以心伝心

うみかぜ

第四十二話 教えて!!仁人

未来仁人は机全体に莫大な紙を乗せ、こういった。
「タイムマシンの設計図。」
なんだが、そのすごい細かく、知らない用語が隅から隅まで書かれている。仁人は『トンボ仮面』をしているので余計見づらい。
「これ、マジで俺が作ったのか?」
「マジだ。」
自信満々に未来仁人は頷いた。
「誰と作ったんだ?」
「一緒に作った5人の仲間じゃな。」
そういい、またコーヒーを啜った。
「あれから、俺はマジで勉強して色々な理論を証明し、応用、実用させ、タイムマシンを完成させたんじゃ。まあ、それだけではなかったがな……。」
本当に、にわかには信じがたいことだった。
「だけど、何故?タイムマシンを?」
と疑問を口にする。
「知ってるじゃろ?こんな未来だからだ。過去を取り戻すためじゃ。まあ、後は自己満足の世界じゃな。」
と未来仁人言った。
「後、いくつか質問したいんだ。」
と仁人は一旦深呼吸をして続けた。
「俺とかの『能力』ってなんなんだよ。」
「ほう、そのことか。」
と未来仁人も一旦座った。それから、ゆっくりと話始めた。
「能力を会得するには、死に関わらなければならない。死に関わる予定・・がある人も対象じゃ。なお、なんの能力が手に入るかは不明。自覚なしの者もあり。」
と告げた。
「そのほかの話じゃが、精神状態が狂った場合、能力は暴走する。制御不能となる。」
「陽奈とかか……。」
事故を阻止しようとした時、あれは間違いなく制御できていなかったと思う。未来仁人は続ける。
「何度でも能力を会得するのは可能だが、その度に寿命は縮まり、精神状態は狂う。なお、自覚はなし。つまり、能力を会得しようとするごとに、精神状態が狂い、能力の制御もできなくなっていく。」
「そんな恐ろしい力なのかよ。」
仁人は手をギュっと握りしめた。
「そうじゃよ。ちなみに身近にいた人も能力を持つ人たちだったの。」
「葵さんの事か?」
と真っ先に名前が出てきた。
「葵さんもそうじゃが、みーさんも直也も能力を持っている。」
「ええ!!」
二人とは深く関わっていたが、その感じはなかった。というか、全くその気配もなかった。
「言ったじゃろ?自覚なしの者もいると。」
「なるほど。周りも分からないのか……。」
と未来仁人がコーヒーを出してくれたので頂いた。
「由美さんの能力はなんだと思う?」
と未来仁人が投げかけてきた。分からなかったので、適当に投げ返してみる。
「うーん。馬鹿にする能力とか?」
未来仁人は腹を抱えて笑った。
「ガッハッハ。本当にありそうじゃが、違う。」
「違うのか……。」
それ以外、特に思いつかなかった。じゃあなんだ?と聞くとゴホンッ!といい改まってこう言った。
「それは……。『引き寄せ』じゃ。」
「引き寄せ……?」
名前を聞いただけではピンとこない。幽霊でも乗り移せるのだろうか。
「そもそも、お前と由美さんが出会ったのは偶然にしちゃ、出来すぎていると思わなかったか?あれも『引き寄せ』の能力じゃ。直也と陽奈の告白がうまくいったのもこのおかげ。『引き寄せ』の力で二人は恋人になった。」
たしかにそれなら、直也があの陽奈に告白された事に納得がいく。やっと理解できた。そう思った。
「一度過去に戻った仁人と再会できたのも、このおかげ。じゃが、……。」
と少し深刻な顔で未来仁人はこういった。
「しかし、人の縁を切る能力はなく、相性が悪かったり、邪悪な人も惹きつけてしまうことがある。陽奈とかな……。」
「なるほどな…、じゃあ、直也とかにもあったりするのか?どうなんだ?」
「直也は『モテる』という能力じゃ。」
「あー、通りで。」
「おの出来事が納得いくじゃろ?」
『若葉陽奈に告白された事か』
つまり、あの告白は『由美の引き寄せの能力。』『直也のモテるという能力。』その二人が重なりあって出来たという事になる。あの『完璧の陽奈』と言われたあいつをなぜ、ここまで直也を引き寄せたのか。再び、納得がいった。
「モテフォルモンを分泌可能。だが、最終的に選ぶのは、結局は相手次第じゃな。」
「という事はやっぱり若葉陽奈はちょろかった?」
「どうじゃろな。」
「そして、」
とまた、未来仁人は立ち上がり、こう言った。
「若葉陽奈じゃ。」
「問題はそこなんだ。」
陽奈は何個も能力を保持していた。どれだけ持っているのだろうか……。
「瞬間移動、空中浮遊、透視、時間移動
、念力。彼女はこの五個の能力を持っている。」
「そうだよな。」
あの時、陽奈が言ってた事と一致した。すなわち嘘はついていなかったらしい。
「彼女はナワに唆されたんじゃ。」
「やっぱりか……。」
未来仁人は背もたれによりかかった。
「彼女はまず、直也を失った悲しみ、で一つ目の能力を解放した。そして、ナワに目をつけられる。そこからナワから拷問が始まり、その度に能力を得た。」
「どういう事だ?」
拷問を受ける理由が見つからない。
「さっき言ったじゃろ?能力を会得するには死に関わらなければならない。または、死に関わる予定ある人が会得できる。拷問とはそのギリギリのラインじゃ。」
「なるほどな。」
毎度、死際を経験し、能力を会得していた陽奈という事になる。
「もはや彼女は途中から別人物になっていたと言っても、過言ではない、変貌を遂げてしまった。」
小学生の時の若葉陽奈からは想像できない姿だった。整形のせいだけではなかったのかもしれない。
「能力は会得するたびに精神は狂い、寿命は縮まる。恐ろしいものじゃ。」
「そんなに……。」
しかし、仁人は別に能力の恐ろしさを聞くだけに、この話を出したわけではない。もっと重要な事、やらなければならない事があった。
「では、治すにはどうすればいい!?」
と思い切って聞いた仁人。すると、こんな答えが返ってきた。
「そんなの簡単じゃ。薬を飲んだり、長期間何かをやったり、やめたりする必要もない。自分を信じる・・・・・・だけじゃ。」

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