以心伝心

うみかぜ

第十八話 再び

直也と陽奈という恋人が誕生した。
そのタイミングで仁人は頭をおさえ、うずくまってしまった。

「やはり、時間が来てしまったみたいです。幸いここなら人から見えてません。」
頭を抑えながら座り込み、かすれた声で言う仁人、
「分かっていたけど、別れは辛い。でも、絶対に戻ってくるよね?」
そう、由美は顔を覗きながら言ってきた、少し目に輝きがあったのが見える。
「はい……。絶対戻ってきます。」
「分かった。信じてる。」

そう聞こえたのを最後に仁人の視界は黒くなっていった。
『ドンッ!』
「うっ、ガァァ!!!!ァァァ」
どこかに放り出されたのかと思った。地面がなくなったと思った。
意識を取り戻すと有り得ない重力が頭にかかっているような気がした。息ができない。それが数秒続いて、しばらくすると仁人は我に戻った。
そして、今まで続いてきた、謎の体の痛みは嘘みたいに取れていた。
「ここは、公園だ。みーさんは?いない。つまり、帰ってきたんだな。」
仁人は2020年に帰ってきた。それはほぼ間違えはなさそう。仁人が未来に行った影響か、一部記憶に違いがある事に気づいた。
「これは、俺が過去に行ったから変わってしまった。って事か。」

小学校六年生の時に入院した時の日数が一週間伸びただけだった。
「なんだこれ。」
そして、腕を見ると大きな傷がついていた。切られたような後。
「いてっ……。」
遅れて少し痛みがやってきた。だけど、今切られたような気はしない。古傷といった感じだ。少し時間が経っている傷にしか見えない。

「だけど、これだけじゃ分からない。俺に入ってきた情報がこれだけじゃないかもしれない。」
そう言って仁人は一旦帰ることにした。家に帰れば何か変化が分かるかもしれない。
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
帰ってきて、「どこに行ってたんだ!」
とも、「なにしてたんだ!」とも言われていなかったので、こちらの世界でも自分は生活をしていたことが分かった。
「つまり、俺は二人いたって事?それで、記憶だけ俺が乗り移った?いや、さっきまでこの時代にいた俺は消えたのかもしれない。うーむ。まだよく分からないな……。」
家にいるのは、仁人と仁人のおじいちゃんのみ。両親は、仕事で忙しく世界中を飛び回っているらしい。だが、仁人は親に興味がないので、詳しく聞いたことは一度もない。
なので、おじいちゃんの話をよく聞いていた。お年寄りの話は自分が経験したことない話ばかりで意外と面白いものである。

仁人は1ヶ月以上ぶりに自分の部屋へと戻った。
「なんだこれ。めちゃくちゃ落ち着くじゃん。」
やはり、自分の家とは落ち着くもの。
「とりあえず疲れたし。今日休んだらまた考えよう。」
そう言って、仁人は寝床についた。

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