以心伝心
第二十八話 分からない
直也が帰り、由美が学校から帰ってきた。そして、あったことを全て話した。
「仁人がそれでいいって言うなら協力する。」
「ありがとう由美さん!」
そして、仁人は、高瀬美沙にも教えられていた電話番号を見て、電話をかけた。
「夜上です。」
「はい。」
そして、また一つ、一つ説明をする。
「なるほど。そうなってしまっては、私には否定できません。当日、私も行きます。監視は多い方がいいと思うので。」
「分かった。お願いするよ。高瀬さん。」
そう言って電話を切った。
七月十五日。
仁人は、この日もバイトだった。
「今日、バイト何時まで?」
と由美が聞いてきた。
「16時までです。」
「じゃあ、わたしの方が帰り遅くなるかも。」
「はーい。」
そう言ってる間に仁人は準備を、終えた。
「じゃ、仕事行ってきます。」
「頑張ってね。」
「みーさんも。大学がんばって。」
「ありがと。」
そう言い残して家を出た仁人。五分歩いてバイト先に到着した。
今日の天気は雨だ。降っては止んで、降ってはやみ、まだ梅雨らしさを物語る。いつも通りの道でも、雨だと違う雰囲気があって、違和感がある。
コンビニに到着し、着替えていつも通りバイトを始める。だいぶ仕事内容も慣れてきたのでスムーズにできるようになってきた。
「もう、私は必要ないかもね!」
と葵は言っていたが、まだ不安要素はあるので一応ついてもらっていた。
そして、予定通り、仁人は16時にバイトを終えた。このまま帰る事はせず、山遠川目指して歩き始めた。仁人は何か、心にもやもやとしたものがあった。ほとんどは、七月二十八日が近づいている。これが大きかった。
「ふう。」
と大きくため息をついた。
すると、目の前に小学生の三人組がいた。楽しそうに話している。それを見て「はあ……。」
とまたため息をした。一度目線を空に逸らし、もう一度目線を前に向けた時だった。小学生の一人が、自転車でよろける。後ろからは車が来ていた。
「危ない!」
仁人は反射的にそう言った。
車はよろけた小学生に気づき、手前でブレーキを踏んで止まったが、間一髪だった。
「大丈夫だ……。驚くな……。落ち着け。」
気づけば山遠川に到着した。
天気は朝と変わって晴れはじめた。日差しが眩しい。
仁人は少し歩き、土手で呆然と立っていた。土手は実に穏やか。ここにくると心が軽くなる。
すると、「トントン」と肩を不意に叩かれて、ちょっと驚いて後ろを見ると、
「どうかしたの?」
そっちを見ると葵がいた。
「なんか元気なさそうだから、付いてきちゃった。」
悪戯な笑みを浮かべてそんなことを言っている。
「バレましたか。」
「逆にあれで隠せてると思ってたんだ。」
ふふっ。と葵は笑った。
「で?どうしたの?」
そう聞かれても仁人には答えることができない。ここで下手な事を言って、どう未来が変わるか分かったもんじゃない。
「友達と喧嘩したんです。」
ここは嘘をつくことにした。
「なるほど。それで元気なかったんだ。」
あっさり、信じてくれた。変に罪悪感が残る。
「でも、喧嘩ってするもんだよ。喧嘩するほど仲がいいって言うし、自分に興味があるから相手は批判をしてくる。でも、そこで終わるじゃなくて、最後にお互いが認め合って、初めて友達だと思うんだ。」
葵は仁人の嘘の悩みにしっかり答えてくれた。
「すごい、いい事言いますね。」
「いい事を言ったつもりなんてありません。事実を言ったまでです!」
あれ、この人こんなにいい事言う人だっけ?そう思った。まだまだ、葵と言う人間の全部を知れていない。ちょっと意外な発見だった。
「ありがとうございます。おかげで少し元気が出てきました。」
土手は強い風が吹いている。草は揺れ、鳥は飛び立つ。
二人は土手を後にした。
「じゃあ、俺ここ直進なので…。」
「うん。じゃあね!」
葵とは別れ、一人家へ向かう。
「認め合う……か。」
その言葉について仁人は考えていた。直也は死んだ後、自分の事をどう思っていたのだろうか?憎んでいただろうか?はたまた、笑顔で許してくれていた、だろうか。
「仁人がそれでいいって言うなら協力する。」
「ありがとう由美さん!」
そして、仁人は、高瀬美沙にも教えられていた電話番号を見て、電話をかけた。
「夜上です。」
「はい。」
そして、また一つ、一つ説明をする。
「なるほど。そうなってしまっては、私には否定できません。当日、私も行きます。監視は多い方がいいと思うので。」
「分かった。お願いするよ。高瀬さん。」
そう言って電話を切った。
七月十五日。
仁人は、この日もバイトだった。
「今日、バイト何時まで?」
と由美が聞いてきた。
「16時までです。」
「じゃあ、わたしの方が帰り遅くなるかも。」
「はーい。」
そう言ってる間に仁人は準備を、終えた。
「じゃ、仕事行ってきます。」
「頑張ってね。」
「みーさんも。大学がんばって。」
「ありがと。」
そう言い残して家を出た仁人。五分歩いてバイト先に到着した。
今日の天気は雨だ。降っては止んで、降ってはやみ、まだ梅雨らしさを物語る。いつも通りの道でも、雨だと違う雰囲気があって、違和感がある。
コンビニに到着し、着替えていつも通りバイトを始める。だいぶ仕事内容も慣れてきたのでスムーズにできるようになってきた。
「もう、私は必要ないかもね!」
と葵は言っていたが、まだ不安要素はあるので一応ついてもらっていた。
そして、予定通り、仁人は16時にバイトを終えた。このまま帰る事はせず、山遠川目指して歩き始めた。仁人は何か、心にもやもやとしたものがあった。ほとんどは、七月二十八日が近づいている。これが大きかった。
「ふう。」
と大きくため息をついた。
すると、目の前に小学生の三人組がいた。楽しそうに話している。それを見て「はあ……。」
とまたため息をした。一度目線を空に逸らし、もう一度目線を前に向けた時だった。小学生の一人が、自転車でよろける。後ろからは車が来ていた。
「危ない!」
仁人は反射的にそう言った。
車はよろけた小学生に気づき、手前でブレーキを踏んで止まったが、間一髪だった。
「大丈夫だ……。驚くな……。落ち着け。」
気づけば山遠川に到着した。
天気は朝と変わって晴れはじめた。日差しが眩しい。
仁人は少し歩き、土手で呆然と立っていた。土手は実に穏やか。ここにくると心が軽くなる。
すると、「トントン」と肩を不意に叩かれて、ちょっと驚いて後ろを見ると、
「どうかしたの?」
そっちを見ると葵がいた。
「なんか元気なさそうだから、付いてきちゃった。」
悪戯な笑みを浮かべてそんなことを言っている。
「バレましたか。」
「逆にあれで隠せてると思ってたんだ。」
ふふっ。と葵は笑った。
「で?どうしたの?」
そう聞かれても仁人には答えることができない。ここで下手な事を言って、どう未来が変わるか分かったもんじゃない。
「友達と喧嘩したんです。」
ここは嘘をつくことにした。
「なるほど。それで元気なかったんだ。」
あっさり、信じてくれた。変に罪悪感が残る。
「でも、喧嘩ってするもんだよ。喧嘩するほど仲がいいって言うし、自分に興味があるから相手は批判をしてくる。でも、そこで終わるじゃなくて、最後にお互いが認め合って、初めて友達だと思うんだ。」
葵は仁人の嘘の悩みにしっかり答えてくれた。
「すごい、いい事言いますね。」
「いい事を言ったつもりなんてありません。事実を言ったまでです!」
あれ、この人こんなにいい事言う人だっけ?そう思った。まだまだ、葵と言う人間の全部を知れていない。ちょっと意外な発見だった。
「ありがとうございます。おかげで少し元気が出てきました。」
土手は強い風が吹いている。草は揺れ、鳥は飛び立つ。
二人は土手を後にした。
「じゃあ、俺ここ直進なので…。」
「うん。じゃあね!」
葵とは別れ、一人家へ向かう。
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