以心伝心
第二十九話 「ありがとう」を君に
あれから仁人はバイトとトレーニングを続けた。やっと慣れてきたバイトは七月二十五日をもって、終了。という事になった。
今日はその最終日。バイトが終わってバックヤードに戻った時。
「仁人君。短い間だったけど、ありがとう。」
と店長が色紙をくれた。正直めちゃくちゃ仁人は驚いた。そこには色々な方から、仁人宛にコメントがギッシリかかれていた。
「これ、皆さんが書いてくれたんですか?」
「そうだよ。」
そこには一度しかシフトに当たらなかった人の名前もある。とても丁寧に書かれていて、仁人は嬉しさを隠せなかった。
「ありがとうございます!」
「今回はこれで終わりだけど、また、機会があればおいで。」
ふと、店長から出た言葉。だけど、それが叶う事はないだろう。後、三日後には仁人は2020年に戻ってしまう。場所が動くのではなく、時の移動だ。また会う時「朝倉仁人」という名前で会う事はないだろう。
そして、店長はポケットから封筒を出して仁人の前に出す。
「はい。今時珍しいけど、頑張った分。どうぞ。」
と店長が手渡しで給料をくれた。早く辞めるから、何か事情があるのではないかと気遣ってくれたのかもしれない。
「ありがとうございます。本当にありがとうございました!」
ほかの方にも挨拶をして、コンビニを後にした。
さあ、帰ろうとしたときに葵がコンビニの入り口で待機していた。
「おつかれさまです!」
「葵さん。お世話になりました!」
「いいってことです!」
そう言って肩を叩いてきた。
「最後だし行きますか。」
と、いつも通り土手に向かった。
もう本格的に夏だ。梅雨は明けて、蝉も鳴いている。
「うわっ、あっちぃ……。」
土手に上がると太陽が照りつけてくる。住宅街を歩いていて遮られていた日差しがもろに当たる。
「だけど、梅雨に比べてカラッとした暑さだから、心地いいです!」
と葵は自分が持ってきた鞄の中から、瓶のコーラを出した。
「なんで瓶なんですか?」
素朴な疑問。普通瓶は持ち歩かない。
「だってこっちの方が美味しいじゃないですか?」
そう言ってコーラを上に持ち上げる葵。
「味は変わりませんよ。」
「ええ!?」
仁人の返しに驚きを隠せない葵。思わず、瓶を落としそうになったので仁人が瓶を掴んだ。
「嘘でしょ!絶対ペットボトルより瓶のコーラの方が美味しいじゃないですか!」
「言いたい事はわかるけど、同じです。」
と棒読みで仁人が返す。
「納得いかないな……。」
そういいながら栓抜きを使って「んっ!!」と瓶コーラを開ける。側から見ると変な光景である。外で立ちながら栓抜きを使う人なんて、見たことがない。
そして、一気に飲む。「ごくごく」と喉越しの音が聞こえる。その音を聞いた途端、仁人もコーラを飲みたくなってきた。
「いいな……。」
ボソッとそう言う。
すると、
「大丈夫、仁人君の分もあります!」
と手に持っていた鞄からもう一本出した。
「おお!有り難い!」
仁人も栓抜きを借りて、瓶を開けた。そして、顔を隠すためのマスクを外し一気に飲む。カラカラだった喉に炭酸の刺激が入る。シュワッとしたあの感覚はなんとも言えない。
『美味い!!!』
と二人で叫んだ。
すると、葵がこっちを見た。
「仁人君ってそんな顔だったんだ!いつも、マスクつけててお昼ご飯の時もすぐ食べ終わっちゃうから、見た事なかったんだよね!」
とこっちを見て笑っている。仁人はすぐにマスクをして、目線を逸らした。
「ごめんね。」
なぜか謝ってきた。別に葵は何も悪くないのだが……。
「でも、普通にいい顔だし、マスク外しててもいいんじゃないです?」
と目線を逸らしたにも関わらず、仁人の顔の目の前に入り込んでくる。
「あ、アレルギーなんですよ。」
とまた仁人は目線を逸らした。
「あれ、照れてる?もしかして、照れてます?」と仁人の目線を逸らした方にまた入り込んでくる。何回もそれを繰り返し、仁人は面倒になって走り始めた。
「ちょ、私荷物多いからそれはズルいです!」
と二人は走り始めた。途中から二人は馬鹿らしくなって、笑いながら走った。
今日はその最終日。バイトが終わってバックヤードに戻った時。
「仁人君。短い間だったけど、ありがとう。」
と店長が色紙をくれた。正直めちゃくちゃ仁人は驚いた。そこには色々な方から、仁人宛にコメントがギッシリかかれていた。
「これ、皆さんが書いてくれたんですか?」
「そうだよ。」
そこには一度しかシフトに当たらなかった人の名前もある。とても丁寧に書かれていて、仁人は嬉しさを隠せなかった。
「ありがとうございます!」
「今回はこれで終わりだけど、また、機会があればおいで。」
ふと、店長から出た言葉。だけど、それが叶う事はないだろう。後、三日後には仁人は2020年に戻ってしまう。場所が動くのではなく、時の移動だ。また会う時「朝倉仁人」という名前で会う事はないだろう。
そして、店長はポケットから封筒を出して仁人の前に出す。
「はい。今時珍しいけど、頑張った分。どうぞ。」
と店長が手渡しで給料をくれた。早く辞めるから、何か事情があるのではないかと気遣ってくれたのかもしれない。
「ありがとうございます。本当にありがとうございました!」
ほかの方にも挨拶をして、コンビニを後にした。
さあ、帰ろうとしたときに葵がコンビニの入り口で待機していた。
「おつかれさまです!」
「葵さん。お世話になりました!」
「いいってことです!」
そう言って肩を叩いてきた。
「最後だし行きますか。」
と、いつも通り土手に向かった。
もう本格的に夏だ。梅雨は明けて、蝉も鳴いている。
「うわっ、あっちぃ……。」
土手に上がると太陽が照りつけてくる。住宅街を歩いていて遮られていた日差しがもろに当たる。
「だけど、梅雨に比べてカラッとした暑さだから、心地いいです!」
と葵は自分が持ってきた鞄の中から、瓶のコーラを出した。
「なんで瓶なんですか?」
素朴な疑問。普通瓶は持ち歩かない。
「だってこっちの方が美味しいじゃないですか?」
そう言ってコーラを上に持ち上げる葵。
「味は変わりませんよ。」
「ええ!?」
仁人の返しに驚きを隠せない葵。思わず、瓶を落としそうになったので仁人が瓶を掴んだ。
「嘘でしょ!絶対ペットボトルより瓶のコーラの方が美味しいじゃないですか!」
「言いたい事はわかるけど、同じです。」
と棒読みで仁人が返す。
「納得いかないな……。」
そういいながら栓抜きを使って「んっ!!」と瓶コーラを開ける。側から見ると変な光景である。外で立ちながら栓抜きを使う人なんて、見たことがない。
そして、一気に飲む。「ごくごく」と喉越しの音が聞こえる。その音を聞いた途端、仁人もコーラを飲みたくなってきた。
「いいな……。」
ボソッとそう言う。
すると、
「大丈夫、仁人君の分もあります!」
と手に持っていた鞄からもう一本出した。
「おお!有り難い!」
仁人も栓抜きを借りて、瓶を開けた。そして、顔を隠すためのマスクを外し一気に飲む。カラカラだった喉に炭酸の刺激が入る。シュワッとしたあの感覚はなんとも言えない。
『美味い!!!』
と二人で叫んだ。
すると、葵がこっちを見た。
「仁人君ってそんな顔だったんだ!いつも、マスクつけててお昼ご飯の時もすぐ食べ終わっちゃうから、見た事なかったんだよね!」
とこっちを見て笑っている。仁人はすぐにマスクをして、目線を逸らした。
「ごめんね。」
なぜか謝ってきた。別に葵は何も悪くないのだが……。
「でも、普通にいい顔だし、マスク外しててもいいんじゃないです?」
と目線を逸らしたにも関わらず、仁人の顔の目の前に入り込んでくる。
「あ、アレルギーなんですよ。」
とまた仁人は目線を逸らした。
「あれ、照れてる?もしかして、照れてます?」と仁人の目線を逸らした方にまた入り込んでくる。何回もそれを繰り返し、仁人は面倒になって走り始めた。
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