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山口 犬

6-316 ハルナがいなくなった日9









「そんなことを考えて……あ。でも、今までの話からすると、他の種族が発展するために……ってこと?」


「その推測で、間違いはないだろう。エレーナよ……」


剣の創造者から自分の予測に対して同調する意見を聞き、エレーナは不思議な気分になる。
エレーナとしては、盾も剣の創造者も……サヤも含めて信頼できない存在だった。
しかし、この意見に同意する剣の創造者の反応は、今までのエレーナの感情を揺るがせる結果となっていた。



(どうして?なんで盾の創造者は、私たちを育てようとしてる……なぜ、そんなことをするの!?)



「私が思うにはあの存在は、自分の管轄の中の存在がどのようにして、その発展を遂げていくのかを見定めたいのだと思う」


「――!?」



エレーナの独り言のような頭の中でつぶやいた言葉が、どのようにして聞かれたというのか?エレーナは剣の創造者の言葉に怯えて警戒をする。


「どうした?何をそんなに警戒している。先ほどの言葉は、お主たちが想像していた結果を言葉にしただけだ。間違ってはいなかっただろうよ?」


「――その考えは私も同じです。剣の創造者様」


「す、ステイビル様……」


エレーナはステイビルがサヤの身体を借りている剣の創造者に対して、敬意を持った言葉で話すことに驚いた。
エレーナの中では、この存在がまだ味方なのか敵なのかも判断がついていない。
しかし、ステイビルの今の言葉遣いは、既に”敵ではない”と判断し、この世界においてあらゆる生物を司る存在としてステイビルは認めているものだとエレーナは判断した。そうであれば、エレーナはこれ以上何も言うことはない。ただ、ステイビルの側近として、何か起きた時のために準備はしておかなければならないが。


「ですが、一つ気になることが……」

「どのようなことだ?」


ステイビルは剣の創造者が、自分の意見を聞いてくれる姿勢をみせてくれたことに安堵する。
これまでのエレーナとのやり取りからしても、質問をすることが無礼にはあたらないと推測している。

何もないことを確認をして、ステイビルは剣の創造者に向かって抱いている質問を投げかけた。




「であれば、あのオスロガルムというのはどのような意味で生み出されたのでしょうか?盾の創造者は、我々に……いえ、ハルナとサヤに倒させて世界を崩壊させようとしていたと聞いています。そのようなことをせずとも、自身が生み出した存在を破壊させれば、望み通りになったのではないでしょうか?」



「ふむ……」


ステイビルの質問に剣の創造者は、腕を組んで唸った。その態度にステイビルは、再び緊張感が生まれる。
矛盾のように感じた過去の状況を指摘したことにより、ステイビルは創造者である存在に対して機嫌を悪くさせてしまったのではないかと怯えた。

数秒間、剣の創造者は目を閉じたままの体制を取っている。
再び開けた時、組んでいた腕を解き、その手の一つを腰に当てた。



「その話しにはひとつ誤ったところがある、まずはそのことを修正しよう……」


「間違い……ですか?」


「そうだ。あの魔物を生み出したのは、盾の創造者ではない……私だ」







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