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山口 犬

6-318 ハルナがいなくなった日11









いくらこの世界で高い位置にいる存在でも、創りだした存在を消すということができなかったという。
それができるのは、本来その権限を持つ盾の創造者だけだという。


剣の創造者が盾の創造者を攻撃できないように、お互いが生み出した存在には関与ができない。
盾の創造者が生き物を消すことができたのは、自身が創りだした存在だったからだ。
今回、オスロガルムは剣の創造者が創り出した存在のため盾の創造者では関与できず、さらには自身の力で消すこともできなかった。そのため、剣の創造者は、サヤの行動に対して感謝をしていると追加で説明した。


そこに一つの矛盾を感じたエレーナは、声を荒げて剣の創造者に食ってかかった。



「でも、サヤは何か目的があって……そう!この世界を崩壊するために、オスロガルムを倒したんでしょ!?その前に剣の創造者とは会ってなかったのならおかしいじゃない!?」



「それは……ん」



剣の創造者は、一瞬言葉が詰まらせる。
そして、ほんのわずかな間に



「……あれは本当に偶然だったんだけどね。アタシの記憶が改竄されてたってのを知ったのは、随分と後のことだからさ」


「……!?」




エレーナは、サヤの声の変化に再び驚く。
声の色は変わりはないが、その内容と言葉に表せない感覚が、すぐ直前まで話していたそれとはまったく異なっているのを感じている。




「あなたは……もしかして、サヤ?」




エレーナは、今までも同じ人物と話してはいたが、その”中身”が異なるためにすぐには区別ができずに困惑していた。



「ん?なに言って……あぁ、そうか。そうだよ、アイツと交代して元に戻って今はアタシだよ。それで、さっきのことなんだけどね、この世界の崩壊をさせるとものすごいエネルギー波が発生するのよ。その力の大きさを使って元の世界に帰ろうと考えてたわけ……結局失敗しちゃったんだけどさ」



エレーナたちはサヤの口から、この世界に住む自分たちにとって重い内容を軽々しく話すサヤの姿に、その言葉を受け入れたくないと拒否しているのかそれとも理解できずにいるのか、ただ頭の中でサヤの言葉が繰り返されていた。



「それで……サヤ殿は、どうして盾の創造者を追っているのですか?今の話しですと、サヤ殿には失礼かもしれませんが、オスロガルムという存在が消えてしまったため、その……」

「なんだい?またなんか言い辛いこと言おうとしてるのか?……別にいいって、アンタたちが何を言おうと怒りゃしないって……多分な」


サヤのどちらにも転びそうな言葉尻に、ステイビルはいまだ緊張を解くことができない。
だが、一度口にしたことをそのままにしておくことでさらにサヤの機嫌が悪くなることは、これまでのサヤと会話をした経験からも容易に推測できる。

しかし、そこまで判っていながらもステイビルは次の言葉でどのような反応を見せるかわからないサヤに最大限の注意を払いながら続きを口にする。



「で……では。いま、あなたがとられている行動の理由は一体どこにあるのですか?まだ、世界を崩壊させ、ハルナと同じご自身がいた世界へ戻ろうとしているのですか?」






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