銀眼貫餮のソウルベット -Pupa cuius oblitus est mundus-
第54話 死への執着
「ヒヒャハハハハッ!! お前、すごいっ!! 山で会ったときと違う! 別物っ!! 化物っ!! 俺、嬉しいぞっ!!」
潰れ萎縮した眼球で凝視するかのように、その小柄な男は自慢の凶器に頬ずりしながらソレの凶悪さを大手を振って歓迎してみせた。
「山でお前に目玉、潰されて、何がどうなったか、見えねえ、分からねえ。すごく惜しい、けど、ヒヒッ……。やられた耳、随分慣れてよお? 聞え、少し悪い、目も、見えない。でもその分、良く、聞えるんだぜ? フヒヒヒッ!!」
小柄な男は自身の顔面に残る痛々しい傷痕を、これ見よがしに見せ付けながら少年への執念を熱弁に語りはじめた。
「どうだったあ? 人間の身体、斬って、抉って、ばらばらにする感触っ!? ヒャハハハハッ!! すごく、すごく、たまらない。気分、良いもの、だろお? なあ? なあ!?」
「……γιγι、…………γιιιι、γι…………!?」
「皮膚が裂けて、裂かれて……。肉が崩れて、捻じ切られて……。粉微塵にするほど、飛び散る、熱い、血……。血が……、死が……。クヒヒッ……ヒヒッ……! 命、殺す快感……、獲物、屠った優越……!! 身体中、逆撫でる、死の声! 残響!! 憎悪の叫喚……!! いか、生かされてる実感……クケケケケケケッ!!!!」
殺戮の甘美な崇高さに酔い痴れる男は次第に息が乱れ、腰にぶら下げた凶器を弄ぶ手先が不規則に荒ぶりだす。
「ああ、俺、もうがまん、我慢でき、ないっ!? つぎ、次は、おれ、俺の番……。お前のその目……、耳に、舌に、喉に……。腕も、脚も、指の1本1本、全部っ!! どれもこれも全部っ!! 俺にも、やらせろおおおおおおっ!!!?」
そして、身体に染み付いた快感に溺れ、男は貪欲のままに凶器を両手に構え紅く燃えるソレへと襲いかかった。
「……γιγι、Γαααααααααα!!!!」
「ヒャハハハハッ!! そら、そらっ! そらっ!! そらあああっ!!!! ケケッ!! クケケケケッ!!!!」
またしても無謀な愚か者がその命を擲つものだと誰しもが思った。
だが、どうやら今回ばかりは様子が異なるらしい。
それまで手下の誰一人として、その鋭く無慈悲な神判をかわすことはおろか、逃れることさえ敵わなかった。
しかし、その気味悪い冷笑を浮かべた小柄な男は、その惨撃を肉が抉られる寸前のところで軽やかにかわし攻撃に転じているのだ。
「お前、動き、分かる。よく、聞えるっ! 丸分かりっ!! それじゃ、すぐ、すぐに、ばらばらだああああっ!!!?」
「……γι!? Γαααααααααα!!!?」
そしてついに、その凶悪な災いの獣を人の手による渾身の一撃がその身体を貫く。
男はソレの猛攻をかわした後、その勢いのまま宙で身をひねり、全体重をかけて手にした双刃を紅く燃える背中に突き刺したのだ。
「ヒャハハハハハハッ!!!! どう、どうだっ!? どんなだあ? 自分の肉が裂かれる、気分っ!! クケケケッ!! いい、良い感触だ……! つぎ、次はどこにしてほしいっ!? キャハハハハッ!!!!」
男はその背中に取り付いたまま、激痛に悶える少年に陰湿に捌かれ方を耳打ちし訊ねる。
そして、子供が玩具で戯れるが如くその紅く燃える小さい背中を脚蹴りした後、地に這うように着地し長い舌で卑しく返り血を舐め回す。
狂気に荒らぶる少年は蹴り飛ばされた勢いで崩れた荷物に脳天から激しく突っ込んだ。
激しい騒音と砂塵が巻き上がる中、次に仕掛けたのは一層炎の勢いを増した少年だった。
「……γι、……γι、……γιιιι、…………Γαααααα!!!?」
紅く燃える獣は背中に二本の刃を突き立てたまま、それをものともせず猛然と冷笑する男に襲いかかる。
「クケケッ! そう、じゃなきゃ。つまら、ないっ!!!!?」
男の喉を目掛けて鋭い爪が紅い弧を描いて空を斬る。
しかし、寸前の所でそれを後方にかわし、男は透かさず腰に携えた刃をソレの急所を狙い立て続けに数本投げ込んだ。
だがそれも風切り音を立てて堅い地面に突き刺さり、畳みかけるように紅い銀眼を狙い放たれた必死の一撃も、その強靭な歯牙によって阻まれ粉微塵に噛み砕かれる。
「ケケッ! このガキ、俺の投擲、もう見切ったっ!? ヒッ……、ヒャハハハッ!! で、でも、これはどう、だっ!!!?」
男はそう言い放つや不意にその場に屈みこんだ。
紅蓮の狂気はここぞと言わんばかりに紅い銀眼を閃かせ、猛烈にその歯牙で襲いかかる。
だが、その牙が男の首筋を捉えるより前に、男は潜めていた砂利をソレの眼前に投げつけ視界を奪った。
「……γι!? Γααα……!!!?」
「クカカカカッ!! お前、簡単、単純っ! それじゃ、俺、捌けないっ!!!?」
紅く燃えるソレが潰された視界のまま闇雲に辺りに斬りかり苦しむ傍ら、男は上着の胸内に仕舞った杭を両手に握り締め、錯乱するソレの両足に醜悪な笑みで打ち込んだ。
「……Γαααααααααα……!!!?」
「ヒャハハハハハッ!! これで、もう、お前、動けないっ!! クケケケッ!! それじゃ、じゃあ、仕置き、お仕置き、はじめるぞおおおおっ!!」
思わぬ反撃に流石のソレも膝を崩し、地べたに四つ這いとなって見えぬ男に向けて激情した狂気をぶつけている。
すぐさま追撃せんと上体を起こそうにも足と地面が杭によって縫い留められ、身動きがまるで取れない。
その無様に咆える獣に惚れ込むような殺意の眼差しを向け、次に男は刃物を引きずりにじり寄ってゆく。
「ケケケッ! だめ、動こくの、無駄、無意味だ。加減なしで打ち込んだ。お前がやったみたいに、足もぐか、斬り落とさないと、逃げられない。ククッ! キヒャハハハハハッ!! ……なっ!? コ、コイツッ!?」
念願の獲物をやっと捉えた。ご馳走を前に、男は下卑た笑みを浮かべ刃を舐め回す。
だが、ソレの闘争心はその躯体という枷にすら構わず、収まることを知らないらしい。
有ろうことか紅く燃え盛る炎を一層噴き上げ、ソレは足から夥しい血飛沫と砕骨音を立てて己の肉を引き裂きはじめたのだ。
予想だにしない行動に男も一瞬身構える。
「ククッ……、ヒャハハハハッ!? いいっ!! いいっ!! お前、そんなに、俺を、俺とっ!!!! フヒヒッ……!! でも、だめ、残念。それは、できない! させないいいいいっ!!!?」
片足の肉を引き千切り、今にも男に跳びかからんとするソレに、男は仕上げの一撃を見舞った。
両腕の袂から投げ出されたそれは一瞬にして宙で大きく広がり、猛り狂う獣に覆い被さった。頑丈な紐が網目状に編まれたそれは、地に這い蹲る狂気をからめ取り、その動きをいとも簡単に封じ込めて見せた。
「ヒャハハハハハハッ!!!! 予想通り、はずれじゃなかった。当たり、大当たりっ!! クケケケッ!! ……ああ、もう、動くの、やめとけ。もう、お前、どこにも逃げられない!!」
そう言って網を引き寄せると、何故か捕らえられた少年から悲痛な呻き声が上がる。
それもそのはずだ。男が少年をからめ取ったそれには、鋭い刃が返しとなって無数に縛り付けられ、獲物が網を解こうともがくほどにその刃が肉に喰い込み切り刻むよう細工されていたのだ。
「ケケケッ!! 動くほど、足掻くほど、切り刻まれるっ! ばらばらになるっ!! どうだあ? どんなだあ? 身体中の、血の、死の感覚っ!! ヒャハハハッ!! 気持ち、良いだろおおおおっ!!!?」
「……γιγιγι、……γι、Γαααααααα……!!!?」
ようやっと褒美に在り付ける。男は眼前に横たわる獲物に舌鼓しながら乱暴にその身体を蹴り上げ、転げ横倒しとなった少年に跨り欲望のままに話を続ける。
「やっと、やっと、捕まえたっ!! クケケッ!! それじゃあ、どうする? どうしてくれる? どうされたい!? ……おっと、忘れてた。その前に……!!」
「……γιιιι、γι、Γαααααααα……!!!?」
男は何か思い当った様子でおもむろに懐からまた新たな杭を抜き出すや、それを躊躇いなく少年の四肢に再度打ち込んだ。
息つく間もなく、全身を端から砕けんばかりの激痛が少年に牙を立てる。
「これで、もう怖くない。ヒヒャハハハッ!! じゃあ、まず、その忌々しい目、紅い目玉を、抉り出してやるっ! 捻じ切ってやるっ!? ヒャハハッ!! それとも、舌か? ああ、腹を開いてから、その方がずっと、面白そう。気持ち良さそうだなあ!!!!」
潰れ萎縮した眼球で凝視するかのように、その小柄な男は自慢の凶器に頬ずりしながらソレの凶悪さを大手を振って歓迎してみせた。
「山でお前に目玉、潰されて、何がどうなったか、見えねえ、分からねえ。すごく惜しい、けど、ヒヒッ……。やられた耳、随分慣れてよお? 聞え、少し悪い、目も、見えない。でもその分、良く、聞えるんだぜ? フヒヒヒッ!!」
小柄な男は自身の顔面に残る痛々しい傷痕を、これ見よがしに見せ付けながら少年への執念を熱弁に語りはじめた。
「どうだったあ? 人間の身体、斬って、抉って、ばらばらにする感触っ!? ヒャハハハハッ!! すごく、すごく、たまらない。気分、良いもの、だろお? なあ? なあ!?」
「……γιγι、…………γιιιι、γι…………!?」
「皮膚が裂けて、裂かれて……。肉が崩れて、捻じ切られて……。粉微塵にするほど、飛び散る、熱い、血……。血が……、死が……。クヒヒッ……ヒヒッ……! 命、殺す快感……、獲物、屠った優越……!! 身体中、逆撫でる、死の声! 残響!! 憎悪の叫喚……!! いか、生かされてる実感……クケケケケケケッ!!!!」
殺戮の甘美な崇高さに酔い痴れる男は次第に息が乱れ、腰にぶら下げた凶器を弄ぶ手先が不規則に荒ぶりだす。
「ああ、俺、もうがまん、我慢でき、ないっ!? つぎ、次は、おれ、俺の番……。お前のその目……、耳に、舌に、喉に……。腕も、脚も、指の1本1本、全部っ!! どれもこれも全部っ!! 俺にも、やらせろおおおおおおっ!!!?」
そして、身体に染み付いた快感に溺れ、男は貪欲のままに凶器を両手に構え紅く燃えるソレへと襲いかかった。
「……γιγι、Γαααααααααα!!!!」
「ヒャハハハハッ!! そら、そらっ! そらっ!! そらあああっ!!!! ケケッ!! クケケケケッ!!!!」
またしても無謀な愚か者がその命を擲つものだと誰しもが思った。
だが、どうやら今回ばかりは様子が異なるらしい。
それまで手下の誰一人として、その鋭く無慈悲な神判をかわすことはおろか、逃れることさえ敵わなかった。
しかし、その気味悪い冷笑を浮かべた小柄な男は、その惨撃を肉が抉られる寸前のところで軽やかにかわし攻撃に転じているのだ。
「お前、動き、分かる。よく、聞えるっ! 丸分かりっ!! それじゃ、すぐ、すぐに、ばらばらだああああっ!!!?」
「……γι!? Γαααααααααα!!!?」
そしてついに、その凶悪な災いの獣を人の手による渾身の一撃がその身体を貫く。
男はソレの猛攻をかわした後、その勢いのまま宙で身をひねり、全体重をかけて手にした双刃を紅く燃える背中に突き刺したのだ。
「ヒャハハハハハハッ!!!! どう、どうだっ!? どんなだあ? 自分の肉が裂かれる、気分っ!! クケケケッ!! いい、良い感触だ……! つぎ、次はどこにしてほしいっ!? キャハハハハッ!!!!」
男はその背中に取り付いたまま、激痛に悶える少年に陰湿に捌かれ方を耳打ちし訊ねる。
そして、子供が玩具で戯れるが如くその紅く燃える小さい背中を脚蹴りした後、地に這うように着地し長い舌で卑しく返り血を舐め回す。
狂気に荒らぶる少年は蹴り飛ばされた勢いで崩れた荷物に脳天から激しく突っ込んだ。
激しい騒音と砂塵が巻き上がる中、次に仕掛けたのは一層炎の勢いを増した少年だった。
「……γι、……γι、……γιιιι、…………Γαααααα!!!?」
紅く燃える獣は背中に二本の刃を突き立てたまま、それをものともせず猛然と冷笑する男に襲いかかる。
「クケケッ! そう、じゃなきゃ。つまら、ないっ!!!!?」
男の喉を目掛けて鋭い爪が紅い弧を描いて空を斬る。
しかし、寸前の所でそれを後方にかわし、男は透かさず腰に携えた刃をソレの急所を狙い立て続けに数本投げ込んだ。
だがそれも風切り音を立てて堅い地面に突き刺さり、畳みかけるように紅い銀眼を狙い放たれた必死の一撃も、その強靭な歯牙によって阻まれ粉微塵に噛み砕かれる。
「ケケッ! このガキ、俺の投擲、もう見切ったっ!? ヒッ……、ヒャハハハッ!! で、でも、これはどう、だっ!!!?」
男はそう言い放つや不意にその場に屈みこんだ。
紅蓮の狂気はここぞと言わんばかりに紅い銀眼を閃かせ、猛烈にその歯牙で襲いかかる。
だが、その牙が男の首筋を捉えるより前に、男は潜めていた砂利をソレの眼前に投げつけ視界を奪った。
「……γι!? Γααα……!!!?」
「クカカカカッ!! お前、簡単、単純っ! それじゃ、俺、捌けないっ!!!?」
紅く燃えるソレが潰された視界のまま闇雲に辺りに斬りかり苦しむ傍ら、男は上着の胸内に仕舞った杭を両手に握り締め、錯乱するソレの両足に醜悪な笑みで打ち込んだ。
「……Γαααααααααα……!!!?」
「ヒャハハハハハッ!! これで、もう、お前、動けないっ!! クケケケッ!! それじゃ、じゃあ、仕置き、お仕置き、はじめるぞおおおおっ!!」
思わぬ反撃に流石のソレも膝を崩し、地べたに四つ這いとなって見えぬ男に向けて激情した狂気をぶつけている。
すぐさま追撃せんと上体を起こそうにも足と地面が杭によって縫い留められ、身動きがまるで取れない。
その無様に咆える獣に惚れ込むような殺意の眼差しを向け、次に男は刃物を引きずりにじり寄ってゆく。
「ケケケッ! だめ、動こくの、無駄、無意味だ。加減なしで打ち込んだ。お前がやったみたいに、足もぐか、斬り落とさないと、逃げられない。ククッ! キヒャハハハハハッ!! ……なっ!? コ、コイツッ!?」
念願の獲物をやっと捉えた。ご馳走を前に、男は下卑た笑みを浮かべ刃を舐め回す。
だが、ソレの闘争心はその躯体という枷にすら構わず、収まることを知らないらしい。
有ろうことか紅く燃え盛る炎を一層噴き上げ、ソレは足から夥しい血飛沫と砕骨音を立てて己の肉を引き裂きはじめたのだ。
予想だにしない行動に男も一瞬身構える。
「ククッ……、ヒャハハハハッ!? いいっ!! いいっ!! お前、そんなに、俺を、俺とっ!!!! フヒヒッ……!! でも、だめ、残念。それは、できない! させないいいいいっ!!!?」
片足の肉を引き千切り、今にも男に跳びかからんとするソレに、男は仕上げの一撃を見舞った。
両腕の袂から投げ出されたそれは一瞬にして宙で大きく広がり、猛り狂う獣に覆い被さった。頑丈な紐が網目状に編まれたそれは、地に這い蹲る狂気をからめ取り、その動きをいとも簡単に封じ込めて見せた。
「ヒャハハハハハハッ!!!! 予想通り、はずれじゃなかった。当たり、大当たりっ!! クケケケッ!! ……ああ、もう、動くの、やめとけ。もう、お前、どこにも逃げられない!!」
そう言って網を引き寄せると、何故か捕らえられた少年から悲痛な呻き声が上がる。
それもそのはずだ。男が少年をからめ取ったそれには、鋭い刃が返しとなって無数に縛り付けられ、獲物が網を解こうともがくほどにその刃が肉に喰い込み切り刻むよう細工されていたのだ。
「ケケケッ!! 動くほど、足掻くほど、切り刻まれるっ! ばらばらになるっ!! どうだあ? どんなだあ? 身体中の、血の、死の感覚っ!! ヒャハハハッ!! 気持ち、良いだろおおおおっ!!!?」
「……γιγιγι、……γι、Γαααααααα……!!!?」
ようやっと褒美に在り付ける。男は眼前に横たわる獲物に舌鼓しながら乱暴にその身体を蹴り上げ、転げ横倒しとなった少年に跨り欲望のままに話を続ける。
「やっと、やっと、捕まえたっ!! クケケッ!! それじゃあ、どうする? どうしてくれる? どうされたい!? ……おっと、忘れてた。その前に……!!」
「……γιιιι、γι、Γαααααααα……!!!?」
男は何か思い当った様子でおもむろに懐からまた新たな杭を抜き出すや、それを躊躇いなく少年の四肢に再度打ち込んだ。
息つく間もなく、全身を端から砕けんばかりの激痛が少年に牙を立てる。
「これで、もう怖くない。ヒヒャハハハッ!! じゃあ、まず、その忌々しい目、紅い目玉を、抉り出してやるっ! 捻じ切ってやるっ!? ヒャハハッ!! それとも、舌か? ああ、腹を開いてから、その方がずっと、面白そう。気持ち良さそうだなあ!!!!」
コメント