ばーちゃんや姉貴らにも縁結びっての使ったか?」


「察しがいいですね。まあ縁結びっていってもあなたと猫に対して行ったような強制的なものではありませんから。もともとあった縁を少しいじって強くして加速させたって程度のものなので」


「……よくわからん」


「そうですね……まず縁っていうのは誰に対しても何に対してもあるものなんですよ。ですから正確には『縁がない』なんてことはなくて『縁が薄い』とか弱いとか遠いとかほとんどないって話で、完全にゼロっていうことはあり得ないんですね。例えば産みの親との縁が100だとすると、地球の裏側に住んでる名前も存在も知らないような人との縁は1しかないとか、でも同じ時代同じ地球にいることは事実なのでものすごく弱く遠い縁でかろうじて繋がってはいる、という感じです。わかりましたか?」


「なんとなくは」


「まあそういうわけですからもともとあなたのお母様やご姉妹とは縁があることはあったわけですよ。そもそもこの広い地球であなたの紹介とはいえ実際に出会う時点でかなり強い縁があるということですが、まあそういうのを『縁がある』と言ったりしてるわけですね。ともかくその縁を少しいじくって強化した結果迅速に居候という形になっただけですから、別になにか洗脳したり操ったりというわけでもないので安心してください」


「……まあなんとなくはわかった。とにかくこっちとしてもすんなりいったから助かったわ。で、その猫の話なんだけどよ」


 と英士は猫の部分で声を潜める。


「ええ。まず説明した通り私のような縁結びの術をあなたが獲得するというのは限りなく不可能に近いのでそちらは諦めてください。で、とりあえず二つ、先ほどのようにあなたの猫の縁を一時的に強制的に結ぶこととあなたが猫との縁を獲得するためのサポートをすることは可能です」


「それだけでもすげえ助かるわ。けどほんとにそこまでしてくれんのか?」


「もちろん先ほど話した通り対価は頂きます。とりあえずあなたのおかげでタダ同然の住居は頂けましたので、まあ後は日頃の家事や食事でもお世話になりますしね。それと金銭を少々」


「金とんのかよ」


「もちろんですよ、これだって仕事ですから。いくら居候させてもらえるとはいえ家賃や食費は幾らか払う必要はありますからね。私としては出費はできるだけ抑えたいので、まあそんなに沢山は要求しませんよ、あなただってまだ高校生ですしね。ですからまあ日々の酒代を幾ばくか貰えればとりあえずはそれで結構です」


「……そもそも酒飲まなきゃ出費抑えられんじゃねえか?」


「それは無理な相談ですね。一応言っときますがなにも私は楽しみだけで酒を嗜んでいるわけではありません。いわゆる御神酒というやつですよ。縁結びの神や神社があるように縁に関わるというのは非常に霊的・神的な行為なわけです。小規模ですが一種の神事だとでも思ってください。そのためには御神酒、日本酒から得る力が必要なんです」


「すげえ都合のいい話だなそれ。ほんとかよ」


「疑うならこの話はなかったことにしても構わないのですが」


「いや、すいませんもう疑ったりしないんでどうかお願いします」


「素直でよろしい。金はまあ成功報酬とあなたが働き始めてからの出世払いで構いませんよ。さて話を戻しますが、先ほど話した二つのうち前者、あなたと猫の縁を強制的に結ぶというのは色々と問題があるのであまり期待しないでください」


「なんでだよ、さっき簡単にやってたじゃねえか。あの感じでずっと結べばいいんじゃねえのか?」


「それは無理ですね。一時的に結ぶということ自体はさほど難しくはないんです。でもあれは一時的なものでしたよね。それにはちゃんと理由があるんです。そうですね……ようするにあれは磁石の反発する面同士を無理やりくっつけてるようなものなんです。磁石の反発する面同士をくっつけるには力がいりますしくっつけられても反発する力は働き続けてまた離れてしまいますよね? それと同じなんですよ。
 本来あなたと猫の間にはおよそ縁と呼べるものがまったくないわけです。縁というのはある意味人と人を繋げる力のようなものですが、あなたと猫の場合はそれが全くないどころかむしろ離れ合う力が働いているわけですよ。それで猫はあなたから逃げるわけですが、ともかくそういう本来なら反発しあう力が働いているものを無理やり繋げているわけですからすぐに限界がきて切れてしまうわけです。そういった関係にあるものを永久的に繋げるには膨大な縁とエネルギーが必要なわけですし、私のような縁を結べる人間が始終近くにいてつなぎ留めて置かなければならないわけですから、まあ限りなく不可能に近いということは理解していただけましたか?」


「大体は。てか俺と猫ってそんな絶望的な関係だったのかよ……」


「こればかりはどうしようもありませんよ、そういう星の下に生まれたってことですからね。まあ運命ってやつです」


「けどよ、だったらずっとじゃなくて切れたら結んで切れたら結んでってのはできるんじゃねえのか? 一日一回とかの頻度で」


「できることはできますけど、あなたこれ覚えてますか?」


 エンはそういって和服の袖から五円玉を取り出す。


「……五円玉だよな」


「ええ。でもこれはただの五円玉ではありません。先ほどあなたと猫の縁を結ぶ際私がこれをあなたの胸元に入れたのは覚えてますよね。その際五円玉は胸元に吸い込まれて消えましたよね?」


「ああ、そういや」


「あれはこの五円玉が普通の五円玉とは違うからなんです。驚かないで聞いてもらいたいのですが、なんとこの五円玉は縁でできた五円玉、すなわちご縁玉なのです!」


「……なに言ってんだあんた」


「ああ、音にするとこんがらがりますよね。つまりこの五円玉、ここでの五円玉っていうのは普通のお金としての五円硬貨のことですから。ともかくこの五円玉は縁、このエンは縁結びのエンのことですけど、縁でできているわけです。正確には縁が込められている、ですね。縁っていうのは本来なら目に見ることはできない一種の超自然的エネルギーみたいなものなわけですけれども、ともかくその縁を大量に込めることで縁を目に見える形にしたのがこの五円玉、つまり縁でできたご縁玉というわけです。ちなみに最後のご縁玉のゴエンは五円硬貨のゴエンではなく『ご縁があればまた』などのご縁です。大丈夫ですか?」


「ものっすごくややこしかったけどまあなんとか」


「ほんとですか? 見るからに脳筋バカで難しいことは全然理解できないって感じですけど」


「別に脳筋じゃねえよ。高校入れるくらいの学力はあるわ」


「ほんとですか? どうも疑わしいんですよね。筋肉で脅したとかじゃないんですか?」


「筋肉で脅すってどんなんだよ」


「ほらなんかこう、ボディビルダーみたいにオイルでテッカテカに光らせた筋肉をポージングによってこれでもかと強調しつつ実にさわやかな笑顔で迫り来るっていう」


「怖えわ。てかさすがにそれで屈する人間そうそういねえだろ」


「そうですね、第一あなたに笑顔で迫り来るなんて無理でしょうし」


「……否定はしねえが脅すなら強面のほうが効果あんだろ普通」


「わかってませんね、あのテカリきった人工的な筋肉の上にやたら童顔で目がキラッキラした笑顔が乗っかってるからこそ奴らは怖いんじゃないですか」


「思ったんだけどお前ってだいぶ偏見まみれだよな」


「失礼な。私のは偏見ではなく多数派の意見の代弁ですよ」


「ほんとああ言えばこう言うだな」


「そういうあなたは英語でYOU」


「……………………」




 間、静寂。後、菜更木の無反応に対しエンは「はっ」と小馬鹿に鼻で笑う。


「ほんとつまらない人ですよねーあなた。笑うとこですよここ」


「つまらねえのはお前のほうだろ」


「このユーモアがわからないあなたの感性がつまらないって言ってるんですよ。まあ万が一? 億が一? こちらのジョークがつまらなかったとしてもですね、そこで苦笑いの一つでもするってのが円滑なコミュニケーションってもんじゃないですか。それがあなたは無視、無反応。ハナからキャッチボールの拒絶。まったくそれじゃ縁が一向に回らないわけですよ」


「今まで十分相手してただろ。だいぶとんでもねえ暴投もがんばって捕って返してたと思うぞ」


「なら最後まで続けないと。それに私のは暴投じゃなくて切れ味抜群な変化球です。私が悪いんじゃなくて下手で捕れないあなたの責任ですよ。まあでもしょうがないかもしれませんね、私の変化球はホセ・フェルナンデスのスライダーくらいキレッキレなんで。素人には少し難しかったかもしれません」


「その自画自賛と責任転嫁っぷりだんだん感心してきたわ。てか俺がホセフェル知らなかったらどうすんだよそれ」


「だから縁が見れればそういうことだってわかるんですよ。身内にしか通用しない内輪ネタだのパロディをどこでも平気でするような閉鎖的排他的なオタクちゃんとは違うんで」


「ほんと口を開けば偏見が出るな」


「今のも偏見じゃないですよ。客観的事実です。まーそんな話はどうでもいいんですよ今は。ちょっと脱線し過ぎましたね。あなたもほんと欲しがりさんですよね。まあ私がサービス精神旺盛すぎるってのもありますけど」


「おぉ、もういいぞそういうことで」


「実際そうですからね。では縁の話に戻りましょう。まあともかくこのご縁玉です」


 そう言ってエンは再び五円玉を見せる。


「これを使うことで先ほどはあなたと猫の縁を結んだわけですよ。つまりこれがないとああいった縁結びはできないってことです」


「でもあんだろ?」


「あることはあります。けれどもさっきの話でこれがそうぽんぽん使うわけにはいかない貴重で重要なものだってことはわかりましたよね? これはいわば私達縁使いの商売道具みたいなものです。一度使ったら先ほどのように消えてしまいますからね。それにそう簡単に作ることができるようなものでもないんですよ。まあ作り方自体は縁を集めて一定量込めるってだけの話ですけどその縁を集めるっていうのが結構大変な作業ですからね。まあそういうわけですから、先ほどはタダで使ってあげましたけど本来なら有料なわけです」


「……ちなみに一回お幾らで」


「場合によりますが、まああなたと猫の縁結びの場合はざっと一回一万円ってところですね」


「たかっ!」


「でしょ? ですが一応お金は払わずこれを使って縁結びをする方法もあるのですが……」


「あるんじゃねえか。どうやんだよ」


「あなた自身が縁を集めるんです」


「……どうやって?」


「それについてはCMのあと」









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