以心伝心

うみかぜ

第十五話 美味しいもの、作ります!

「本当に大丈夫なんですか?隼人さん。」
「任せてください!」

隼人(仁人)の食事作りはスタート。
実は、隼人はこれまでの期間、食事作りに力を入れていた。食というのは生きる前では欠かせなし、学んでおいて損はないと踏んだからだ。
「って言ったけど、何作ろうかな……。」
言ってしまったからにはいいものを作りたい。という気持ちが大きくなる。
「王道なあれでいくか……。」
「卵、あるな。よしっ!」
「あのー、卵アレルギーとか大丈夫ですか?」
と、ご両親に聞く。すると「大丈夫!」との答えがきたので、隼人は作り始めた。
その間、由美と両親が話しているのを少しだけ聞いていた。大学どう?とか、どんな先生?とかそんなありきたりな話。

まずは、野菜を切る。少し前まで包丁をろくに触った事がなかった仁人だが、それなりに上手くできるようになっている。

そして、卵を割り、牛乳を入れ、手早く混ぜる。
フライパンを熱して水を垂らす。サラダ油を馴染ませ、一旦油は捨てる。バターをたっぷりと入れ、全体に広げる。そして、卵液を一気に流し込み、かき混ぜる。半熟になったら、火から下ろして、ラップに包む。形を形成して、再びフライパンに戻す。そして、ご飯の上に乗せて完成!
そう、オムライスだ。
「早く作れる料理っていったらこれくらいしか思いつかなかったな。昨日、チキンライスは作ってあったし。まあ上手くいったしいいか。」

その後、合計三人分を用意して由美とご両親に出した。
「美味しいです!」
「すごいね。後でレシピ教えて。」
「アハハ。ありがとうございます。」
ご両親は大絶賛だった。由美はもくもくと食べている。隼人に目線を合わせようとしない。本当に美味しいのか、はたまた自分より上手くできているので、悔しいのか……。
「じ、隼人は食べないの?」
と由美が隼人の方を向いた。
「あー。俺は後で食べるから大丈夫。」
「そう……。」
そして、会話は午後も続き、日が傾いてきた。
「今日はありがとう。楽しそうで安心したわ。」
「何かあったらいつでも連絡しなさい。」
「分かった!こちらこそありがとう。」
「ありがとうございました。」
そう言って、ご両親は帰って行った。

「ふぅー。」
と一息つく仁人。
「でも、さっきのオムライスは凄かった。あそこまで上手くなってるなんて……。」
ちょっと、嫉妬もあったようだ。
「馬鹿にしないでください。俺だって成長して……。」
「っ、」

バタッとと、鈍い音が走る。
一瞬何が起こったか分からなかった。意識が飛んだ。
「仁人……、仁人……!」
そう声だけ聞こえる。どんどん小さくなる由美の声を聞きながら意識は消えていった。

気づけば布団の上にいた。
「大丈夫、仁人……、」
ゆっくり目を開くと、目の前には由美がいた。仁人の顔には「ポタ、ポタッ」っと涙が落ちていた。
「俺はどれくらい寝てました?」
「丸一日よ……、本当に心配したんだよ!!」
そう言って思いっきり抱きついてきた。こんな由美は見た事なかった。加減のしらない小学生のようだ。
「由美さんが、泣くなんてらしくない。俺の事なんて気にしないでいつも通り笑っていてください。」
「…。」
「そんなのできるわけないじゃない……。保険証もないし、今この世には『夜上仁人』が二人いる。なんて言えないし。かと言って偽物を使うなんて事もできないし、だから病院にも連れていけないし……。本当にこのまま起きなかったら……」
「アハハ……大丈夫ですよ。俺はそんな簡単にはくたばりません。」
「馬鹿……」

仁人は自分の体に何か異変が起きた事に気付いた。


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