守銭奴にも武士の魂 ~札束風呂の元祖、岡定俊の貫いた武士の一分~
第三十四話 決闘状
一昼夜ほど遅れて到着した方丈斎は、大善の不始末に怒り狂った。
「あたら精鋭を三人も失うとは、いったい何のためにここまで来たのだ! 大善!」
「それに関しては俺の不手際だ。詫びる」
大善は素直に頭を下げた。腕試しなどという稚気のためにせっかくの部下を失ったのである。衆の頭としてありえぬ失態であった。これが戦国の世であれば、大善は即座に自害して罪を償ったであろう。
「しかし戦った甲斐がなかったわけではない」
「ほう」
目線で方丈斎は大善に先を促した。三人もの仲間を失ったのだ。その犠牲に足るものでなければ納得がいかないとその目が語っていた。
「まず、鵜飼藤助の秘蔵っ子、名を甲賀の八郎と言うらしいが、その腕は鵜飼藤助を凌ぐかもしれぬ。村雨が毒血を使ってなお仕留めることができなかった相手だ」
「それほどか」
村雨ほどの腕の持ち主が、命を捨てて使う最後の技、まず甲賀の八郎にとっても初見の技であったはずだ。初見殺しの技を逃れるとなれば並みの腕ではない。
「それに岡定俊の背中にはよほど手練れの隠形術者がいるぞ。この俺の目をしても気配すら感じ取れない奴がな」
「それはおそらく甲賀のおりくというくのいちであろう」
甲賀二十四家のひとつ、佐治家の係累にあたるくのいちが、定俊の事実上の妻として常に目を光らせているということは周知の情報であった。だが、大善に悟らせないほどの隠形の使い手であるということは貴重な情報であろう。もともとくのいちは身体能力で男に劣る分、男を篭絡する手管に長けている。しかしごく稀にいる男に遜色がないほど第一線で戦えるくのいちは、大抵なんらかの突出した才能を持っているものであった。突出した才能は脆くもあるが、型に嵌れば恐ろしく強い。おりくのそれが隠形であるとわかったことは大きかった。
「鵜飼藤助も無傷というわけにはいくまい。我が火渡りの術に自ら飛びこんだのだから」
火傷というのは存外に厄介な傷である。ある意味では斬り傷のほうが無理が利く。回復も遅いうえに感染症の危険も高い。いかに鵜飼藤助といえども戦力の低下は避けられないところであろう。
「なるほど、犬死というわけではなさそうだな」
万全の状態の鵜飼藤助と戦いたいなどとは方丈斎は思わなかった。相手と戦う前に策を弄するなど忍びにとっては当たり前の方策だった。結果的に方丈斎が鵜飼藤助を倒せるのなら、経過は問わないのである。
「――――が、少々気になることがある」
「穏やかではないな」
方丈斎ほどの男が気になると評したことに大善は眉をひそめた。
「道中忍びに尾行けられてな。返り討ちにはしたが、討ち漏らしがないとも限らぬ。俺の勘だが、おそらくは黒脛巾組の手の者であろう」
「すると…………」
「うむ、この一件に首を突っ込もうとしているかもしれぬ、ということだ。あの古狸が欲を出しているとすれば――」
政宗が天下取りの野心を捨てられぬ煮ても焼いても食えぬ男であるという評価は、伊賀組では常識といえる。持って生まれた強運と、神がかった用心深さで絶体絶命の窮地を紙一重で逃れてきた。もし百万両という大金を耳にすれば食指を動かさぬほうがどうかしていた。
「だからといって黒脛巾組風情に何ができる?」
「まともに戦うつもりはあるまいよ。だが、下手をすると異人をかどわかして我らの勝負に水を差すということもありうる」
彼らの共通認識として、黒脛巾組の戦闘力は同時代の忍び集団のなかではかなり低い。その分諜報能力に長けている。ある意味では太平の時代にも役立つ集団である。
彼らを侮るつもりはないが、まともに戦えば黒脛巾組など鎧袖一触に叩き潰せる自信があった。まさか彼らが戦闘専門の斬り手として、竹永兼次という剣客を用意しているなど思いもよらないところであった。
「ならばあまり時間はかけられぬな」
「うむ、あの百万両が万が一あるなら、それをあの狸に奪われるようなことがあれば伊賀組の沽券に関わる」
すでに方丈斎は、かつての冷静さを取り戻し百万両が幻であろうと推察しているが、皆無であるとまで見限ったわけではない。もちろん百万両があっても伊賀組を救うことはできないだろうが、これはもはや面子の問題であった。間違っても黒脛巾組ごときに渡すわけにはいかなかった。
「鵜飼藤助に回復の余裕を与える義理もない。それに今さら損害を気にする理由もない」
本来ならば、任務の遂行は報告するまでが原則であり、生きて生還することが求められる。しかし今や方丈斎たちは死人であった。
すでに公儀には死亡の届を出し、家は後継ぎに任せてきた。勝っても負けても二度と江戸には戻らないと覚悟を決めてやってきたのである。
「急ぐことに否やはないが、余計な手出しは無用にしたいものだな」
定俊配下の猪苗代兵は、戦国を生き抜いた精鋭が多く残されている。山中の不正規戦ならばともかく、本気で警戒に当たられると方丈斎たちでも手を焼くことは確実であった。数は力であって、そもそも兵の数の暴力にこそ彼らの故郷伊賀は信長に敗れ蹂躙されたのだから。
「果たし状でも送るか?」
楽しげに大善が言った。馬鹿なことを、と怒ろうとして方丈斎はふと思考に沈む。存外悪い手段ではないかもしれない。
「おそらくは長引かせたくないのはあちらも同様であろう」
いかに柳生家や蒲生家の黙認を取りつけたとはいえ、おのずから限度がある。
まして黒脛巾組の介入が予想される状況では、決着は早ければ早いほどいい。
お互いの利害が一致しているのであれば、あとはそのきっかけを作ってやるだけで事足りるのではないか?
「――――あのセミナリオがよいだろう」
「うむ」
大善の言葉に方丈斎は力強く頷いた。
決闘に応じぬ場合、今や日本で唯一となったキリシタンのための教育機関。その象徴として煌びやかに建築されたセミナリオを焼くといえば、定俊にも否やはないはずであった。
城ならばともかく、戦闘用の施設ではないセミナリオを完全に守り抜くことは至難の業である。
運が悪ければ火矢の一本でも建物は燃える。それはもう定俊と方丈斎の戦闘は全く別の次元の話であって、定俊が長期間セミナリオを守り抜くのはほぼ不可能といえた。
「といっても岡家の手勢は三百は下るまい。下手に動かれると厄介だぞ?」
「こちらに火渡り大善がいることはすでに藤助から聞いているだろう。百も兵が死んでは隠し立てもままなるまい」
すなわち、秘密裡に決着をつけるためには、お互いに少人数で損害を抑える必要があるということだ。
でなければとうに定俊は山狩りを実施しているはずだし、それなりの兵に動員をかけ猪苗代城下を警戒していなければならなかった。
「たった一人で大善と戦いにくる男だぞ? あれも太平の世には生きる場所のないあぶれ者であろう」
立場は違えども、定俊のような武士もまた、方丈斎たちと同じようにこの世から見放されつつある存在であろう。この太平の世では誰も死を望まない。たとえ醜くとも、より豊かでより安定した明日を生きようとする人間がいるだけだ。だからこそ定俊は決闘に応じるという奇妙な信頼が方丈斎にはあった。
「――――弓をもて」
その夜遅く、一通の矢文が猪苗代の城門に突き立った。
「殿! 今朝がた城門にてこのような文が……」
朝になるまで矢文の存在に気が付かなかった門番は、全身に冷や汗をかいて平身低頭していた。
常在戦場をもってなる武士の定俊の配下にあるまじき怠慢であったからだ。
当然、定俊も太平に馴れきってしまった門番に怒りを隠せずにいたのだが、その怒りは文を見た瞬間に爆笑にとってかわった。
「ふはははははは! なんと面白いことがあるものか!」
定俊の豪傑笑いに障子がビリビリと揺れた。
まさか忍びが決闘状をよこすとは夢にも思わなかった。そも、忍びとは闇に忍び影を友として戦う者である。それが正々堂々、決闘などと言い出すとは、世の中なかなかどうして捨てたものではない。
「よいよい、下がれ。今後は気を抜くでないぞ?」
恐縮して土下座したままの門番を、定俊は打って変わって機嫌よく帰した。
にやにやと目じりを下げながら、定俊は文に視線を落とす。
セミナリオを燃やすなどと書いてはいるが、それはただの脅しだ。本気で燃やすことなど彼らは考えてもいないだろう。
まさに阿吽の呼吸で、太平の世からつまはじきにされた者同士が、最後の祭りを盛大に祝うために差し出された恋文のようなものであった。
無論、打算もあるに違いない。時間の経過は定俊にとっても問題だが、伊賀組の支援を一切受けることのできない方丈斎たちのほうがより切実だ。任務ならば単純にいやがらせを続けることも可能であっても、今彼らがこの場にいるのは任務のためではなく彼ら自身の誇りのためである。
生まれて初めての自分の意思で行う自由な戦いの前には、歴戦の忍びも存外に初心な男なのかもしれなかった。
同様に、定俊もまた徒武者であった若い日の己の初心さを思い出した。まさに方丈斎が定俊に抱いたのと同じように、定俊もまた方丈斎たちに対して奇妙な連帯感のような気持ちを抱いたといってよい。
「せっかくのお誘いを断っては武士の恥というものであろうな」
破顔一笑、定俊は決闘の申し込みを受けると心に決めたのである。城門前に掲げられた高札には大きな文字で「委細承知」とのみ書かれて、行き交う人々の頭を傾げさせた。
「あたら精鋭を三人も失うとは、いったい何のためにここまで来たのだ! 大善!」
「それに関しては俺の不手際だ。詫びる」
大善は素直に頭を下げた。腕試しなどという稚気のためにせっかくの部下を失ったのである。衆の頭としてありえぬ失態であった。これが戦国の世であれば、大善は即座に自害して罪を償ったであろう。
「しかし戦った甲斐がなかったわけではない」
「ほう」
目線で方丈斎は大善に先を促した。三人もの仲間を失ったのだ。その犠牲に足るものでなければ納得がいかないとその目が語っていた。
「まず、鵜飼藤助の秘蔵っ子、名を甲賀の八郎と言うらしいが、その腕は鵜飼藤助を凌ぐかもしれぬ。村雨が毒血を使ってなお仕留めることができなかった相手だ」
「それほどか」
村雨ほどの腕の持ち主が、命を捨てて使う最後の技、まず甲賀の八郎にとっても初見の技であったはずだ。初見殺しの技を逃れるとなれば並みの腕ではない。
「それに岡定俊の背中にはよほど手練れの隠形術者がいるぞ。この俺の目をしても気配すら感じ取れない奴がな」
「それはおそらく甲賀のおりくというくのいちであろう」
甲賀二十四家のひとつ、佐治家の係累にあたるくのいちが、定俊の事実上の妻として常に目を光らせているということは周知の情報であった。だが、大善に悟らせないほどの隠形の使い手であるということは貴重な情報であろう。もともとくのいちは身体能力で男に劣る分、男を篭絡する手管に長けている。しかしごく稀にいる男に遜色がないほど第一線で戦えるくのいちは、大抵なんらかの突出した才能を持っているものであった。突出した才能は脆くもあるが、型に嵌れば恐ろしく強い。おりくのそれが隠形であるとわかったことは大きかった。
「鵜飼藤助も無傷というわけにはいくまい。我が火渡りの術に自ら飛びこんだのだから」
火傷というのは存外に厄介な傷である。ある意味では斬り傷のほうが無理が利く。回復も遅いうえに感染症の危険も高い。いかに鵜飼藤助といえども戦力の低下は避けられないところであろう。
「なるほど、犬死というわけではなさそうだな」
万全の状態の鵜飼藤助と戦いたいなどとは方丈斎は思わなかった。相手と戦う前に策を弄するなど忍びにとっては当たり前の方策だった。結果的に方丈斎が鵜飼藤助を倒せるのなら、経過は問わないのである。
「――――が、少々気になることがある」
「穏やかではないな」
方丈斎ほどの男が気になると評したことに大善は眉をひそめた。
「道中忍びに尾行けられてな。返り討ちにはしたが、討ち漏らしがないとも限らぬ。俺の勘だが、おそらくは黒脛巾組の手の者であろう」
「すると…………」
「うむ、この一件に首を突っ込もうとしているかもしれぬ、ということだ。あの古狸が欲を出しているとすれば――」
政宗が天下取りの野心を捨てられぬ煮ても焼いても食えぬ男であるという評価は、伊賀組では常識といえる。持って生まれた強運と、神がかった用心深さで絶体絶命の窮地を紙一重で逃れてきた。もし百万両という大金を耳にすれば食指を動かさぬほうがどうかしていた。
「だからといって黒脛巾組風情に何ができる?」
「まともに戦うつもりはあるまいよ。だが、下手をすると異人をかどわかして我らの勝負に水を差すということもありうる」
彼らの共通認識として、黒脛巾組の戦闘力は同時代の忍び集団のなかではかなり低い。その分諜報能力に長けている。ある意味では太平の時代にも役立つ集団である。
彼らを侮るつもりはないが、まともに戦えば黒脛巾組など鎧袖一触に叩き潰せる自信があった。まさか彼らが戦闘専門の斬り手として、竹永兼次という剣客を用意しているなど思いもよらないところであった。
「ならばあまり時間はかけられぬな」
「うむ、あの百万両が万が一あるなら、それをあの狸に奪われるようなことがあれば伊賀組の沽券に関わる」
すでに方丈斎は、かつての冷静さを取り戻し百万両が幻であろうと推察しているが、皆無であるとまで見限ったわけではない。もちろん百万両があっても伊賀組を救うことはできないだろうが、これはもはや面子の問題であった。間違っても黒脛巾組ごときに渡すわけにはいかなかった。
「鵜飼藤助に回復の余裕を与える義理もない。それに今さら損害を気にする理由もない」
本来ならば、任務の遂行は報告するまでが原則であり、生きて生還することが求められる。しかし今や方丈斎たちは死人であった。
すでに公儀には死亡の届を出し、家は後継ぎに任せてきた。勝っても負けても二度と江戸には戻らないと覚悟を決めてやってきたのである。
「急ぐことに否やはないが、余計な手出しは無用にしたいものだな」
定俊配下の猪苗代兵は、戦国を生き抜いた精鋭が多く残されている。山中の不正規戦ならばともかく、本気で警戒に当たられると方丈斎たちでも手を焼くことは確実であった。数は力であって、そもそも兵の数の暴力にこそ彼らの故郷伊賀は信長に敗れ蹂躙されたのだから。
「果たし状でも送るか?」
楽しげに大善が言った。馬鹿なことを、と怒ろうとして方丈斎はふと思考に沈む。存外悪い手段ではないかもしれない。
「おそらくは長引かせたくないのはあちらも同様であろう」
いかに柳生家や蒲生家の黙認を取りつけたとはいえ、おのずから限度がある。
まして黒脛巾組の介入が予想される状況では、決着は早ければ早いほどいい。
お互いの利害が一致しているのであれば、あとはそのきっかけを作ってやるだけで事足りるのではないか?
「――――あのセミナリオがよいだろう」
「うむ」
大善の言葉に方丈斎は力強く頷いた。
決闘に応じぬ場合、今や日本で唯一となったキリシタンのための教育機関。その象徴として煌びやかに建築されたセミナリオを焼くといえば、定俊にも否やはないはずであった。
城ならばともかく、戦闘用の施設ではないセミナリオを完全に守り抜くことは至難の業である。
運が悪ければ火矢の一本でも建物は燃える。それはもう定俊と方丈斎の戦闘は全く別の次元の話であって、定俊が長期間セミナリオを守り抜くのはほぼ不可能といえた。
「といっても岡家の手勢は三百は下るまい。下手に動かれると厄介だぞ?」
「こちらに火渡り大善がいることはすでに藤助から聞いているだろう。百も兵が死んでは隠し立てもままなるまい」
すなわち、秘密裡に決着をつけるためには、お互いに少人数で損害を抑える必要があるということだ。
でなければとうに定俊は山狩りを実施しているはずだし、それなりの兵に動員をかけ猪苗代城下を警戒していなければならなかった。
「たった一人で大善と戦いにくる男だぞ? あれも太平の世には生きる場所のないあぶれ者であろう」
立場は違えども、定俊のような武士もまた、方丈斎たちと同じようにこの世から見放されつつある存在であろう。この太平の世では誰も死を望まない。たとえ醜くとも、より豊かでより安定した明日を生きようとする人間がいるだけだ。だからこそ定俊は決闘に応じるという奇妙な信頼が方丈斎にはあった。
「――――弓をもて」
その夜遅く、一通の矢文が猪苗代の城門に突き立った。
「殿! 今朝がた城門にてこのような文が……」
朝になるまで矢文の存在に気が付かなかった門番は、全身に冷や汗をかいて平身低頭していた。
常在戦場をもってなる武士の定俊の配下にあるまじき怠慢であったからだ。
当然、定俊も太平に馴れきってしまった門番に怒りを隠せずにいたのだが、その怒りは文を見た瞬間に爆笑にとってかわった。
「ふはははははは! なんと面白いことがあるものか!」
定俊の豪傑笑いに障子がビリビリと揺れた。
まさか忍びが決闘状をよこすとは夢にも思わなかった。そも、忍びとは闇に忍び影を友として戦う者である。それが正々堂々、決闘などと言い出すとは、世の中なかなかどうして捨てたものではない。
「よいよい、下がれ。今後は気を抜くでないぞ?」
恐縮して土下座したままの門番を、定俊は打って変わって機嫌よく帰した。
にやにやと目じりを下げながら、定俊は文に視線を落とす。
セミナリオを燃やすなどと書いてはいるが、それはただの脅しだ。本気で燃やすことなど彼らは考えてもいないだろう。
まさに阿吽の呼吸で、太平の世からつまはじきにされた者同士が、最後の祭りを盛大に祝うために差し出された恋文のようなものであった。
無論、打算もあるに違いない。時間の経過は定俊にとっても問題だが、伊賀組の支援を一切受けることのできない方丈斎たちのほうがより切実だ。任務ならば単純にいやがらせを続けることも可能であっても、今彼らがこの場にいるのは任務のためではなく彼ら自身の誇りのためである。
生まれて初めての自分の意思で行う自由な戦いの前には、歴戦の忍びも存外に初心な男なのかもしれなかった。
同様に、定俊もまた徒武者であった若い日の己の初心さを思い出した。まさに方丈斎が定俊に抱いたのと同じように、定俊もまた方丈斎たちに対して奇妙な連帯感のような気持ちを抱いたといってよい。
「せっかくのお誘いを断っては武士の恥というものであろうな」
破顔一笑、定俊は決闘の申し込みを受けると心に決めたのである。城門前に掲げられた高札には大きな文字で「委細承知」とのみ書かれて、行き交う人々の頭を傾げさせた。
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